【10月からの年金】特別徴収・在職定時改定で「手取り額」や「額面」が変わる人も。年金から天引きされる税金・社会保険料の変動に注意
kapinon.studio/shutterstock.com
執筆者太田 彩子LIMO&ファイナンス編集部記者
12:00
【10月からの年金】特別徴収・在職定時改定で「手取り額」や「額面」が変わる人も。年金から天引きされる税金・社会保険料の変動に注意
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この記事はここがポイント

  • 年金手取りは10月、年金額は在職定時改定で12月支給から変更
  • 10月の年金天引きは住民税・社会保険料の仮徴収から本徴収への切り替わりで手取り変動
  • 厚生年金は平均14万~16万円台、国民年金は平均5万~6万円台で推移

2026年の次の年金支給日は10月15日(木曜)です。この日の支給分から、年金から差し引かれる保険料と税金の計算方法が入れ替わります。

日本年金機構が6月に送る「年金振込通知書」でも、8月以降の額は予定額として記載されています。決定額は市区町村から届く通知書で確かめるよう案内されており、通帳の数字が10月に動くことは珍しくありません。

この記事では、「10月に振込額が変わる理由」「10月に年金額そのものが変わる理由」を確認したうえで、厚生労働省年金局の最新統計から60歳代から90歳以上までの年齢別の平均年金月額を見ていきます。

来月10月15日の支給分から、年金の「天引き額」が変わる人がいる

年度の変わり目でも年明けでもない10月に振込額が動くのは、差し引かれる側の計算が切り替わるからです。

公的年金からは、個人住民税、国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料が差し引かれています。この仕組みを特別徴収と呼びます。

年度の前半は仮徴収、後半は本徴収という二段構えの計算

差し引かれる額は年度を通じて同じだと思われがちですが、実際には前半と後半で計算のもとが違います。

年金から差し引かれる保険料・住民税 仮徴収と本徴収の切り替わり

年金から差し引かれる保険料・住民税 仮徴収と本徴収の切り替わり
年金から差し引かれる保険料と住民税について、年度前半の仮徴収と年度後半の本徴収で計算のもとが変わることを示した図

住民税も社会保険料も、前年の所得をもとに計算されます。ところが、その年額が固まるのは6月から7月ごろです。

年度の前半にあたる4月・6月・8月の支給分は、まだ年額が出そろっていません。そこで前年度2月と同じ額をひとまず差し引いておきます。これが仮徴収です。

年額が決まったあとは、そこから仮徴収で先に引いた分を除き、残りを10月・12月・2月の3回に割り振ります。こちらが本徴収です。

多くの市区町村では10月の支給分から本徴収に移りますので、通帳を見て気づく方が出てきます。

ただし、仮徴収の額をならして年間の負担を平準化している市区町村もあります。切り替わり方はお住まいの地域によって違うこともあります。

天引きが軽くなるのは前年の所得が前々年より下がった人

本徴収に移って差し引かれる額が減るのは、前年の所得が前々年を下回っていた方です。

前々年に退職金を受け取った方や、不動産を手放して大きな所得が立った方が、前年は年金収入だけに戻ったといったケースが当てはまります。

仮徴収の合計が確定した年額を上回っていた場合は、本徴収での天引きがなくなります。納めすぎた分は過誤納金として、あとから還付か充当の対象になります。

もちろん反対の動きもあります。前年の所得が伸びていれば10月から差し引かれる額は重くなりますので、手取りが増える方ばかりではありません。

働きながら受け取る人は、年金額そのものが10月分から上がる

ここまでは天引き後の年金手取り額の話でした。年金の額面そのものが上がる仕組みも、10月には用意されています。

ただし口座に入る時期がずれますので、実際に反映されるのは12月支給分からです。

在職定時改定で増えた分が口座に入るのは12月15日

額面が上がる代表例が、令和4年4月に始まった在職定時改定です。

在職定時改定 年金額が増える月と、口座に入る月

在職定時改定 年金額が増える月と、口座に入る月
在職定時改定について9月1日の基準日から10月分の改定と12月15日の振込までの流れを示した図

対象になるのは、65歳以上70歳未満で厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受け取っている方です。

毎年9月1日を基準日として、前年9月から当年8月までの被保険者期間を年金額に加えたうえで、10月分の年金から改定されます。

退職を待たずに、働いた分を毎年の年金額へ反映させることがこの制度のねらいです。

気をつけたいのは、口座に入る月です。年金は偶数月に前2カ月分をまとめて受け取りますので、10月分が振り込まれるのは12月15日になります。

つまり10月15日の振込額には、在職定時改定による増額はまだ乗っていません。

また、額面が上がれば所得税や翌年度の住民税、保険料の計算にも影響します。増えた分がそのまま手元に残るとは限りません。

在職老齢年金の基準額は令和8年4月に月51万円から65万円へ

働きながら年金を受け取る方には、令和8年度にもうひとつ変更がありました。

在職老齢年金は、老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額を足した額が基準を超えると、年金の一部または全部が止まる仕組みです。

その基準となる支給停止調整額が、令和7年年金制度改正法にもとづき令和8年4月から月51万円より「65万円」へ引き上げられたのです。

日本年金機構が挙げている例で見ると、基本月額が10万円、総報酬月額相当額が46万円の方の場合、改正前は合計が51万円を超えるため年金支給額は月7万5000円で、2万5000円が支給停止されていました。

改正後は合計が65万円を超えないため、月10万円が全額支給されます。これまで止まっていた分を受け取れるようになった方もいるということです。

なお、老齢基礎年金と経過的加算額はこの調整の対象になりません。止まるのは老齢厚生年金の側だけです。

ただし年金と給与を合わせた収入が増えれば、翌年度の税額や保険料も上がることがあります。手取りで見たときにどうなるかを合わせて確かめておきましょう。

【厚生年金】60歳代から90歳以上までの年齢別「平均年金月額」

ここからは、いまのシニアが実際にいくら受け取っているのかを見ていきます。

厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、60歳から90歳以上までの平均年金月額を1歳ごとに追っていきます。先に厚生年金です。

なお、ここでの金額には国民年金(老齢基礎年金)の額も含まれます。

60歳代の厚生年金は65歳を境に段差がある

60歳代は、前半と後半で水準がはっきり分かれます。

60歳から64歳までは特別支給の老齢厚生年金や繰上げ受給の方が中心となるため、10万円前後にとどまります。報酬比例部分だけを受け取っている方も含まれるので、年齢ごとの上下も大きくなります。

【厚生年金】60歳代の平均年金月額

【厚生年金】60歳代の平均年金月額
厚生年金の60歳から69歳までの平均年金月額を1歳ごとに示した表
  • 60歳:9万9664円
  • 61歳:10万4455円
  • 62歳:10万9323円
  • 63歳:6万8758円
  • 64歳:8万3901円
  • 65歳:14万9862円
  • 66歳:15万2378円
  • 67歳:15万2356円
  • 68歳:15万2709円
  • 69歳:15万1284円

65歳で15万円前後へ上がり、そこから69歳までは大きな動きがありません。

70歳代の厚生年金は14万円台から15万円台で推移する

70歳代に入っても、水準は60歳代の後半とほとんど変わりません。

【厚生年金】70歳代の平均年金月額

【厚生年金】70歳代の平均年金月額
厚生年金の70歳から79歳までの平均年金月額を1歳ごとに示した表
  • 70歳:15万455円
  • 71歳:14万8371円
  • 72歳:14万6858円
  • 73歳:14万5583円
  • 74歳:14万7774円
  • 75歳:15万1410円
  • 76歳:15万1241円
  • 77歳:15万962円
  • 78歳:15万862円
  • 79歳:15万3115円

14万円台と15万円台の間を行き来しており、目立った増減は見当たりません。落ち着いた金額が続く年代といえます。

80歳代の厚生年金は年齢が上がるほど金額も上がる

80歳代は、年齢が上がるにつれて金額も上がっていきます。

【厚生年金】80歳代の平均年金月額

【厚生年金】80歳代の平均年金月額
厚生年金の80歳から89歳までの平均年金月額を1歳ごとに示した表
  • 80歳:15万3729円
  • 81歳:15万5460円
  • 82歳:15万7744円
  • 83歳:15万9994円
  • 84歳:16万2555円
  • 85歳:16万3947円
  • 86歳:16万5577円
  • 87歳:16万5557円
  • 88歳:16万6200円
  • 89歳:16万6767円

80歳の15万円台から、89歳では16万円台の後半まで届きます。現役時代の賃金の水準や加入していた期間の違いが、世代ごとの差として表れているとみられます。

90歳以上の厚生年金は80歳代後半と近い水準

90歳以上をひとまとめにすると、80歳代の後半と近い水準に落ち着きます。

【厚生年金】90歳以上の平均年金月額

【厚生年金】90歳以上の平均年金月額
厚生年金の90歳以上の平均年金月額と受給権者数を示した表
  • 90歳以上:16万4027円
  • 90歳以上の受給権者数:87万8680人

老齢年金を受け取り始めるのは原則65歳からです。その65歳以降で区切ると、厚生年金の平均月額は14万円台から16万円台に収まっていました。

【国民年金】60歳代から90歳以上までの年齢別「平均年金月額」

次は国民年金です。同じ厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から1歳ごとに追っていきます。

なお、65歳より前に受け取っている方は繰上げ受給を選んだ方です。

60歳代の国民年金も65歳で水準が変わる

厚生年金と同じように、65歳の前後で段差が生まれます。

60歳から64歳までは繰上げ受給を選んだ方だけが対象となるため、4万円台の後半にとどまります。

【国民年金】60歳代の平均年金月額

【国民年金】60歳代の平均年金月額
国民年金の60歳から69歳までの平均年金月額を1歳ごとに示した表
  • 60歳:4万5186円
  • 61歳:4万6371円
  • 62歳:4万7784円
  • 63歳:4万7258円
  • 64歳:4万7896円
  • 65歳:6万1240円
  • 66歳:6万1369円
  • 67歳:6万1345円
  • 68歳:6万1293円
  • 69歳:6万978円

65歳になると6万円台へ乗り、69歳までほぼ横ばいで推移します。

70歳代の国民年金はゆるやかに下がっていく

70歳代は、年齢が上がるにつれて金額がじわじわと下がります。

【国民年金】70歳代の平均年金月額

【国民年金】70歳代の平均年金月額
国民年金の70歳から79歳までの平均年金月額を1歳ごとに示した表
  • 70歳:6万1011円
  • 71歳:6万770円
  • 72歳:6万234円
  • 73歳:6万32円
  • 74歳:5万9813円
  • 75歳:5万9659円
  • 76歳:5万9555円
  • 77歳:5万9349円
  • 78歳:5万9124円
  • 79歳:5万8676円

70歳の6万円台の前半から、79歳では5万円台の後半まで下がります。とはいえ1年ごとの差はわずかで、急に落ち込むわけではありません。

80歳代の国民年金は5万円台の後半で横ばい

80歳代は5万円台の後半に固まり、年代を通してほとんど動きません。

【国民年金】80歳代の平均年金月額

【国民年金】80歳代の平均年金月額
国民年金の80歳から89歳までの平均年金月額を1歳ごとに示した表
  • 80歳:5万8623円
  • 81歳:5万8269円
  • 82歳:5万8003円
  • 83歳:5万7857円
  • 84歳:5万9675円
  • 85歳:5万9425円
  • 86歳:5万9228円
  • 87歳:5万9204円
  • 88歳:5万8756円
  • 89歳:5万8572円

84歳のあたりで少し持ち直しますが、全体としては横ばいとみてよいでしょう。

90歳以上の国民年金は5万円台の半ば

90歳以上は5万円台の半ばとなり、80歳代よりわずかに低くなります。

【国民年金】90歳以上の平均年金月額

【国民年金】90歳以上の平均年金月額
国民年金の90歳以上の平均年金月額と受給権者数を示した表
  • 90歳以上:5万5633円
  • 90歳以上の受給権者数:271万4574人

65歳以降の国民年金は、どの年齢でも5万円台から6万円台に収まりました。20歳から60歳までの40年間すべて保険料を納めて満額となる仕組みですので、免除や未納の期間があるとその分だけ下がります。

【元自治体職員の実感】10月は年金の手取りが減る人も出てくる月だった

筆者は自治体で国民健康保険と後期高齢者医療制度の保険料を計算する仕事をしていました。

いまお伝えした仮徴収から本徴収への切り替わりにより、秋は問い合わせが増える合図でもあったのです。3つに分けてお話しします。

秋になると「振込額が下がった」という相談が集まった

後期高齢者医療の保険料を担当していた頃、10月から11月にかけて問い合わせが目に見えて増えました。

「先月まではこの金額ではなかった」という相談がこの時期に集中したことをよく覚えています。

話を伺うと、前年に退職金を受け取っていた方や、土地や建物を売却した方が多くを占めていました。

一時的であっても所得が大きくなれば、その額をもとに保険料が計算されます。仮徴収の間は低い額のままだったものが、本徴収から一度に反映されるわけです。

保険料が急に引き上げられたのではなく、年度の後半にまとめて調整されているだけ、ということが実際には少なくありませんでした。

決定通知書が届く6月から、天引きに反映されるまで3カ月ほど間がある

保険料の決定通知書が手元に届くのは6月から7月ごろです。一方で、年金からの天引きに反映されるのは10月の支給分からになります。

このずれが、相談につながりやすい一番の原因だったと感じています。

通知書を受け取った時点で年額は分かるのですが、手元のお金が動くのは3カ月ほど先になるため、届いた紙と通帳の数字が結びつきにくくなります。

納めすぎた保険料は還付か充当に回り、請求できる期間は2年

仮徴収の合計が年額を超えていた場合、その差額は過誤納金として扱われます。

このときは自治体から還付通知書と還付請求書が届きます。必要事項を記入して返送すると、1カ月から2カ月ほどで振り込まれます。

ほかに未納の保険料があるときは、還付ではなく充当に回ることもあります。この場合は請求書が同封されず、充当の通知だけが届く自治体もあります。

気をつけたいのは時効です。後期高齢者医療保険料の還付を受ける権利は、高齢者の医療の確保に関する法律で2年を経過すると時効によって消滅すると定められています。

届いた封筒をそのままにしないことが、いちばん確実な備えになります。書類の内容に迷ったときは担当窓口に確認してみてください。

10月の年金の手取り額は、どの書類で確かめられるか

振込額が気になったときに、何を見れば内訳が分かるのかを挙げていきます。

年金振込通知書は8月以降が予定額であることを踏まえて見る

日本年金機構からは毎年6月に「年金振込通知書」が届きます。6月から翌年4月まで、2カ月に1回支払われる金額を知らせるものです。

年金支払額のほか、介護保険料、後期高齢者医療保険料または国民健康保険料(税)、所得税および復興特別所得税、個人住民税および森林環境税、そして控除後の振込額が載っています。

ここで押さえておきたいのは、8月以降の額が予定額として6月の額のまま記載されている点です。日本年金機構も、決定額は市区町村から送られる通知書で確認するよう案内しています。

10月の振込額を6月の通知書だけで判断しないほうがよい、ということになります。なお、振込額や受取金融機関に変更があった場合は、その都度あらためて通知書が送られます。

市区町村の保険料決定通知書で仮徴収と本徴収の額を突き合わせる

国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料については、市区町村から届く決定通知書に年額と各期の金額が載っています。

手元に見当たらない場合は、お住まいの市区町村の担当窓口で内容を確かめられます。計算のもとになった所得の額についても、その場で説明を受けられます。

ねんきんネットで年金額そのものの動きをたどる

額面や過去の支払記録については、日本年金機構のねんきんネットから見られます。

在職定時改定の対象になっている方は、改定後の金額がいくらになるのかを合わせて確かめておくとよいでしょう。

年金の手取りは10月に、年金額そのものは12月に動く

ここまで、10月に年金の振込額が動く理由を2つに分けたうえで、年齢別の平均月額をたどってきました。

動くものと時期を並べると、次のようになります。

  • 10月15日の支給分:差し引かれる保険料と住民税が、仮徴収から本徴収に切り替わる
  • 12月15日の支給分:在職定時改定で増えた年金額そのものが、10月分・11月分として振り込まれる

同じ「変わる」でも、中身も時期も違います。切り分けておくと通帳の数字を読み解きやすくなります。

年齢別の平均月額は、あくまで全国をならした目安です。加入していた期間や働き方によって金額は大きく変わりますので、ご自身の数字は「ねんきん定期便」やねんきんネットで押さえておきましょう。

差し引かれている保険料に納得がいかないときは、お住まいの市区町村の担当窓口に問い合わせてみてください。計算の根拠をひとつずつ説明してもらえます。

Google で優先するソースとして追加
太田 彩子LIMO&ファイナンス編集部記者

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