この記事はここがポイント
- 8月21日は日経平均が反落しTOPIXは上昇、「グロース売り・バリュー買い」が鮮明。
- ファーストリテイリング安で日経平均は押し下げられ、商社・銀行・トヨタ高がTOPIXを支える構図。
- NT倍率低下がバリュー優位の相場を示し、指数の逆行から市場の物色中身を読み解くことが肝要。
8月21日の東京株式市場は、日経平均株価が前日比▲200.43円(▲0.30%)の66,016.36円と反落しました。一方でTOPIXは上昇し、指数が逆の方向を向く一日に。主役は、商社や銀行、保険といったバリュー株の買いでした。
株価指数と為替——日経は反落、TOPIXは上昇
日経平均は▲0.30%の66,016.36円と小幅に反落した半面、TOPIXは+7.56ポイント(+0.19%)の4,067.29ポイントと上昇しました。ドル円は158円台後半(前日比▲0.04%)で、方向感の乏しい小動きにとどまっています。
この逆行の主因は、日経平均への影響が大きい値がさ株の下落です。指数寄与の大きいファーストリテイリング<9983>が▲3.63%と大きく下げ、ソフトバンクグループ<9984>や任天堂<7974>も軟調で、日経平均を押し下げました。半面、時価総額の大きい金融・商社株が広く買われ、幅広い銘柄で構成されるTOPIXを支えた——この対照が、指数の逆行に表れています。
買われた銘柄・売られた銘柄
買われたのは、バリュー・内需系が中心でした。伊藤忠商事<8001>が+3.79%、MS&ADインシュアランスグループ<8725>が+3.60%、NTT<9432>が+2.91%、三井物産<8031>が+2.62%、キオクシアホールディングス<285A>が+2.59%、トヨタ自動車<7203>が+2.15%と、商社・保険・通信・自動車が軒並み上昇しています。
一方、売られたのは値がさ・グロース系です。ファーストリテイリング<9983>が▲3.63%、NEC<6701>が▲3.40%、三菱重工業<7011>が▲3.01%、富士通<6702>が▲2.59%、ソフトバンクグループ<9984>が▲2.45%、任天堂<7974>が▲2.07%と下げました。なお、これらの銘柄で当日に新たな決算や業績修正の発表は確認されず、値動きは決算ではなく、需給や物色の変化によるものとみられます(四半期決算は7月下旬〜8月上旬に一巡)。
この日の相場——グロース売り・バリュー買いの一日
この日を振り返ると、構図はきわめて明快でした。半導体や電機、値がさのグロース株から資金が抜け、商社・銀行・保険・自動車といったバリュー株へと向かった、いわゆる「グロース売り・バリュー買い」の一日です。半導体関連は東京エレクトロン<8035>(+0.50%)やアドバンテスト<6857>(+1.53%)が底堅い一方、NEC<6701>や富士通<6702>、村田製作所<6981>、信越化学工業<4063>は下げるなど、内部でもまだら模様でした。
セクターの動き——卸売・保険・銀行が上昇、小売・一部電機が下落
上昇が目立ったのは、卸売業(総合商社)です。伊藤忠<8001>・三井物産<8031>・三菱商事<8058>・丸紅<8002>・住友商事<8053>がそろって高く、資源・インカム妙味が意識されました。保険(東京海上ホールディングス<8766>+1.58%、MS&AD<8725>+3.60%、第一生命ホールディングス<8750>+1.19%)や銀行(三菱UFJ<8306>+1.27%、三井住友<8316>+0.92%)も堅調で、金利環境を追い風に金融株が広く買われた格好です。
反対に下落が目立ったのは、小売業(ファーストリテイリング<9983>の急落が主因)と、電気機器の一角(NEC<6701>・富士通<6702>)、機械の三菱重工業<7011>でした。金融・商社・自動車といった時価総額の大きいバリュー業種が上げてTOPIXを支え、値がさ株が日経平均を押し下げる——セクターの顔ぶれも、バリュー優位の相場を裏づけています。
NT倍率——低下し、バリュー優位を示す
NT倍率(日経平均÷TOPIX)は、この日およそ16.23倍と、前日の約16.31倍から低下しました。NT倍率の低下は、TOPIXに対して日経平均が相対的に弱かったこと、すなわち値がさのグロース株よりも、金融・内需などのバリュー株に資金が向かったことを示します。足元のNT倍率は近年切り上がってきた水準にあり、決して低いとはいえませんが、この日に限れば方向はバリュー優位。事実として、指数の逆行とNT倍率の低下は、同じ相場つきを別の角度から映しています。
元機関投資家イズミダの視点:指数の逆行は「相場の物色」を映す鏡
日経平均が下げ、TOPIXが上げる——こうした指数の逆行を見ると、私はいつも「今日は市場が何を選んだのか」を考えます。この日の答えははっきりしていて、値がさのグロースを手放し、商社・銀行・保険・自動車といったバリューを拾う、という物色でした。日経平均だけを見て「相場は弱かった」と早合点すると、足元で起きているこの資金の移動を見落としてしまいます。
私がいつも申し上げているとおり、株式投資は「なんでも鑑定団」と同じで、勝負は値決めです。同じ一日でも、市場は銘柄ごとに違う値付けをしています。指数の上げ下げという一点だけでなく、どのセクターに、なぜ資金が向かったのか——その中身を読むことが、相場と長く付き合ううえでの土台になります。もっとも、一日の物色がそのまま続くとは限りません。数字の裏にある需給を、幅を持って見ておきたいところです。
免責事項
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株式会社モニクルリサーチ代表取締役。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。元機関投資家。フィデリティ投信や日本生命で日本株式や米国株式の証券アナリストやファンドマネージャーとして勤務。東京科学大学大学院非常勤講師。
