この記事はここがポイント
- 年金生活者支援給付金の所得基準額は2026年10月分から老齢82万6500円、障害・遺族491万8000円以下へ引き上げ。
- 新たな対象者には2026年9月から請求書発送、2027年1月4日までの提出で2026年10月分から支給開始。
- 2026年度の給付基準額は老齢・障害(2級)・遺族で月5620円。
「年金生活者支援給付金制度」について、来月2026年10月分から所得の基準額が引き上げられることが決まっています。老齢年金生活者支援給付金の基準額は、昭和31年4月2日以後に生まれた方で80万9000円以下から82万6500円以下へ変わります。
日本年金機構は令和8年9月1日から、新たに対象となる方へ「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」を順次送りました。手元に届いた封筒を、年金の案内と同じものだと思って置いたままにしている方もいるでしょう。
この記事では、3種類の年金生活者支援給付金それぞれの支給要件と、令和8年度の給付基準額、請求書の出し方、そして上乗せの土台になる公的年金の平均年金月額までを順に確認します。
年金生活者支援給付金を受け取れるかどうか
年金生活者支援給付金は、基礎年金を受け取っている方のうち、収入と所得が一定の水準を下回る方へ年金に上乗せして支給されるお金です。
一度限りの給付ではなく、要件を満たす限りは生涯受け取れる制度となっています。
受け取っている基礎年金の種類によって老齢・障害・遺族の3つに分かれ、それぞれ判定のしかたが違います。順に見ていきましょう。
老齢年金生活者支援給付金は3つの条件をすべて満たす方が対象
老齢年金生活者支援給付金の支給要件は、次の3つです。※2026年10月分からの基準
- 65歳以上で老齢基礎年金を受けている
- 請求する方の世帯全員の市町村民税が非課税となっている
- 前年の公的年金等の収入金額とその他の所得の合計額が、昭和31年4月2日以後に生まれた方は82万6500円以下、昭和31年4月1日以前に生まれた方は82万4100円以下である
このうち1つ目と3つ目は、ご自身の年齢と数字だけで確かめられます。
一方で2つ目は、住民票を同じにしている家族全員の課税状況で決まります。ご自身の年金額が低くても、同じ世帯に市町村民税を納めている方が1人でもいると対象から外れるということです。
なお、判定に使う収入に障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。
3つ目の基準額をわずかに超えた方には、補足的老齢年金生活者支援給付金が用意されています。令和8年9月分までと10月分からの基準額を並べると、次のようになります。
老齢年金生活者支援給付金の所得の基準額(令和8年9月分まで/10月分から)
老齢年金生活者支援給付金の所得の基準額
- 昭和31年4月2日以後に生まれた方:令和8年9月分まで80万9000円以下、令和8年10月分から82万6500円以下
- 昭和31年4月1日以前に生まれた方:令和8年9月分まで80万6700円以下、令和8年10月分から82万4100円以下
補足的老齢年金生活者支援給付金の対象となる所得の範囲
- 昭和31年4月2日以後に生まれた方:令和8年9月分まで80万9000円超90万9000円以下、令和8年10月分から82万6500円超92万6500円以下
- 昭和31年4月1日以前に生まれた方:令和8年9月分まで80万6700円超90万6700円以下、令和8年10月分から82万4100円超92万4100円以下
基準額は1年前と同じではありません。以前に調べて対象外だった方も、いまの数字で確かめ直す価値があります。
障害年金生活者支援給付金は本人の前年の所得だけで判定
障害年金生活者支援給付金は、世帯の課税状況を見ません。判定に使うのはご本人の前年の所得だけです。
令和8年10月分からの基準は、前年の所得が491万8000円以下であることです。扶養親族等がいる場合は、その数に応じて基準額が増えます。
令和8年9月分までの基準は479万4000円以下でしたので、ここでも線は動いています。障害基礎年金を受けていることと、この所得の要件をともに満たす方が対象です。
遺族年金生活者支援給付金も本人の前年の所得だけで判定
遺族年金生活者支援給付金の判定のしかたは、障害年金生活者支援給付金と同じです。令和8年10月分からの基準は前年の所得が491万8000円以下、令和8年9月分までは479万4000円以下でした。
遺族基礎年金を受けていることが前提になります。判定に使う所得に非課税の年金を含めないところも、障害年金生活者支援給付金と共通です。
2026年度の年金生活者支援給付金は、月にいくら上乗せされるのか
給付の額は物価の動きに応じて年度ごとに見直されます。2026年度の額は、6月に振り込まれた4月分から反映されました。
令和8年度は前年度から3.2%の増額改定となった
令和7年度と令和8年度の給付基準額を並べると、次のとおりです。
年金生活者支援給付金の給付基準額(月額)令和7年度と令和8年度の比較
年金生活者支援給付金の給付基準額(月額)
- 老齢年金生活者支援給付金:令和7年度5450円、令和8年度5620円
- 障害年金生活者支援給付金(障害等級1級):令和7年度6813円、令和8年度7025円
- 障害年金生活者支援給付金(障害等級2級):令和7年度5450円、令和8年度5620円
- 遺族年金生活者支援給付金:令和7年度5450円、令和8年度5620円
ここで読み違えたくないのは、老齢年金生活者支援給付金だけは上の額が「基準額」にあたるという点です。
実際に給付される金額は、保険料の納付済期間と免除期間に応じて1人ずつ計算されます。日本年金機構が示している計算式は次のとおりです。
- 保険料納付済期間に基づく額(月額)=5620円×保険料納付済期間÷480月
- 保険料免除期間に基づく額(月額)=1万1768円×保険料免除期間÷480月
金額は昭和31年4月2日以後に生まれた方の令和8年度の額で、免除の区分のうち全額免除・4分の3免除・半額免除に使うものです。4分の1免除の期間には5884円を使います。
免除期間に掛ける単価が納付済期間より高いのは、国庫が負担した分が老齢基礎年金に反映されているためです。免除を受けた期間があることは、この給付では受取額を押し下げる要因になりません。
日本年金機構が示している計算例では、納付済期間が240月、全額免除期間が60月の方の給付額は月4281円となっています。基準額の5620円がそのまま届くとは限らないということです。
年金生活者支援給付金の請求には何が必要か
年金生活者支援給付金は、要件を満たすだけで自動的に年金へ上乗せされるわけではありません。請求の手続きをとってはじめて支給が始まります。
該当する方が多い2つの場面に分けて、書類の届き方を整理します。
これから老齢基礎年金を請求する方に届く書類
- 65歳になる3カ月前に届く「年金請求書(事前送付用)」に、「年金生活者支援給付金請求書(A4型)」が同封される
- 必要事項を書き、受給開始年齢の誕生日の前日以降に、年金請求書とあわせて年金事務所へ出す
年金そのものの請求と同じ封筒に入っているため、年金の書類だけを出して給付金の用紙を残してしまわないように気をつけたいところです。
すでに年金を受け取っている方に9月から届いたはがき
- 新たに年金生活者支援給付金を受け取れる方へ、令和8年9月1日から「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次送られた
- 令和7年1月以降に日本年金機構から請求書が届いた方は、電子申請で出せる(郵送は不要)
- 郵送で出す場合は、氏名を書いて目隠しシールを貼り、切手を貼って投函する
支給は原則として、請求した月の翌月分から始まります。
ただし、はがき型の請求書には期限の定めがあります。日本年金機構は、令和9年1月4日までに届くように出した場合、令和8年10月分までさかのぼって受け取れると案内しています。
期限を過ぎても手続き自体はできますが、その場合は請求した月の翌月分からの支給になります。年内に出せば取りこぼしが出ないということです。
一度手続きを済ませれば、要件を満たすかぎり2年目以降の請求は必要ありません。
上乗せの土台になる公的年金の平均年金月額はどれくらいか
月5620円という額をどう受け止めるかは、土台の年金がいくらなのかで変わります。
ここからは厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、国民年金と厚生年金の平均年金月額をチェックしていきましょう。
国民年金・厚生年金の平均年金月額を男女別に見る
国民年金・厚生年金の平均年金月額(全体・男女別)
厚生年金の平均年金月額「全体・男女別」
〈全体〉平均年金月額:15万289円(国民年金の額を含む)
- 〈男子〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女子〉平均年金月額:11万1413円
国民年金の平均年金月額「全体・男女別」
〈全体〉平均年金月額:5万9310円
- 〈男子〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女子〉平均年金月額:5万7582円
厚生年金の額には国民年金の額も含まれています。上乗せ部分だけの数字ではないので、ここは読み違えないように注意しましょう。
男女を比べると、男子が16万9967円、女子が11万1413円で、その差は約5万9000円になります。厚生年金に加入していた月数と、その間の報酬の水準が額に表れるためです。
国民年金のほうは男女とも月額約6万円にとどまります。保険料の未納や免除を受けた期間がある方も含まれるので、その分だけ平均が下がります。
なおこれらは令和6年度末時点の実績で、先に見た令和8年度の改定とは時点が違います。
年金生活者支援給付金の「世帯全員が市町村民税非課税」を、元自治体職員はどう見ていたか
筆者は地方自治体で、国民健康保険と後期高齢者医療制度の保険料を計算する仕事をしていました。
年金生活者支援給付金そのものを扱う窓口ではありませんでしたが、住民税の課税情報を見ながら世帯ごとの判定をしていた立場から、要件のどこで誤解が生まれやすいかは見えていました。3つに分けて挙げます。
非課税かどうかで決まる制度と、所得の額で決まる制度は別物
年金生活者支援給付金の老齢の要件は、世帯全員が市町村民税非課税であることです。課税されているかどうかという、いわば「はい」か「いいえ」で決まります。
一方で、国民健康保険料や後期高齢者医療保険料の均等割の軽減は、世帯の所得の合計額と基準額を比べて7割・5割・2割のどれにあたるかを判定します。非課税かどうかで決まるわけではありません。
窓口では「非課税世帯だから保険料も軽減されるはず」という前提で来られる方が多く、そのたびに説明していました。
逆もあります。保険料の軽減が効いている世帯であっても、それだけで年金生活者支援給付金の対象になるとはかぎりません。1つの制度の結果から、別の制度の結果を推し量らないほうが確実です。
判定の単位は住民票の世帯で、同居しているかどうかではない
ここでいう世帯は、住民基本台帳に記録されている世帯を指します。実際に生計を分けているかどうかで決まるものではありません。
同じ家に住んでいても住民票の上で世帯を分けていれば別の世帯として扱われますし、離れて暮らしていても住民票が同じであれば1つの世帯として判定されます。
保険料の計算でも、この「住民票の世帯」を単位にしていました。世帯主が国民健康保険に入っていなくても、世帯主として保険料の納付義務を負う仕組みがあり、その説明に時間をかけたことをよく覚えています。
ご自身が対象になるかを確かめるときは、まず住民票の世帯に誰が入っているかを見るところから始めると早いです。
判定に使うのは年金の「収入」と、それ以外の「所得」
老齢年金生活者支援給付金の3つ目の要件は、前年の公的年金等の収入金額とその他の所得の合計額で見ます。
ここは読み流されやすいのですが、年金については「収入」の額を、それ以外については「所得」の額を使う組み合わせになっています。年金額から公的年金等控除を引いた後の額ではない、ということです。
窓口でも「収入」と「所得」を同じ意味で使われる方は多く、どちらの数字で話しているのかを先に確かめるのが習慣になっていました。
ご自身で計算して線の内側か外側かを決めてしまう前に、手元の書類でどちらの数字なのかを見ておくと間違いが減ります。判断に迷うときは、年金事務所やお住まいの市区町村の窓口で確かめるのが確実です。
年金生活者支援給付金について、いま確かめておきたいこと
ここまで、3種類の年金生活者支援給付金の要件と令和8年度の給付基準額、請求の進め方を見てきました。最後に、手を動かして確かめられることを3つ挙げます。
- 9月に届いた封筒を開け、「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が入っていないかを確かめる
- 住民票の世帯に誰が入っていて、それぞれの市町村民税が課税されているかどうかを確かめる
- 前年の公的年金等の収入金額とその他の所得の合計額を書き出し、82万6500円という線とどちらにあるかを見る
請求書が届いていない場合でも、要件を満たしていると考えられるなら年金事務所へ問い合わせることができます。
月5620円という基準額は、大きな額ではないと感じる方もいるでしょう。一方で年に直せば6万円を超え、一度手続きをすれば要件を満たすかぎり続きます。
もっとも、この給付を受けられるようになっても、住民税や社会保険料の負担が変わるわけではありません。家計全体でどれだけの差になるのかは、ほかの収入や支出とあわせて見ておく必要があります。
制度の適用や受け取れる額の見当については、年金事務所やお住まいの市区町村の窓口で確かめながら進めてください。
地方公務員・保険代理店出身。証券外務員二種保有。自治体で国民健康保険の賦課や高額療養費、退職に伴う年金切り替え等の実務に従事。複雑な社会保障制度に精通し、現在はLIMO編集部で年金・貯蓄・退職金等の金融情報を発信。
