2026年度(令和8年度)の改定額が反映された「新しい年金」の支給が、6月15日からスタートしました。
日々の物価高が続く中、実際に年金を受け取っている方はもちろん、これから受給を迎える現役世代にとっても、老後のやりくりや将来の生活設計について改めて思いを巡らせるきっかけになっているのではないでしょうか。
今年度の年金額は、物価上昇を反映し、前年度と比較して基礎年金(国民年金)が1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%の引き上げとなりました。
ただし、年金の受給額は「現役時代の働き方」によって将来大きな個人差が生まれます。
筆者はかつて人材派遣会社の採用業務に携わっていた時期があります。
応募者のみなさんの希望する働き方は「ワークライフバランス重視」や「とにかくキャリアアップ」など実に多様でした。
しかし、そうした目前のキャリアプランの選択は、老後の年金額に直結しているのです。
この記事では、2026年度の最新年金額や支給スケジュール、働き方別の受給額モデル、そして最新統計から見えてくる「みんなのリアルな受給額分布」について解説します。
【2026年最新】公的年金制度の基本をわかりやすく解説
日本の公的年金制度には、老後の生活を支える「老齢年金」のほかに、病気やけがで生活に支障が出た場合に受け取れる「障害年金」、そして家計を支える方が亡くなった場合に家族が受け取れる「遺族年金」という、3つの大切な保障機能が備わっています。
一般的に「年金」というと、リタイア後に受け取る「老齢年金」を思い浮かべる方が多いかもしれませんね。
日本の年金制度は「国民年金」と「厚生年金」の2階建て
「2階建て構造」ともいわれる日本の年金制度は、1階部分にあたる「国民年金(基礎年金)」と、2階部分の「厚生年金」で構成されています。この仕組みにより、現役時代の働き方が将来の年金受給額に大きく影響します。
ここでは、「国民年金」と「厚生年金」の基本的な仕組みと、それぞれの「老齢年金受給額」について確認していきましょう。

1階部分:国民年金(基礎年金)の概要
国民年金の加入対象者
- 日本国内に住む、原則20歳以上60歳未満のすべての方(職業や国籍は問いません)
国民年金の保険料
- 加入者全員が一律ですが、年度ごとに改定されます(※1)
国民年金の老齢年金受給額
- 保険料を全期間(480カ月)納付した場合、65歳から満額(※2)の老齢基礎年金を受け取ることができます
※1 国民年金保険料:2026年度の月額は1万7920円です。
※2 国民年金(老齢基礎年金)の満額:2026年度の月額は7万608円です。
2階部分:厚生年金の概要
厚生年金の加入対象者
- 会社員や公務員のほか、パートタイマーなどで特定適用事業所(※3)に勤務し、一定の要件を満たす方(国民年金に上乗せして加入します)
厚生年金の保険料
- 収入に応じて保険料が決まります(上限あり)(※4)
厚生年金の老齢年金受給額
- 加入期間や納付した保険料額によって個人差が生じます
このように、国民年金と厚生年金では、加入対象者、保険料の決定方法、老齢年金額の計算方法などが異なります。
そのため、現役時代の年金加入履歴によって、実際に受け取る老齢年金額には個人差が生じるのです。
※3 特定適用事業所:1年のうち6カ月以上、厚生年金保険の被保険者(短時間労働者を除く)の総数が51人以上となる見込みの企業などを指します。
※4 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)と標準賞与額(上限150万円)に保険料率を乗じて計算されます。
【2026年】年金支給日カレンダー
公的年金は、原則として偶数月の15日(※5)に、直前の2カ月分がまとめて支給される後払い方式です。
2026年の「年金支給日」と「支給対象月」は以下の通りです。
2026年の年金支給日
- 2026年2月13日(金):2025年12月・2026年1月分
- 2026年4月15日(水):2月・3月分
- 2026年6月15日(月):4月・5月分(※この支給分から新年度の改定額が反映)
- 2026年8月14日(金):6月・7月分
- 2026年10月15日(木):8月・9月分
- 2026年12月15日(火):10月・11月分
※5 15日が土日・祝日の場合は、その直前の平日に支給日が前倒しされます。
【2026年度】年金額改定!国民年金は1.9%、厚生年金は2.0%の増額
令和8年度の年金額の例
2026年度の年金額は、前年度と比較して基礎年金(国民年金)が1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%の引き上げとなります。
この改定後の新しい年金額は、4月・5月分が支給される6月15日の支給分から適用されています。
国民年金・厚生年金の改定後金額モデル
- 国民年金(老齢基礎年金・満額・1人分):月額7万608円(+1300円)
- 厚生年金(夫婦2人分のモデルケース):月額23万7279円(+4495円)
※昭和31年4月1日以前に生まれた方の老齢基礎年金満額は、月額7万408円(対前年度比+1300円)です。
※厚生年金のモデルケースは、平均的な収入(賞与含む月額換算で45万5000円)の男性が40年間就業した場合の給付水準(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金満額)です。
厚生労働省は、今回の年金改定の公表に際し、「多様なライフコースに応じた年金額」として、現役時代の働き方や収入別の年金額モデルを提示しています。
働き方で年金額は変わる!ライフコース別・5パターンの受給額例
年金の加入期間や現役時代の収入によって、将来受け取る年金額はどのように変化するのでしょうか。
厚生労働省が公表した「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」では、2026年度の年金額改定内容とあわせて、現役時代の年金加入状況や年収ごとの年金額モデルが「多様なライフコースに応じた年金額」として示されています。
具体的には、「2026年度に65歳になる方」を想定した年金額の概算が、公的年金の加入履歴類型と男女別に合計5パターン提示されています。
多様なライフコースに応じた年金額
【パターン1】男性・厚生年金中心の場合
年金月額:17万6793円
- 平均厚生年金期間:39.8年
- 平均収入:50万9000円※賞与を含む月額換算。以下同様。
- 基礎年金:6万9951円
- 厚生年金:10万6842円
【パターン2】男性・国民年金(第1号)中心の場合
年金月額:6万3513円
- 平均厚生年金期間:7.6年
- 平均収入:36万4000円
- 基礎年金:4万8896円
- 厚生年金:1万4617円
【パターン3】女性・厚生年金中心の場合
年金月額:13万4640円
- 平均厚生年金期間:33.4年
- 平均収入:35万6000円
- 基礎年金:7万1881円
- 厚生年金:6万2759円
【パターン4】女性・国民年金(第1号)中心の場合
年金月額:6万1771円
- 平均厚生年金期間:6.5年
- 平均収入:25万1000円
- 基礎年金:5万3119円
- 厚生年金:8652円
【パターン5】女性・国民年金(第3号)中心の場合
年金月額:7万8249円
- 平均厚生年金期間:6.7年
- 平均収入:26万3000円
- 基礎年金:6万9016円
- 厚生年金:9234円
上記はあくまで一例ですが、厚生年金の加入期間が長く、現役時代の収入が高いほど、老後に受け取る年金額も多くなる傾向がわかります。
また、国民年金と厚生年金のどちらを中心に加入していたかが、年金水準に大きく影響していることも見て取れます。
厚生年金・国民年金の受給額分布を男女別にグラフで確認
老後に受け取る年金額は、現役時代の年金加入状況によって一人ひとり異なります。ここでは、厚生労働省年金局の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、60歳から90歳以上の全受給権者を対象とした厚生年金と国民年金の受給額分布を見ていきましょう。
厚生年金平均月額
国民年金平均月額
厚生年金の平均受給月額:男女差と個人差
厚生年金の平均年金月額は、全体で15万289円でした。男女別の内訳は以下の通りです。
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
※国民年金部分を含みます。
厚生年金の月額階級別受給者数
- ~1万円:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
厚生年金の平均受給月額は全体で15万円台ですが、男性は16万円台、女性は10万円台と男女差が見られます。
また、受給額は月額1万円未満の方から25万円を超える方まで幅広く分布しており、個人差が大きいことがわかります。
国民年金の平均受給月額:男女差と個人差
国民年金の平均年金月額は、全体で5万9310円でした。男女別の内訳は以下の通りです。
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
国民年金の月額階級別受給者数
- 1万円未満:5万1828人
- 1万円以上~2万円未満:21万3583人
- 2万円以上~3万円未満:68万4559人
- 3万円以上~4万円未満:206万1539人
- 4万円以上~5万円未満:388万83人
- 5万円以上~6万円未満:641万228人
- 6万円以上~7万円未満:1715万5059人
- 7万円以上~:299万7738人
国民年金の平均年金月額は男女ともに5万円台で、最も多い層(ボリュームゾーン)は「6万円以上~7万円未満」です。
多くの方が満額に近い年金額を受け取っている一方で、月額1万円未満となる方も一定数いることがわかります。
まとめ:年金制度の変更点を理解し将来に備えよう
今回は、2026年度の年金額改定の内容、最新の受給額分布、について解説しました。
次回の年金支給日は8月14日(金)です。すでに6月15日の支給分から、今年度の増額改定が適用された新しい年金額が反映されています。
国民年金が満額で月額7万円台になるなど明るい話題もありますが、厚生労働省が示した5つのモデルケースからもわかる通り、現役時代の働き方や収入が老後の受給額に大きく影響します。
物価上昇が続くなか、公的年金だけに頼るのではなく、ご自身の備えについて改めて考えておくことが大切です。
また、2025年に成立した改正法により、2028年4月から遺族厚生年金の男女差解消に向けた見直しが段階的に始まります。
多様化する家族のあり方に合わせた重要な法改正ですので、ご自身の世帯にどのような影響があるのかを早めに把握しておくことをおすすめします。
年金制度は時代とともに変化しますが、その基本を正しく理解しておくことは、長期的な視点でのライフプランニングの安心につながります。
本記事で紹介した最新データや支給日カレンダーを参考に、ご自身の将来に向けたマネープランを検討してみてはいかがでしょうか。
参考資料
早大卒。証券外務員二種・相続診断士。15年の書籍校閲で培ったファクトチェック力を武器に、一次資料に基づく「お金と暮らし」の分析記事を担当する編集記者。認知症介護経験をいかし、読者目線に立った情報発信も。
