2027年3月期1Qで四輪は黒字に戻った。それでも利益で上回るのは二輪
直近の2027年3月期1Qは、様子が変わっている。
売上収益は6兆615億円で前年同期比+13.5%、営業利益は5,307億円で+117.4%。税引前利益6,050億円(+107.0%)、四半期利益(親会社の所有者に帰属)4,509億円(+129.3%)と、いずれも倍増前後の増益となった。
会社の説明によると、増収は金融サービス事業と二輪事業の増加、および為替換算による増加影響などによるもので、営業増益は前年同期のEV関連損失の影響や関税影響などによる。前年同期に一時的な損失が乗っていた反動が、増益率を押し上げた形だ。
セグメント別に見ると、四輪事業の営業利益は1,921億円。前年同期の▲296億円から黒字転換した。
それでも同じ四半期の二輪事業の営業利益は2,339億円で、四輪を上回っている。売上収益は四輪が3兆8,791億円、二輪が1兆1,411億円で、3.4倍の差がある。売上で3倍以上の開きがありながら、利益では二輪が多い。
二輪事業の1Qの営業利益率は20.5%まで切り上がった。四輪事業は5.0%、金融サービス事業は営業利益1,058億円で10.3%である。
通期予想は売上収益24兆1,500億円(+10.8%)、営業利益6,500億円、当期利益4,000億円。1Qの営業利益は通期予想に対して8割を超える進捗、当期利益は1Qだけで通期予想を上回る進捗となっている。会社計画がかなり保守的に置かれていると考えられる。
年間配当は前期と同じ70円を予想する。赤字となった2026年3月期も、その前の期の68円から70円へ引き上げていた。
昨秋以降の株価は、この構造をどこまで映しているのか
株価の動きも並べておきたい。2025年9月末の終値は1,500円台で、そこから今年2月末まで、月末終値はおおむね1,500円台で推移した。
動いたのは2026年3月末である。1,200円台まで大きく下押しし、4月末もその水準にとどまった。
そこから緩やかに切り上がり、5月末と6月末は1,400円台、7月末は1,600円台へ。2025年9月末以降の月末終値では、7月末が最も高い水準にあたる。2026年8月時点の終値は、そこからさらに一段上の水準にある。
昨秋から3月末までの下押しと、その後の戻り。何が意識されたのかを断定はできない。ただ時期の並びを追えば、四輪事業の損失が数字として確定していく局面で株価は低い水準にあり、四輪の黒字転換と二輪の利益が表に出た局面で水準を切り上げている、という対応関係は読み取れる。
自己資本比率は2026年3月期末で35.3%と、輸送用機器業種の中央値53.2%を下回る。ただしこの会社は販売金融をグループ内に抱えており、金融事業の資産と負債が連結の貸借対照表に乗る。事業会社単体の物差しをそのまま当てるのは無理があるだろう。
営業活動によるキャッシュ・フローは2026年3月期に1兆1,352億円で、前期の2,921億円から大きく回復した。会計上の損失と現金の出入りが同じ方向を向いていない期でもあった。
筆者コメント
セグメント別の設備投資額と営業利益を同時に並べると、この会社の見え方が変わってくる。
投資の重心は四輪に置かれ、利益の重心は二輪にある。同じ会社の中で、資本を最も食べる事業と、資本1単位あたりで最も稼ぐ事業が別々に立っている。
それでも会社の像が四輪に寄り続けるのは、売上構成比という最も目に入りやすい物差しが四輪を指すからだろう。資本の重さは決算書を開かないと見えない。この見え方のずれが、イメージが更新されない理由の一つではないだろうか。
もっとも、軽い資本で高い利益率を出す構造は、需要の重心が動けば同じ軽さで揺らぐ可能性もある。二輪の利益率の高さをそのまま安心材料として置くのではなく、その利益がどの地域のどの需要に支えられているかまで下りて見たい。
事業ポートフォリオを見るときは、売上構成比だけでなく、その事業がどれだけの資本を使って利益を出しているかを確かめる癖をつけることをおすすめしたい。
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オリックスなどの国内金融機関出身。日本株アナリストおよび財務アドバイザーとして決算分析や資金調達を主導。「日経CNBC」出演などメディアを通じた相場解説の実績も豊富。企業財務に精通し、現在はモニクルリサーチで金融ニュースの深掘り記事を発信。
