この記事はここがポイント
- 共同債は年3.019%の固定金利、個人向け国債(変動10年)は初回年1.87%の変動金利
- 100万円を10年運用した場合、共同債の手取り利息は個人向け国債より9万1,560円多い結果
- 金利上昇時の対応力と中途解約時の元本保証が、両債券選択の重要な分岐点
日本経済が「金利のある世界」へと本格的に移行するなか、資産運用のポートフォリオにおいて債券の存在感が日増しに高まっています。
株式市場が神経質な展開を見せる局面では、以下のような理由から債券への関心が強まります。
確実性の高さ:満期まで保有すれば、あらかじめ決まった利息を確実に受け取れる
資産の安定性:株式のように大きな価格変動に振り回されない
なかでも個人の関心を集めているのが、2026年8月募集において3%台前半で条件が決定した地方債と、金利上昇局面の定番商品である個人向け国債(変動10年)の比較です。
「高利回りを今すぐ確定させるか」それとも「今後のさらなる利上げに期待するか」——。
100万円を運用した際の具体的な試算とともに、それぞれの特性を紐解きます。
今回の比較対象:安全性を高めた「共同債」とは?
シミュレーションに入る前に、今回地方債のサンプルとして取り上げる「共同債」の仕組みを確認しておきましょう。
個人投資家にも広く販売されているこの債券には、安全性を高める工夫が施されています。
地方債は共同債のほかにも、各都道府県や市が発行するものがありますが、毎月安定的に個人向けの販売があるという観点から、共同債をサンプルに選んでいます。
共同債(共同発行市場公募地方債)の特徴
共同発行の目的:複数自治体が発行コストの削減と資金の安定調達を狙い、地方財政法に基づき2003年から共同で発行
強固な支払い体制:資金調達の有無にかかわらず、参加するすべての自治体が「連帯債務」を負う仕組み
専用ファンドの設置:災害などの緊急時にも支払いが遅滞しないよう保証ファンドを配備
定期的な発行:毎月発行されており、個人投資家にとっても信頼性の高い投資対象
条件比較
共同債(10年)と、国が発行する個人向け国債(変動10年)のスペックを比較します。
個人向け国債(第197回 変動10年)
- 発行体:日本国
- 金利タイプ:変動金利(半年ごとに実勢金利に応じて利率が見直される)
- 適用利率:年1.87%(※初回6カ月間の適用利率)
- 募集期間:令和8年8月6日〜31日
- 発行日:令和8年9月15日
- 利払い:年2回(10年間で合計20回)
共同発行市場公募地方債(第281回 10年)
- 発行体:複数の地方公共団体(都道府県・指定都市など)
- 金利タイプ:固定金利(満期まで10年間ずっと同じ利率が適用される)
- 適用利率:年3.019%(※満期まで変わらない)
- 条件決定日:令和8年8月6日
- 対国債スプレッド:+20.0bp
- 発行日:令和8年8月25日
- 利払い:年2回(10年間で合計20回)
目を引くのは、個人向け国債の初回利率が7月募集の第196回(年1.80%)から年1.87%へと上昇した一方、共同債は7月募集の第280回(年3.027%)から年3.019%へとわずかに低下した点です。
共同債は条件決定日(8月6日)時点の国債金利をベースに、あらかじめ決められた上乗せ幅(対国債スプレッド+20.0bp)を乗せて利率が決まる仕組みのため、月ごとの表面利率の変動は共同債自体の安全性が変わったことを意味するものではなく、その時点の国債金利の水準を反映したものにすぎません。
シミュレーション:10年後の手取り利息はどれだけ違う?
100万円を購入し、10年間持ち切った場合の税引後利息を計算します。
なお、個人向け国債については、「現在の1.87%という利率が10年間変わらずに推移した」と仮定して試算します(※金利が上昇すれば手取り額は増加します)。
※税率は復興特別所得税を含む20.315%(国税15.315%・地方税5%)を適用。各利払いごとに円未満を切り捨てて算出しています。
個人向け国債(変動10年・年1.87%仮定)
- 半年ごとの手取り利息:7,452円
- 10年間の手取り累計:14万9,040円
共同発行地方債(10年・年3.019%固定)
- 半年ごとの手取り利息:1万2,030円
- 10年間の手取り累計:24万600円
手取り利息の差額
9万1,560円(共同債のほうが多い)
前月(7月債)の差額は9万7,800円でしたが、今回は9万1,560円へとやや縮小しました。個人向け国債の初回利率が上昇した一方、共同債の利率がわずかに低下したことが要因です。とはいえ依然として9万円超の差がついており、最初から高水準の金利が固定されている共同債が大きくリードする結果に変わりはありません。
利回りだけでは測れない「選択の分岐点」
約9万円の手取り差だけを見ると共同債一択のように思えますが、選択を左右する2つの重要な考慮ポイントがあります。
今後の「金利上昇」への対応力の差
- 共同債(固定金利):年3.019%の利率が10年間固定される。今後さらに世の中の金利が上がっても、受け取る利息は増えない
- 個人向け国債(変動金利):半年ごとに実勢金利に応じて適用利率が改定される。利上げが続けば受取利息が増加し、共同債との差額が徐々に縮まる
中途解約時の「安全性(元本保証)」
- 共同債(地方債):満期前に売却する場合、その時点の市場価格で取引される。金利上昇局面では債券価格が下落するため、途中売却で「元本割れ」するリスクがある
- 個人向け国債:発行から1年経過すれば、いつでも国が額面で買い取ってくれる。直近2回分の利息相当額が引かれるものの、元本そのものは100%保証される
まとめ:あなたに合うのはどちら?
最後に、各債券がどのような投資家に向いているかを整理しました。
「共同債」が向いている人
- 10年間絶対に使う予定がない「完全な余剰資金」を運用したい人
- 年3%台という好条件を今すぐ確実に確定させたい人
- 連帯債務や専用ファンドといった強固な安全性を評価する人
「個人向け国債(変動10年)」が向いている人
- 日銀の追加利上げによるさらなる利回り向上に期待したい人
- 途中解約の可能性がゼロではなく、絶対に元本割れを避けたい人
- 金利環境の変化に合わせて柔軟に資産を守りたい人
住宅ローンの負担増に悩んでいるだけでなく、「債券投資」に目を向けてみるのも資産防衛のための一つの手です。
ご自身の保有資金の性質やライフプランに合わせて、最適な1本を選んでみてください。
参考
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
- 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
- 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
- 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
