この記事はここがポイント
- 借り換えは数十万円の諸費用発生、トータルコストメリット確認が必須。
- 借り換えは新規審査が必須、残存期間超過の返済期間設定は原則不可。
- 金利上昇で2026年1〜3月フラット35借り換え申請が前年比4倍超と急増。
「金利が上がっているみたいだけど、今の変動金利のままで大丈夫だろうか……」
そんな不安を抱えている方は、少なくないのではないでしょうか。
銀行員時代、住宅ローンの相談窓口に来るお客さまのほとんどは、変動金利タイプを選ばれていました。
当時は「金利がこれ以上上がる気配がない」という空気が強く、月々の返済を少しでも抑えたいというニーズから、変動金利が圧倒的な人気でした。
しかし今、状況は変わりつつあります。
金利上昇のニュースが相次ぐ中、変動金利から全期間固定金利タイプへの借り換えを検討する人が急増しています。
固定金利型の代表格である「フラット35」への借り換え申請件数を見ても、その傾向は顕著です。
住宅金融支援機構が公表した最新データによると、2025年度のフラット35申請戸数のうち、借り換えによる申請は約1686戸にのぼり、前年度から3倍以上に急増しています。
さらに直近の2026年1〜3月のわずか3カ月間だけで686戸の借り換え申請があり、前年同期比で4倍以上という急激なペースで増加しています。
このように、金利上昇リスクへの備えとして借り換えへの関心はかつてないほど高まっています。
ただ、焦って決断してしまうと、諸費用を含めたトータルコストで損をするケースもあります。借り換えで本当にメリットが得られるかどうか、事前にしっかりと確認しておきたいポイントがいくつかあります。
住宅ローンの借り換えとは?
住宅ローンの借り換えとは、現在返済中の住宅ローンを、新たに別の金融機関のローンで組み直すことをいいます。
現在のローンを一括返済し、新しいローンでそれを肩代わりしてもらうイメージです。
金利タイプの切り替えだけでなく、金利水準の低いローンへの乗り換えや、団体信用生命保険(団信)の保障内容を見直すためにも活用されます。
【参考】住宅ローンの平均残高
住宅ローンの平均残高(二人以上世帯)
住宅ローンの平均残高は、20歳代~70歳代の各年代で次のとおり。
- 20歳代:平均919万円/中央値21万円
- 30歳代:平均1916万円/中央値1870万円
- 40歳代:平均1651万円/中央値1500万円
- 50歳代:平均1117万円/中央値1000万円
- 60歳代:平均697万円/中央値300万円
- 70歳代:平均474万円/中央値0円
住宅ローンを借り換えるメリット
十分に検討して組んだ住宅ローンですが、借り換えることで次のようなメリットがあります。
毎月の返済額・総返済額を減らせる
過去に金利が高い時期に借りていた場合、現在より低い金利のローンへ借り換えることで、毎月の返済額や総返済額を圧縮できる可能性があります。残りの返済期間が長いほど、その恩恵は大きくなります。
金利上昇リスクに備えられる
変動金利から固定金利へ借り換えることで、今後の金利上昇によって返済額がさらに膨らむリスクを抑えられます。固定金利タイプへの切り替えで月々の返済額が多少増えることもありますが、将来の金利変動に左右されない「安心感」を手に入れられるというメリットがあります。
団信の保障内容を見直せる
近年の住宅ローンは、がん保障や三大疾病保障、就業不能保障などを付加できる団信の商品が充実しています。借り換えのタイミングで保障内容を見直すことで、現在よりも手厚い保障に切り替えられるケースもあります。
住宅ローンを借り換えるデメリット
住宅ローンの借り換えにおける大きなデメリットは、新たに諸費用がかかること。
諸費用がかかる
借り換えは「お得」な印象がありますが、手続きにはさまざまな費用が発生します。主な費用の内訳は以下の通りです。
- 新しいローンの借入手数料・保証料
- 抵当権設定に伴う登記費用(司法書士報酬含む)
- 現在のローンの繰上返済(一括返済)手数料
- 抵当権抹消の登記費用
これらを合計すると、数十万円規模になることも珍しくありません。「金利が下がるから借り換えた方がいい」という判断は、こうした諸費用を含めたトータルコストで比較してこそ正しい判断といえます。金利差だけで飛びつくのは注意が必要です。
住宅ローンの借り換えで注意したい4つのポイント
住宅ローンの借り換えを検討する際には、次の4点をおさえておきましょう。
①新たに審査が必要になる
借り換えは新規の住宅ローン申し込みと同じ扱いになるため、改めて金融機関の審査を受ける必要があります。以下のような場合は、審査が通りにくくなることがあります。
- 現在のローンに返済の延滞履歴がある
- 借り換え時点での収入が当初より減っている
- 転職したばかりで勤続年数が短い
- 健康状態に変化があり、団信への加入が難しい
また、審査書類の準備など手続きの手間も相応にかかります。「金利が上がる前に急いで借り換えよう」と焦っていても、審査に時間がかかる点は念頭に置いておきましょう。
②同じ金融機関への借り換えは原則できない
住宅ローンの借り換えは、原則として別の金融機関へ乗り換えることが前提となります。現在のローンを組んでいる金融機関に「金利を下げてほしい」と交渉することはできますが、それは「借り換え」ではなく「条件変更」の手続きになります。
ただし、住宅金融支援機構の融資を金融機関経由で利用しているケースなど、特定の条件のもとで同一機関での対応が可能な場合もありますので、まずは現在の金融機関に確認してみましょう。
③現在のローンの残りの返済期間を超えることはできない
借り換え後のローン返済期間は、現在のローンの残存返済期間を超えて設定することはできません。たとえば残り15年のローンを借り換える場合、新しいローンも最長15年が上限となります。
返済期間を長く設定して月々の負担を軽くしたい、という考えは原則として通りません。あくまでも残りの期間の中でやりくりすることになります。
④借入人は原則として同一でなければならない
借り換えにあたっては、借入人(債務者)が現在のローンと同一であることが原則です。離婚などで契約者を変更したいといった事情がある場合には、別途手続きが必要になるケースがあります。
まとめ:借り換えは「目的」によって判断基準が変わる
住宅ローンの借り換えを検討するときは、まず「何のために借り換えるのか」を明確にすることが大切です。
- 固定から固定への借り換え:現在よりも金利が低い商品に切り替えられる場合に有効です。ただし、諸費用を含めたトータルコストで本当にメリットが出るかを計算した上で判断しましょう。
- 変動から固定への借り換え:今後の金利上昇リスクを避けたい場合に有効です。月々の返済額が増えることがあっても、将来の返済額の予測が立てやすくなる安心感を優先したい方に向いています。
金利が上昇する局面では、焦りから「とにかく固定へ」と動いてしまいがちです。しかし、審査の通過可否や諸費用の負担、返済期間の制限など、事前に確認しておくべきことは意外と多くあります。
まずはご自身の現在のローン残高・残存期間・金利を整理したうえで、複数の金融機関の条件を比較してみることから始めてみてはいかがでしょうか。
【免責事項】
本記事は金融機関や特定の商品への加入を推奨するものではありません。借り換えの検討にあたっては、各金融機関や専門家へのご相談をおすすめします。
参考資料
三菱UFJ銀行・三井住友信託銀行で15年以上のキャリアを築き、自身も20年以上の投資経験を持つ。現在は株式会社モニクルリサーチが運営する『LIMO』でお金に関する記事を企画・執筆・監修中。
