この記事はここがポイント
- PER51.65倍に対しROE6.41%・自己資本比率7.9%の財務状況
- 2025年9月株式分割で個人株主108万人超増も持株比率は低下。外国法人等の比率が上昇
- ディベロッパー・総合金融が稼ぎ頭、GMS・SMは利益率1%未満の事業構造
8月末の優待や配当の権利確定が過ぎ、イオン<8267>の株価は1,300円台の限られたレンジ内で推移しています。
日経平均が荒い動きとなるなか、同社株は8日に直近高値の1,422円まで買われる場面もありましたが、その後は調整の動きが続いています。
足元では売り買いともに手がかりに乏しいなか、改めて最新の業績を振り返ってみましょう。
2027年2月期第1四半期(2026年7月10日発表)は、営業収益2兆9,419億8,100万円(前年同期比14.6%増)、営業利益752億300万円(同33.6%増)、経常利益635億8,200万円(同32.3%増)、純利益138億900万円、1株当たり四半期純利益4.99円と、大幅な増収増益となりました。
通期の会社計画は売上高12兆円(前期比12.0%増)、営業利益3,400億円(同25.7%増)、経常利益2,900億円(同19.3%増)、純利益730億円(同0.4%増)です。
稼ぎ頭はディベロッパーと総合金融、伸び率で目立つヘルス&ウエルネス
セグメント別の営業利益を見ると、2026年2月期通期はディベロッパー事業が709億1,600万円(前期比33.7%増、営業利益率16.4%)、総合金融事業が608億7,100万円(同0.5%減、同12.5%)と、グループの中で最も高い利益率を確保しています。
ディベロッパー事業について、決算短信では「既存アセットの価値最大化に注力した」ことがグループ全体の収益成長を下支えしたと位置づけています。
一方、伸び率で際立ったのがヘルス&ウエルネス事業です。売上高1兆6,324億6,300万円(前期比23.5%増)、営業利益523億6,800万円(同45.4%増)と、2025年12月に経営統合したツルハホールディングスとウエルシアホールディングスのシナジーを追い風に大きく伸びました。
もっとも営業利益率は3.2%にとどまり、ディベロッパー・総合金融の両事業には及びません。
対照的に、総合スーパー(GMS)事業は売上高3兆6,048億7,500万円に対し営業利益214億3,000万円(営業利益率0.59%)、スーパーマーケット(SM)事業も売上高3兆704億円に対し営業利益298億7,000万円(同0.97%)と、小売の中核であるはずの両事業の利益率は1%に届かない水準にとどまっています。
ROE6.4%・自己資本比率7.9%と、PER51倍超という株価水準のギャップ
10日終値の1,363円をもとに算出すると、PER(会社予想)は51.65倍、PBR(実績)は3.12倍、配当利回り(会社予想)は1.10%です。
年初来高値は1月5日の2,542円、年初来安値は6月23日の1,274円でした。
一方、収益性・財務指標を見ると、ROE(実績)は6.4%、自己資本比率(実績)は7.9%にとどまります。
もっとも、自己資本比率の低さは総合金融事業の連結影響が大きい点には留意が必要です。
セグメント別の資産を見ると、総合金融事業だけで8兆3,061億7,100万円と、連結総資産15兆3,696億5,800万円の5割超を占めています。
有価証券報告書のMDAでも、負債増加の要因の一つとして「銀行業における預金」の増加が挙げられており、イオン銀行の預金残高は5兆4,641億6,700万円に達します。
銀行業の預金は会計上負債に計上されるため、一般的な小売業と比べて自己資本比率が構造的に低く出やすい点は割り引いて見る必要がありそうです。
とはいえ、ROEについては同業のセブン&アイ・ホールディングス(7.6%)やファーストリテイリング(同20.2%)と比べても見劣りする水準で、低いROEに対しPERが50倍を超える水準にあるという組み合わせは、株価がどのような要因で支えられているのか、気になるところです。
1株→3の株式分割後、個人株主数は17.8%増も持株比率は低下
同社は2025年6月12日、1株を3株にする株式分割を発表し、同年8月31日を基準日、9月1日を効力発生日として実施しました。
同社は分割の目的について「投資単位あたりの金額を引き下げることにより、株式の流動性の向上と投資家層の更なる拡大を図る」と説明しており、最低投資額は実質的に3分の1に下がったことになります。
有価証券報告書の株主構成データで比較すると、分割前の2025年2月期末時点で個人株主数は915,535人(持株比率32.30%)でしたが、分割後の2026年2月期末時点では1,078,907人(同30.03%)に増加しました。株主数は163,372人、率にして17.8%増えた計算です。
もっとも、持株比率で見ると32.30%から30.03%へとむしろ低下しています。
株主数は大きく増えた一方、1人当たりの平均保有株数は小さくなったとみられ、株式分割を機に最低単元に近い規模で新規に株式を保有した個人投資家が増えた可能性がうかがえます。
なお、同じ期間で外国法人等の持株比率は14.24%から19.25%へと上昇しており、株主構成の変化は個人株主だけにとどまりません。
株主優待「オーナーズカード」、保有株数に応じ1~7%還元
イオンは100株以上を保有する株主に「オーナーズカード」を発行しており、権利確定日(8月末日・2月末日)時点の保有株数に応じて、半年間の買い物金額(上限100万円)の1~7%が半年ごとに還元されます。
還元率は100株以上で1%、200株以上で2%、300株以上で3%、1,500株以上で4%、3,000株以上で5%、9,000株以上で7%です。
保有株式数とキャッシュバック率
このほか、長期保有の株主向けの優待制度もあります。
さらに、同社の優待でとりわけ人気の高いイオンシネマの割引やイオンラウンジの利用といった特典も用意されています。
優待の内容や条件は変更される可能性があるため、最新情報は必ず公式サイトで確認してください。
長期特典とイオンシネマ・ラウンジの優待一覧
記者コメント
イオンはROE6.4%・自己資本比率7.9%という指標だけを見ると見劣りしますが、自己資本比率の低さは総合金融事業の連結影響が大きく、一般的な小売業の財務基盤の薄さとは分けて考える必要がありそうです。
もっとも、ROEの水準は同業と比べても見劣りするため、この点を踏まえてなおPERが50倍を超える株価水準をどう見るかが論点になります。
2025年9月の1株→3株式分割を境に、個人株主数は17.8%増の108万人超まで積み上がりました。最低投資額が実質3分の1に下がったことが、個人の新規参入を後押しした可能性がありそうです。
ただし持株比率で見ると個人株主の割合はむしろ低下しており、同じ期間で外国法人等の持株比率が上昇していることを踏まえると、株価を下支えしてきたのは個人株主の増加だけではなく、外国法人等を含めた需給全体の変化とみるのが実態に近そうです。
優待に注目する個人投資家が多く、直近でイオンラウンジの利用回数が変更された際は大きな話題になりました。
優待の内容と業績動向の双方に注目していく必要のある銘柄の一つです。
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
- 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
- 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
- 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
