銀行員時代、国民年金保険料の納付書を窓口でお預かりするたびに「毎月、負担が大きいな」と感じたものです。
お客さまも「高いよねえ」と苦笑いされることがよくありました。
「また納付書が来た……今月も払えないな」と、つい後回しにしてしまう方もいるのではないでしょうか。
「払えないから未納のまま」「あとでまとめて払えばいい」という判断は、想像以上のリスクを呼び込むことがあります。
SNSで「未納でも大丈夫」という書き込みを見かけることもあるようですが、実際の影響は老後の年金額だけにとどまりません。
この記事では、日本年金機構の資料をもとに、国民年金保険料を未納にし続けた場合のリスクと、いま取れるリカバリー策を整理します。
国民年金と厚生年金の「2階建て構造」を確認
公的年金は、基礎部分となる「国民年金」と、上乗せ部分にあたる「厚生年金」から成る2階建て構造です。
国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入対象です。自営業・学生・無職の方は「第1号被保険者」として、毎月自分で保険料を納める必要があります(2026年度は月額1万7920円)。
2026年度の老齢基礎年金:40年間納付で月7万608円
令和8年度の年金額の例
- 老齢基礎年金(満額):月7万608円(40年間・全期間納付の場合)
未納期間があれば、その分だけ将来の受給額が減ります。10年間未納の場合、単純計算で月約1万7652円の減額、年間で約21万円のマイナスに相当します。「未納は自分の老後のお金を減らし続けている」ともいえます。
国民年金を未納にし続けた場合の4つのリスク
国民年金保険料を払わずに放置し続けるとどうなるのでしょうか。
考えられる4つのリスクを確認していきます。
① 老齢基礎年金が減額、最悪の場合は「無年金」に
未納期間が積み重なるほど、受け取れる老齢基礎年金は減っていきます。さらに、納付済み期間と免除期間の合計が10年未満の場合、そもそも受給資格がなく「無年金」になってしまいます。
② 障害年金・遺族年金の受給資格を失うことがある
未納の影響は老後の年金だけではありません。若くしてケガや病気で障害を負ったときに受け取れる「障害基礎年金」、遺族が受け取る「遺族基礎年金」も、未納が続くと受給資格を失うおそれがあります。
いずれも「初診日または死亡日の前々月までの1年間に未納がない」または「加入期間の3分の2以上が納付済・免除」などの要件があり、数年間の未納でこれらの条件を満たせなくなるケースも出てきます。
③ 財産の差押えに発展することも
所得があるにもかかわらず保険料を長期間放置していると、督促状・催告書・最終催告書が届き、最終的には給与・預金・自動車などの財産が差し押さえられる可能性があります。差押え件数は年々増加傾向にあり、「払えないから放置」では済まなくなるリスクがあります。
④ 延滞金が雪だるま式に増える
納付期限を過ぎると延滞金が発生します。督促状で指定された期日を過ぎた場合、年14.6%の延滞金が加算されるため、放置するほど支払総額が膨らんでいきます。
「払えない」なら未納ではなく、まず申請を:3つのリカバリー策
どうしても払えない場合、放置して未納にするのではなく、次にあげるリカバリー策を検討しましょう。
① 免除・猶予制度を申請する
収入が少ない・失業したなど正当な事由があれば、保険料の免除(全額・4分の3・半額・4分の1)や、若年者向けの「納付猶予」・学生向けの「学生納付特例」の申請が可能です。承認された期間は「未納」ではなく「免除等」として扱われ、受給資格期間にもカウントされます。
「未納」と「免除」はまったく別物です。払えない状況があるなら、放置せず申請することが最善の選択といえます。
② 追納制度で年金額を挽回する
免除・猶予を受けた期間は、10年以内であれば追納できます。追納すれば納付済みと同じ扱いになり、老齢基礎年金を満額に近づけることができます。追納する場合、古い期間から順番に行うのが一般的です。
③ 60〜65歳の任意加入を活用する
60歳時点で未納期間があり老齢基礎年金が満額に届かない場合、60〜65歳の間に任意加入して追加納付する方法があります。海外居住期間があった方にも有効な制度です。
まとめ:「払えない月」があっても、未納のままにしないことが大切
毎年度見直しが行われる国民年金保険料は上昇傾向にあります。
国民年金保険料の変遷
収入があってもなくても、収入の多寡にかかわらず、全員が一律の保険料を支払わなければいけません。
国民年金保険料の負担が大きくて払えない、あるいは後回しにして納付を失念していたというケースもあるでしょう。
未納のまま放置することで起こりうるのは、老後の年金の減額だけではありません。障害年金・遺族年金の受給資格喪失、財産の差押え、延滞金の発生と、リスクは多岐にわたります。
「払えない」という状況があるなら、まず免除・猶予制度の申請を。過去に未納期間がある方も、追納や任意加入で挽回できるチャンスがあります。
まずはお近くの年金事務所、またはねんきんネットで自分の納付状況を確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。
参考資料
三菱UFJ銀行・三井住友信託銀行で15年以上のキャリアを築き、自身も20年以上の投資経験を持つ。現在は株式会社モニクルリサーチが運営する『LIMO』でお金に関する記事を企画・執筆・監修中。
