この記事はここがポイント
- 厚生年金と国民年金で月20万円以上は全体の18.8%。男性27.5%、女性1.7%の男女差
- 厚生年金と国民年金の平均月額は15万289円。男女間で約5.8万円の差
- 2026年度、基礎年金+1.9%、報酬比例部分+2.0%に改定。満額の月額は7万608円
日本年金機構は2026年4月分から、公的年金の年金額を改定しました。厚生年金や国民年金を受け取る人にとって、実際の受給額がどう変わるかは大きな関心事です。
公的年金は物価や賃金の変動に応じて毎年度見直される仕組みのため、金額は年によって変わります。厚生年金や国民年金は老後の生活資金の柱となるため、平均額や分布を把握しておくと将来設計に役立つでしょう。
一方で、厚生年金と国民年金を合わせて月20万円以上受け取る人が全体のどれくらいを占めるかは、意外と知られていません。また、男女で受給額に大きな差がある点も見落とされがちです。
そこで本記事では、厚生年金と国民年金を合わせた平均月額や、月20万円以上を受け取る人の割合を解説します。2026年度の年金額改定についても紹介するので、参考にしてみてください。
厚生年金と国民年金の平均月額はいくらか(2024年度実績)
厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金保険(第1号)の老齢年金受給権者は男女合わせて1608万5696人でした。
老齢年金受給権者とは、老齢を理由に厚生年金を受け取る権利を持つ人を指します。このうち男性は1067万9944人、女性は540万5752人です。これは民間企業の会社員などが対象で、公務員共済のみの加入者は含まれません。
平均年金月額(基礎年金を含む)は、男女計で15万289円でした。厚生年金は現役時代の賃金や加入期間によって金額が決まるため、平均額はあくまで目安の一つです。自分の年金見込額と比較する際は、この平均額を一つの基準として活用してください。
年齢別老齢年金受給権者数及び平均年金月額
男女別の平均月額
男女別に見ると、男性の平均月額は16万9967円、女性は11万1413円です。男女差はおよそ5万8000円あり、厚生年金の報酬比例部分が賃金水準や加入期間の差を反映するため生じています。
同じ厚生年金加入者でも、勤務年数や現役時代の賃金によって受給額には大きな幅があります。男女差の背景には、勤続年数や賃金水準における歴史的な違いが影響しています。この差は老後の家計設計にも影響するため、夫婦で年金見込額を確認しておくと安心です。
「月20万円以上」をもらえる人は全体の何パーセントか
厚生年金と国民年金を合わせた月額が20万円以上の受給権者は、男女計で302万7673人です。これは老齢年金受給権者全体の18.8%にあたります。厚生年金と基礎年金を合算しても、5人に1人に満たない水準です。言い換えると、老齢年金受給権者の10人中8人は月20万円未満にとどまっています。
男女別では、男性が293万6780人で男性全体の27.5%、女性は9万0893人で女性全体の1.7%です。男女の割合差は約25.8ポイントと大きく開いています。厚生年金は現役時代の賃金と加入期間の掛け合わせで金額が決まるため、平均賃金や勤続年数の男女差が受給額の差に影響しています。
厚生年金月額ごとの受給権者数
階級別内訳と男女差
20万円台の内訳を見ると、20万円から21万円未満が85万3591人と最も多く、21万円から22万円未満が70万4633人と続きます。22万円から23万円未満は52万3958人です。20万円台前半(20万円から22万円未満)だけで約156万人となり、20万円以上の受給権者全体の半数を超えます。
さらに、23万円から24万円未満が35万0004人、24万円から25万円未満が23万0211人、25万円から26万円未満が15万0796人です。
26万円から27万円未満は9万4667人、27万円から28万円未満は5万5083人です。28万円から29万円未満は3万0289人、29万円から30万円未満は1万5158人と続きます。
金額が上がるほど人数は減り、30万円以上は1万9283人にとどまります。
2026年度の年金額はどう変わるのか
日本年金機構は2026年4月分から年金額を改定しました。改定率は、老齢基礎年金が前年度比プラス1.9%、厚生年金の報酬比例部分がプラス2.0%となりました。
老齢基礎年金の満額(月額)は7万608円です。
令和8年4月分からの年金額
モデル世帯の月額例と基礎年金満額
日本年金機構が公表するモデル世帯の年金月額は23万7279円です。これは老齢年金受給権者全体の平均月額15万0289円より8万6990円多く、月20万円以上のラインを上回る金額です。
このモデル世帯は、夫が平均的な賃金(平均標準報酬45万5000円)で40年間就業し、妻が同じ期間第3号被保険者だった場合を想定しています。夫婦2人分の老齢基礎年金(満額)と、夫の老齢厚生年金(報酬比例部分)を合計した金額です。
【監修者コメント】年金を増やすには?知っておきたい3つの方法を元銀行員が解説
物価の上昇や老後資金への関心が高まるなか、「将来の年金だけで生活できるだろうか」と不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
銀行で資産相談を担当していた頃も、「年金を少しでも増やす方法はありますか」というご相談を数多くいただきました。
実は、公的年金には受け取り方を工夫したり、加入状況に応じた制度を活用したりすることで、将来の受給額を増やせるケースがあります。
ここからは、年金を増やすために知っておきたい3つの方法を分かりやすく紹介します。
繰下げ受給を活用する
年金を増やす方法として代表的なのが、「繰下げ受給」です。
本来65歳から受け取る年金を66歳以降に繰り下げると、1か月遅らせるごとに0.7%ずつ年金額が増えます。70歳まで繰り下げた場合は42%、75歳まで繰り下げた場合は84%増額され、その金額は生涯にわたって受け取れます。
一方で、受給開始が遅くなるため、何歳まで生きると受給総額が上回るのかといった点や、年金額が増えることで税金や社会保険料の負担が変わる可能性もあります。ご自身の健康状態や生活設計に合わせて検討することが大切です。
長く働き、年金制度を活用する
会社員やパートとして厚生年金に加入しながら働く期間が長くなると、その分、将来受け取る厚生年金が増える可能性があります。
また、自営業やフリーランスの方は、付加年金や国民年金基金を活用することで、国民年金に上乗せした年金を準備できます。さらに、国民年金の加入期間が40年に満たない場合は、60歳から65歳まで任意加入を利用して満額に近づけることも可能です。
働き方や加入している年金制度によって利用できる制度は異なるため、自分に合った方法を確認しておきましょう。
iDeCoや新NISAで老後資金を準備する
公的年金を増やすだけでなく、自分で老後資金を準備することも重要です。
iDeCoは掛金が所得控除の対象となるほか、運用益も非課税となる制度で、老後資金づくりを後押しする税制優遇があります。一方、新NISAは運用益が非課税となり、必要に応じて資金を引き出せる点が特徴です。
どちらも短期間で大きな利益を目指す制度ではなく、長期・積立・分散を基本に資産形成を続けることが大切です。公的年金と組み合わせることで、老後の家計にゆとりを持たせる選択肢の一つとなるでしょう。
ねんきん定期便で自分の受給見込額を確認しよう
厚生年金と国民年金を合わせて月20万円以上を受け取る人は、全体の18.8%にとどまります。男女差も大きく、男性は27.5%である一方、女性は1.7%です。
2026年度は基礎年金がプラス1.9%、厚生年金の報酬比例部分がプラス2.0%改定され、老齢基礎年金の満額は7万0608円になりました。
自分の受給額が平均や上位層と比べてどの水準にあるかは、ねんきん定期便やねんきんネットで確認できます。ねんきん定期便は毎年、誕生月に日本年金機構から送付されます。
ねんきんネットに登録すれば、いつでもオンラインで見込額を確認できます。将来の生活設計のため、早めに自分の年金見込額を把握してください。老後資金の過不足を確認し、必要な対策を検討する時間を確保できます。
参考資料
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東京海上日動火災保険出身。企業向けのリスク分析や保険提案に従事し、全国社員への社内プレゼン経験も持つ。現在は株式会社ファイマケ代表として、FP1級の知識を活かしSNSやWebでの金融情報発信を支援している。
PROFILE
1級ファイナンシャル・プランニング技能士。慶應義塾大学商学部会計ゼミにて会計を学んだ後、東京海上日動火災保険株式会社に就職。企業が事業活動を行ううえでの自然災害や訴訟に対するリスク分析・保険提案を3年間行う。「企業が倒産しない」・「事業で安定的に利益を出す」ための適切な保険でのリスクヘッジの提案に努めた。 特に、製造業者や工事業者に対する賠償責任保険や工事保険の提案が得意。取引先企業の社長・経理・人事・プロジェクト担当者など様々な部署への営業活動を行った。上場企業の新規事業に対する保険提案が評価され、全国社員への社内プレゼンを実施した経験もある。 また、1級ファイナンシャル・プランニング技能士の資格を活かし、取引先従業員に対するNISAやふるさと納税に関するセミナーの実施経験有。現在は、SNSやWebコンテンツを通じて金融情報の発信を支援する株式会社ファイマケの代表を務める。
三菱UFJ銀行出身。資産運用コンサルティングに従事し、全国表彰を多数受賞。現在は「LIMO」編集部で金融ライターとして年金・資産運用など金融分野の記事を精力的に企画・執筆・監修している。
PROFILE
2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)保有。大学卒業後、株式会社三菱UFJ銀行にて窓口業務およびリテール営業に従事。国内外株式の仲介をはじめ、国内外債券、投資信託、生命保険、住宅ローンなど幅広い金融商品の提案・販売を担当し、資産運用コンサルティングに携わる。全国表彰を多数受賞。
金融業界で培った知識と実務経験を生かし、株式会社モニクルリサーチ(旧:株式会社ナビゲータープラットフォーム)に入社。現在は、くらしとお金の経済メディア「LIMO(リーモ)」編集部にて、記事の企画・執筆・編集・監修を担当している。
厚生労働省管轄の公的年金制度(老齢年金・障害年金・遺族年金)や社会保障をはじめ、資産運用、NISA、iDeCo、住宅ローン、カードローン、為替、株式投資など、お金に関する幅広いテーマについて、制度の仕組みや最新動向をわかりやすく解説。金融機関での実務経験と金融ライターとしての知見を生かした記事を多数執筆し、Yahoo!ニュース経済カテゴリではアクセスランキング1位を多数獲得している。

高齢者の収入事情を確認したら、次は自分の老後をイメージしてみて
私が銀行で多くのお客様の相談を受ける中で感じたのは、「年金を増やす方法」を探している方ほど、まず現在の受給見込み額を把握していないケースが少なくなかったことです。
「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で現在地を確認すると、「繰下げ受給を検討するべきか」「何歳まで働く必要があるのか」「iDeCoなどでどのくらい準備すればよいのか」が考えやすくなります。
年金制度にはさまざまな選択肢がありますが、まずは自分の状況を知ることが、老後の資金計画を立てる第一歩になるでしょう。