夏の暑い日が続くこの時期、体調管理には気を付けたいですね。筆者はFP(ファイナンシャルプランナー)として家計相談に応じる中で「老後の医療費が心配」というお声をうかがうこともあります。
厚生労働省の患者調査など最新データをもとに、75歳以上の方の医療状況と備え方について詳しく解説します。
※厚生労働省「令和5年(2023年)患者調査の概況」は3年ごとに実施されるため、現在発表されている最新情報となります。
入院患者の「50%超」が75歳以上!数字で見るシニア世代の受療実態
推計患者数は全年齢の半数以上
日本の医療において、75歳以上の方が占める割合は非常に大きくなっています。高齢になるにつれて医療機関にかかる機会が増える実態が、以下のデータから読み取れます。
入院している推計患者数
全体117万5300人のうち、半数以上の67万2900人が75歳以上です。
外来通院している推計患者数
全体の約3割にあたる227万5300人が75歳以上を占めています。
人口10万人あたりの受療率(医療機関にかかる割合)
全体の平均と比較すると、75歳以上の「入院受療率」は約3.5倍、「外来受療率」は約2倍に達しています。
在宅医療の広がり
在宅医療を受けている外来患者さんのうち、約85%(20万2500人)が75歳以上です。多くの方が訪問診療や往診を利用しており、住み慣れた地域やご自宅で療養生活を送られていることがうかがえます。
このように、ご自宅などで在宅医療を利用する方が多い一方で、ご病状によってはどうしても入院治療が必要になるケースも少なくありません。それでは、実際に入院となった場合、どのようなご病気で療養期間が長くなりやすいのでしょうか。
平均入院日数「39日」!75歳以上で入院が長引きやすい病気トップ5は?
75歳以上の患者さんは、若い世代と比べて入院期間が長期化しやすい傾向にあります。全体の平均在院日数が28.4日であるのに対し、75歳以上では39.0日と、10日以上も長くなっています。
具体的に入院が長引いているご病気(分類ごとの平均在院日数)の上位5つは以下の通りです。
- 1位:精神及び行動の障害(507.6日)
統合失調症や認知症などが含まれます。回復までに時間がかかったり、継続的なケアが必要になるため、入院生活が年単位に及ぶことも少なくありません。 - 2位:神経系の疾患(151.6日)
アルツハイマー病などが含まれ、こちらも長期的なサポートが必要となります。 - 3位:循環器系の疾患(43.1日)
脳出血や脳梗塞などの脳血管疾患が含まれます。なお、脳血管疾患単体で見ると80.1日とさらに長めになります。 - 4位:筋骨格系及び結合組織の疾患(41.5日)
関節リウマチや骨折の治療などがここに含まれます。 - 5位:感染症及び寄生虫症(41.4日)
結核などが含まれ、治癒と再発防止のために一定の療養期間が求められます。
また、入院時の重症度を見てみると、以下のような状況です。
- 生命の危険は少ないものの、入院での治療が必要な方: 77.4%
- 受け入れ条件さえ整えば退院可能な方: 11.5%
- 生命の危険がある状態の方: 6.3%
多くの方が「生命の危険は少ないものの、病院でのケアが必要」という状況にあります。また、条件が整えば退院できる方も1割以上いらっしゃるため、スムーズに生活を移行できるよう、退院後の受け皿となる施設選びや在宅ケアの体制づくりがいかに重要であるかがわかります。
入院や療養がこのように長期化した場合、やはり一番気がかりになるのは、医療費など経済的なご負担ではないでしょうか。そこでぜひ知っておきたいのが、治療費の負担をサポートする「高額療養費制度」の新たな改正ポイントです。
来月8月から変わる高額療養費制度!新たに導入「年間上限」とは?
高額療養費制度の見直しについて(イメージ)
月ごとの自己負担額の見直しに伴い、患者さんのご負担が重くなりすぎないよう、今回新たに医療費の「年間上限」が導入されることになりました。
上限額に達した後は支払いが不要に
高額療養費の年間上限の新設
月ごとの自己負担額が積み上がっても、年単位で設定された上限額に達した後は、その年においてそれ以上の医療費をお支払いいただく必要がなくなります。
医療費負担が大きく軽減されるケース
これまで「多数回該当」に当てはまらなかった長期療養中の方や、極めて高額な医療を受けられた方にとっては、この上限新設によって自己負担額が和らぐ大きな安心材料となります。
70歳以上(外来)の方への配慮
70歳以上で住民税非課税の方の外来医療費についても年間上限が新設され、毎月上限額まで利用される方の経済的負担が現在よりも増えてしまわないよう、丁寧に設計されています。
【FPからプラスワン解説】安心して老後を迎えるためのポイント
医療や介護の制度は少しずつ変化していますが、実態と制度を正しく理解しておくことで、いざという時の経済的な不安は大きく軽減できます。最後にFPの視点から、安心して老後を迎えるための3つのアドバイスをお伝えします。
①現在の家計と「公的保障」の限度額を把握する
ご自身の年金収入や貯蓄額だけでなく、高額療養費制度を使った場合の「ご自身のひと月あたりの自己負担上限額」がいくらになるか、あらかじめ確認しておきましょう。
②医療費以外の「隠れた出費」に備えて現金を確保する
入院時の差額ベッド代や食事代、ご家族の交通費、日用品代などは高額療養費制度の対象外(全額自己負担)となります。ある程度のまとまった現金を「医療・介護用の予備費」として手元に取り分けておくと安心です。
③ご自身のニーズに合わせて「民間医療保険」を見直す
データにもある通り、認知症や脳血管疾患などは入院が長期化しやすい傾向にあります。「入院日数が無制限でカバーされるか」「一時金で受け取れるか」など、現在の保険内容がシニア期の病気のリスクに合っているか、元気なうちに一度点検しておきましょう。
参考資料
日本生命保険相互会社出身。元マネースクール講師、現役FP(CFP®・1級FP技能士)でJ-FLEC認定アドバイザー。保険から年金、資産運用まで幅広い知見を持ち、「お金の先生」としてLIMO&ファイナンス編集部にてわかりやすく信頼できる記事をお届けします。
