この記事はここがポイント
- 定期預金100万円・社債(A+B)100万円を5年間保有すると、税引後の受取利息の差は74,455円
- 定期預金は中途解約しても元本割れしないが、社債は途中売却だと市場価格次第で元本割れの可能性がある
- 社債の利率の高さは、定期預金にはない信用リスク・流動性リスクの裏返しでもある
2026年7月は、積極財政路線への懸念から長期金利には上昇圧力がかかり、新発10年物国債利回りは一時2.9%と約30年ぶりの水準まで上昇する場面もでてきました。
こうしたなか、銀行の定期預金金利もじわりと上昇しており、「低金利時代に眠らせていた預金を、そろそろ動かしたい」と考える方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、2026年7月に条件決定した実際の社債と、同時期の大手銀行の定期預金金利を参考に、それぞれ満期まで保有した場合に手取りでいくら受け取れるのかをシミュレーションしてみました(社債の募集はすでに終了しています)。
メガバンクスーパー定期 VS シングルA格以上の社債2銘柄
比較するのは以下のラインナップです。
- 定期預金(三菱UFJ銀行 スーパー定期・5年・単利型):利率0.70%、預入額100万円
- A社債(A+(R&I)/AA-(JCR)):利率2.448%、購入額50万円
- B社債(A-(R&I)):利率2.689%、購入額50万円
より利率の高いB社債に100万円すべてを投資するのも一つの手段ですが、よりリスクを分散させるためには幅広い銘柄に少しずつ投資するのがセオリーです。
また、今の債券マーケットでは金利の変動が激しく、A社債を買ったすぐ後に、もっと高い利率のB社債が出た、などというケースも多いです。
一度に大きな金額を購入するよりも分散をおすすめするのはこうした理由もあります。
「利率が高い社債の方がお得」と単純には言い切れないのが債券投資の悩ましくも面白いところです。
税引き後の受取額と、利率差の裏側にあるリスクの違いを、順番に見ていきましょう。
定期預金VS社債投資
※定期預金は単利型スーパー定期を前提としており、実際に適用される利率は預入時期や金融機関によって変動します。最新の店頭表示金利は各金融機関の公式サイトでご確認ください。
満期まで保有した場合の受取利息シミュレーション
利子所得には20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%+住民税5%)の税金がかかります。
これは定期預金・特定公社債(上場している社債など)のいずれも同じ税率です。
実際には、この税金は利払いのたびに1回ずつ源泉徴収され、1円未満は都度切り捨てられます。
本シミュレーションでも、利払いごとにその都度20.315%の源泉徴収税額(1円未満切り捨て)を差し引き、5年間分を積み上げる形で税引後の受取額を計算しています。
定期預金(スーパー定期5年・100万円・年0.70%)
- 1回あたりの利息:100万円×0.70%=7,000円
- 1回あたりの源泉徴収税額(1円未満切り捨て):1,422円
- 1回あたりの税引後受取額:5,578円(これが5年間で5回)
- 税引前利息合計:35,000円
- 税引後利息合計:27,890円
- 満期時の受取合計(元本100万円+税引後利息):1,027,890円
A社債(50万円)
- 税引前利息合計:61,200円
- 税引後利息合計:48,770円
- 償還時の受取合計:548,770円
B社債(50万円)
- 税引前利息合計:67,225円
- 税引後利息合計:53,575円
- 償還時の受取合計:553,575円
社債(A+B)の合計と定期預金との比較、結果は7万円以上の差!
同じ100万円という土俵で比べると、次のような差が生まれます。
定期預金100万円分
- 税引前利息合計:35,000円
- 税引後利息合計:27,890円
- 税引後の実質利回り(単利・年率換算):約0.56%
社債(A+B)100万円分
- 税引前利息合計:128,425円
- 税引後利息合計:102,345円
- 税引後の実質利回り(単利・年率換算):約2.05%
同じ100万円を5年間預けた場合、社債(A+B)は定期預金より税引後で74,455円多い利息を受け取れる計算です。
5年間で約7万4,000円(年間あたり約1万5,000円)という差をどう見るかは意見が分かれるところでしょう。
この「差額」の正体は、定期預金にはないリスク(信用リスクや流動性リスク)を投資家が引き受けていることに対する市場からの「上乗せ金利」にほかなりません。
そもそも、なぜここまで利率に差が出るのか
定期預金は預入先の金融機関が破綻した場合でも、預金保険制度(ペイオフ)により、1金融機関ごとに元本1,000万円とその利息までが保護されます。
また、中途解約をしても元本が減ることはなく、当初の約定より低い「中途解約利率」が適用されて利息が目減りするだけです。
一方、社債には預金保険のような保護制度はなく、満期前に現金化したい場合は市場で売却するほかありません。
売却時の価格は金利動向や発行体の信用力の変化によって変動し、額面を下回る「元本割れ」となる可能性があります。
A社債・B社債はいずれも「シングルA」クラス以上の格付ですが、格付はあくまで格付時点での評価であり、将来の債務不履行(デフォルト)リスクをゼロに保証するものではない点にも留意が必要です。
もっとも、個人投資家ならではの強みもあります。時価評価を厳格に行う機関投資家と違い、個人投資家は満期まで保有し続けさえすれば、途中の市場価格の変動を気にする必要がありません。
発行体がデフォルトしない限り、満期を迎えれば額面どおりに償還されるためです。
記者コメント
100万円を5年間、定期預金(スーパー定期5年・0.70%)で預けると、税引後の受取利息は27,890円、満期時の受取合計は1,027,890円となります。
一方、A社債・B社債にそれぞれ50万円ずつ振り分けた場合、税引後の受取利息は合計102,345円、満期時の受取合計は1,102,345円となり、定期預金より74,455円多い計算になりました。
ただし、この差は社債特有の信用リスクや流動性リスクの対価でもあります。利回りの高さだけで飛びつくのではなく、発行体の格付や財務状況、そして定期預金にはない中途換金の制約まで含めて検討し、自身のリスク許容度に合った組み合わせを選ぶことが、安定感のあるポートフォリオづくりの第一歩になるはずです。
参考
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
- 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
- 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
- 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
