この記事はここがポイント
- 7月募集の個人向け国債は変動10年1.80%など全タイプで利率上昇
- 「骨太の方針2026」で個人向け国債の魅力向上と新NISA組み込み構想、政策的後押しに期待
- 8月募集の個人向け国債は8月5日に条件決定、募集は8月6日から31日まで
国内の長期金利がじわじわと切り上がる局面において、2026年7月募集の個人向け国債は、各タイプ揃って適用金利が引き上げられる結果となりました。
こうした動きと軌を一にするように、7月21日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針 2026(骨太の方方針)」では、国内の個人マネーを呼び込む施策として「個人向け国債の魅力向上」が明確に打ち出されました。
購入時の利便性や商品設計を見直すことで個人投資家を定着させ、日本の成長を支える資金基盤を強固にする狙いです。
さらに、新NISA制度の対象へ組み込む構想が浮上するなど政策的な後押しも期待されており、資産形成における「債券」の役割が改めて脚光を浴びています。
一方で、市場全体に目を転じると、高市政権が推進する積極財政に伴う財政規律への懸念から、金利には引き続き上振れ圧力が残っています。
足元の指標となる10年物国債の利回りは2.7%台後半と一服感を見せているものの、投資家の関心が高い「変動10年」の次回利率は、8月4日に予定されている新発10年国債の入札結果次第で決まります。
その着地水準が次の大きな注目点となるでしょう。
そこでこの記事では、7月募集分における個人向け国債の動きの振り返りと8月の発行日程に加え、足元における地方債の動向および8月の発行予定まで、幅広く整理して解説していきます。
個人向け国債、7月募集分は3タイプすべてで金利アップ
2026年7月3日、財務省から個人向け国債の発行条件が発表されました。6月募集分と比較すると、変動10年・固定5年・固定3年のいずれも利率が上昇しています。
7月募集分の募集期間は2026年7月6日~7月31日、発行日は2026年8月17日です。
2026年7月募集分(概要)
- 変動10年:1.74%(6月募集分)→1.80%(+0.06%)
- 固定5年:1.86%(同)→1.95%(+0.09%)
- 固定3年:1.51%(同)→1.56%(+0.05%)
個人向け国債の利回り比較
7月債の傾向として、固定5年の伸びがやや大きかったことが挙げられます。
いずれのタイプも年率0.05%の最低金利保証がある点は変わらず、変動10年は半年ごとに適用利率が見直され、固定5年・固定3年は満期まで発行時の利率が変わらないという基本的な仕組みも従来通りです。
8月募集分のスケジュールを先取りチェック
8月分は、8月4日に実施される国債入札の結果を受けて、翌8月5日に発行条件が決定される予定です。
募集期間は2026年8月6日~8月31日、発行日は2026年9月15日を予定しています。
- 国債入札:8月4日
- 発行条件決定:8月5日
- 募集期間:8月6日(木)〜8月31日(月)
- 発行日:9月15日(火)
7月にかけて3タイプとも利率が上昇してきた流れを踏まえると、8月5日に決定される水準にも注目が集まりそうです。
そもそも個人向け国債とは
個人向け国債は、国が個人投資家向けに発行する、いわば国の「借用証書」です。
1万円という少額から購入でき、中途換金の際も原則として元本割れしない設計(ただし直近2回分の各利子(税引前)相当額に0.79685を掛けた金額が「中途換金調整額」として差し引かれる)になっているため、預貯金に近い感覚で保有できる点が特徴です。
ただし発行から1年間は原則として中途換金できない点には注意が必要です。
地方債の動き:共同債は3.027%、最も高い利率だったのは10日の愛知県債(3.067%)
7月の地方債(10年物・国債カーブ+20bpで決まった標準モデル)は、共同発行市場公募地方債(共同債)が7月7日に3.027%で条件決定したほか、都道府県・政令指定都市が個別に発行する地方債でも利率が出そろいました。
7月3日条件決定
- 宮城県/千葉県:2.982%
- 福井県/広島県:3.000%
- 札幌市:2.972%
- 千葉市:2.990%
7月8日条件決定
長崎県、横浜市:3.058%
7月10日条件決定
愛知県:3.067%
地方債の利回りに“ランキング”は存在しない、すべては条件決定時の国債金利次第
同じ「国債+0.20%(+20.0bp)」の上乗せ幅であっても利率や利回りに差が出るのは、自治体の信用力ではなく「値決め(プライシング)の手法やタイミング、基準となる国債金利」が異なるためです。
地方債の発行金利は、基本的に「その時点の国債金利+上乗せ幅」で決まります。
たとえ上乗せ幅が「+0.20%」で統一されていても、発行条件を決める日時によってベースとなる国債金利自体が日々変動するため、最終的な利率(利回り)に「2.972%〜3.067%」といった差が生じます。
したがって、「どの自治体の地方債を買えば一番お得か?」を事前に予測することはできません。
東京都債など一部の個別発行を除き、日本の地方債市場では多くの自治体が同じ上乗せ幅で一斉に発行する慣習があるためです。
利回りの違いは自治体の評価差ではなく、あくまで「条件決定した瞬間の市場金利の違い」に過ぎません。
少しでも高い利回りを目指す場合は、事前に予測しようとせず、発行条件が確定したあとに各銘柄の決定利回りを確認し、個人向けに販売されているラインナップの中から最も高いものを選ぶのが確実です。
なお、ここで挙げた銘柄がすべて個人向けに販売されたわけではなく、実際に購入できるかどうかは利用している証券会社の取扱いラインナップで確認する必要があります。
8月分の共同債は、条件決定予定日が8月6日、発行予定日は8月25日、償還予定日は2036年8月25日、期間10年、発行予定額は890億円です。
注意しておきたいポイント
- 個人向け国債:中途換金は発行から1年経過後に限られ、直近2回分の利子相当額(税引前)が差し引かれます
- 地方債:発行体(自治体)の信用力によって利率が異なり、国債に比べて流動性がやや低い場合があります。すべての銘柄が個人向けに販売されるわけではないため、購入前に取扱証券会社のラインナップを確認しましょう
- いずれも、購入を検討する際は最新の発行条件を財務省や地方債協会の公式発表で確認することをおすすめします
参考
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
- 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
- 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
- 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
