10年後の手取り利息に10万円の差? 3%超の「地方債」と金利上昇に備える「国債」、100万円分購入した際のシミュレーション
FAMILY STOCK/Shutterstock
債券ニュース

10年後の手取り利息に10万円の差? 3%超の「地方債」と金利上昇に備える「国債」、100万円分購入した際のシミュレーション

「高利回り固定」の地方債か、「利上げ追従」の変動国債か。満期保有で後悔しない選び方

執筆者高原 祥子LIMO&ファイナンス編集部記者
19:00
10年後の手取り利息に10万円の差? 3%超の「地方債」と金利上昇に備える「国債」、100万円分購入した際のシミュレーション
FAMILY STOCK/Shutterstock

この記事はここがポイント

  • 利息の差: 100万円を10年運用した場合の手取り利息は、地方債(年3.027%)が約24.1万円、国債(初年1.80%想定)が約14.3万円で、差額は9万7,800円
  • 共同債の強み: 複数自治体が連帯債務を負う安全性の高い仕組みで、年3%超の高利回りを10年間確実に固定できる
  • 個人向け国債の強み: 今後の追加利上げに応じて受け取る利息が増える柔軟性と、1年経過後は元本割れせずに解約できる安心感がある

日本経済が「金利のある世界」へと本格的に移行するなか、資産運用のポートフォリオにおいて債券の存在感が日増しに高まっています。

株式市場が神経質な展開を見せる局面では、以下のような理由から債券への関心が強まります。

  • 確実性の高さ: 満期まで保有すれば、あらかじめ決まった利息を確実に受け取れる
  • 資産の安定性: 株式のように大きな価格変動に振り回されない

なかでも個人の関心を集めているのが、2026年7月募集において、一部の銘柄では利率が3%の大台に乗った地方債と、金利上昇局面の定番商品である個人向け国債(変動10年)の比較です。

「高利回りを今すぐ確定させるか」それとも「今後のさらなる利上げに期待するか」——。

100万円を運用した際の具体的な試算とともに、それぞれの特性を紐解きます。

今回の比較対象:安全性を高めた「共同債」とは?

シミュレーションに入る前に、今回地方債のサンプルとして取り上げる「共同債」の仕組みを確認しておきましょう。

個人投資家にも広く販売されているこの債券には、安全性を高める工夫が施されています。

地方債は共同債のほかにも、各都道県や市が発行するものがありますが、毎月安定的に個人向けの販売があるという観点から、共同債をサンプルに選んでいます。

共同債(共同発行市場公募地方債)の特徴

  • 共同発行の目的:複数自治体が発行コストの削減と資金の安定調達を狙い、地方財政法に基づき2003年から共同で発行
  • 強固な支払い体制:資金調達の有無にかかわらず、参加するすべての自治体が「連帯債務」を負う仕組み
  • 専用ファンドの設置:災害などの緊急時にも支払いが遅滞しないよう保証ファンドを配備
  • 定期的な発行:毎月発行されており、個人投資家にとっても信頼性の高い投資対象

条件比較

共同債(10年)と、国が発行する個人向け国債(変動10年)のスペックを比較します。

個人向け国債(第196回 変動10年)

  • 発行体: 日本国
  • 金利タイプ: 変動金利(半年ごとに実勢金利に応じて利率が見直される)
  • 適用利率: 年1.80%(※初回6カ月間の適用利率)
  • 利払い: 年2回(10年間で合計20回)

共同発行市場公募地方債(第280回 10年)

  • 発行体: 複数の地方公共団体(都道府県・指定都市など)
  • 金利タイプ: 固定金利(満期まで10年間ずっと同じ利率が適用される)
  • 適用利率: 年3.027%(※満期まで変わらない)
  • 利払い: 年2回(10年間で合計20回)

国債と地方債の比較一覧

国債と地方債の比較一覧
出所:各資料より筆者作成

シミュレーション:10年後の手取り利息はどれだけ違う?

100万円を購入し、10年間持ち切った場合の税引後利息を計算します。

なお、個人向け国債については、「現在の1.80%という利率が10年間変わらずに推移した」と仮定して試算します(※金利が上昇すれば手取り額は増加します)。

※税率は復興特別所得税を含む20.315%(国税15.315%・地方税5%)を適用。各利払いごとに円未満を切り捨てて算出しています。

個人向け国債(変動10年・年1.80%仮定)

  • 半年ごとの手取り利息:7,172円
  • 10年間の手取り累計:14万3,440円

共同発行地方債(10年・年3.027%固定)

  • 半年ごとの手取り利息:1万2,062円
  • 10年間の手取り累計:24万1,240円

手取り利息の差額

9万7,800円(共同債の勝ち)

金利が横ばいで推移した場合の差額は約9.8万円となり、最初から高水準の金利が固定されている共同債が大きくリードする結果となりました。

利回りだけでは測れない「選択の分岐点」

約10万円の手取り差だけを見ると共同債一択のように思えますが、選択を左右する2つの重要な考慮ポイントがあります。

今後の「金利上昇」への対応力の差

共同債(固定金利)

  • 年3.027%の利率が10年間固定される
  • 今後さらに世の中の金利が上がっても、受け取る利息は増えない

個人向け国債(変動金利):

  • 半年ごとに実勢金利に応じて適用利率が改定される
  • 利上げが続けば受取利息が増加し、共同債との差額が徐々に縮まる

中途解約時の「安全性(元本保証)」

共同債(地方債)

  • 満期前に売却する場合、その時点の市場価格で取引される
  • 金利上昇局面では債券価格が下落するため、途中売却で「元本割れ」するリスクがある

個人向け国債

  • 発行から1年経過すれば、いつでも国が額面で買い取ってくれる
  • 直近2回分の利息相当額が引かれるものの、元本そのものは100%保証される

まとめ:あなたに合うのはどちら?

最後に、各債券がどのような投資家に向いているかを整理しました。

①「共同債」がおすすめな人

10年間絶対に使う予定がない「完全な余剰資金」を運用したい人

年3%超という好条件を今すぐ確実に確定させたい人

連帯債務や専用ファンドといった強固な安全性を評価する人

②「個人向け国債(変動10年)」がおすすめな人

日銀の追加利上げによるさらなる利回り向上に期待したい人

途中解約の可能性がゼロではなく、絶対に元本割れを避けたい人

金利環境の変化に合わせて柔軟に資産を守りたい人

約30年ぶりの高水準となるなか、住宅ローンの負担増に悩んでいるだけでなく、「債券投資」に目を向けてみるのも資産防衛のための一つの手です。

ご自身の保有資金の性質やライフプランに合わせて、最適な1本を選んでみてください。

参考

免責事項

  • 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
  • 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
  • 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
  • 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
Google で優先するソースとして追加
高原 祥子LIMO&ファイナンス編集部記者

関連タグ