この記事はここがポイント
- 高額療養費制度、令和8年8月から年間上限新設や月額上限見直し。
- これにより、これまでの多数回該当外や高額医療を受けた方の自己負担軽減。
- 医療保険改正では市販薬自己負担見直しや子育て世帯国保料軽減など5つのポイントが順次施行。
筆者はFP(ファイナンシャルプランナー)として、これより多くの方から家計やライフプランのご相談をお受けしてきましたが、「万が一の病気やケガで、医療費がいくらかかるか不安」という声をよく耳にすることがありました。
そんなときの心強い味方が「高額療養費制度」ですが、今月(令和8年8月)から制度の一部が新しく変更されていることはご存知でしょうか。
知っておくことで家計の助けになることも多い制度です。今回は今月から変わる高額療養費のポイントと、今後の医療保険制度で私たちの生活に影響しそうな変更点について、できるだけわかりやすくお伝えできればと思います。
今月から変わる高額療養費、2つのポイント「年間上限」と「月額上限」に注目!
高額療養費制度とは、ひと月に医療機関で支払った金額が高額になった場合、決められた上限額を超えた分が払い戻される仕組みのことです。今月8月から、公的な医療保険を長く維持していくため、そして長期の治療が必要な方へのサポートを手厚くするために、制度の見直しが行われました。
【年間上限の新設】「医療費の自己負担が軽くなる」場合があるのはどんな人?
年間上限の新設
今回の見直しにより、月ごとの自己負担額が積み上がっても、新たに「年間の上限額」に達した後はそれ以上の負担が不要となる仕組みが導入されました。
この年間上限額の新設により、以下の4点のいずれかに該当する方は、医療費の自己負担が軽くなる場合があります。
- これまで「多数回該当」に該当しなかった方
- 見直しにより「多数回該当」の対象から外れる方
- 現在、毎月高額療養費を利用している方
- 極めて高額な医療を受けた方
「多数回該当」とは、直近12か月以内に3回以上上限額に達した場合に、4回目から上限額が下がる仕組みのことです。
【月額上限の変更】対象区分と自己負担上限額をみる
また、月ごとの自己負担上限額(月額上限)についても、所得や年齢に応じた見直しが行われています。月々の上限額は、以下の適用区分ごとの一覧表に沿ってご自身の状況を確認してください。
70歳以上の方については、世帯ごとの上限額に加えて、個人ごとの「外来月額上限」も設定されています。
なお、ご自身の適用区分は、マイナポータルや資格確認書、限度額適用認定証などでご確認いただけます。
対象区分と自己負担上限額(令和8年8月〜令和9年7月)
月額上限の変更
- 70歳未満の非課税世帯(区分オ):月額上限は3万6900円(多数回該当時は2万4600円)、年間上限は29万円に抑えられます。
- 70歳以上の非課税世帯Ⅱ:世帯ごとの月額上限は2万5700円(多数回該当時は2万4600円)、年間上限は29万円です。 また、この区分では個人ごとの外来月額上限が1万1000円(年間上限14.4万円)に設定されています。
- 70歳以上の非課税世帯Ⅰ(年金収入約80万円以下など):世帯ごとの月額上限は1万5700円、年間上限は18万円とさらに低く抑えられています。さらに、個人ごとの外来月額上限は8000円となります。
医療保険の改正、暮らしに直結「5つのポイント」を整理
令和8年5月に成立した改正法により、将来の世代まで医療保険をしっかり引き継いでいけるよう、給付と負担のバランスが見直されることになりました。
ここでは、私たちの生活やお財布に直接関わってきそうな「5つのポイント」を少し噛み砕いて解説します。
今回の医療保険制度改革のポイント
①市販薬で代用できるお薬の自己負担見直し(令和9年3月ごろ施行想定)
風邪や軽い胃痛など、ドラッグストアで買える市販薬(OTC医薬品)で対応できそうなお薬を病院で処方してもらう場合、お薬代の4分の1ほどを別途ご自身で負担する形になるかもしれません。ただし、お子さんや持病のある方など、配慮が必要な方に対しては別途の負担を求めないような特例も検討されているようです。
②高額療養費に「年間上限」が新設などの見直し(令和8年8月1日から順次施行)
医療費の伸びなどに合わせて月々の自己負担額は見直される傾向にありますが、長く治療を続ける方向けの「多数回該当」の負担額はそのまま据え置かれる見込みです。また、前述の通り新たに「年間上限」ができるため、1年間の支払いが上限に達した後はその年の窓口負担がなくなるケースも出てきそうです。
③株式などの金融所得も負担判定に反映(公布後5年以内)
これまでは確定申告のやり方によって、窓口での負担割合や保険料が変わってしまうという不公平感がありました。これを解消するため、株の配当といった金融所得も負担割合の判定に考慮されるようになりそうです。行政側で把握する仕組みになるため、私たちが自分で何か手続きをする手間が新たに増えることはないと考えられています。
④妊娠・出産にかかる費用のサポート強化(公布後2年以内)
出産費用の実質的な自己負担を減らすため、医療保険から病院へ直接お金が支払われる仕組み(現物給付化)が導入される予定です。あわせて、すべての妊婦さんへの定額の現金給付も検討されています。さらに、産院のサービス内容や費用が「見える化」されることで、より納得して出産場所を選べるようになりそうです。
⑤子育て世帯の国保保険料が軽減(令和9年4月1日想定)
国民健康保険に加入している子育て世帯にとって、嬉しいお知らせかもしれません。これまで未就学児までだった「子どもの保険料(均等割)の半額免除」の対象が、大きく「高校生年代まで」広がる予定です。
まとめにかえて
FPとして多くの方の家計を拝見してきましたが、医療保険や高額療養費制度のような「公的なサポート」を正しく知っておくことは、民間の医療保険を見直したり、将来への漠然とした不安を減らしたりする上でとても大切だと感じています。
今回のような制度改正は少し難しく感じるかもしれませんが、「いざという時の自己負担額がどう変わるのか」「新しく使えるサポートはないか」をざっくりと把握しておくだけでも、家計管理の大きな助けになるはずです。これを機に、ご家庭の医療費の備えについて、少し見直してみてはいかがでしょうか。
参考資料
日本生命保険相互会社出身。元マネースクール講師、現役FP(CFP®・1級FP技能士)でJ-FLEC認定アドバイザー。保険から年金、資産運用まで幅広い知見を持ち、「お金の先生」としてLIMO&ファイナンス編集部にてわかりやすく信頼できる記事をお届けします。
