王将フードサービス、2026年3月期通期は増収減益で営業利益率が低下。昨秋以降の株価下落と人件費の膨らみを整理する
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執筆者石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ
20:30
王将フードサービス、2026年3月期通期は増収減益で営業利益率が低下。昨秋以降の株価下落と人件費の膨らみを整理する
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この記事はここがポイント

  • 2026年3月期は増収も営業利益は減益、営業利益率は8.9%まで低下。
  • 利益率低下の主因は、人件費の大幅増と売上原価率の上昇。
  • 2027年3月期は最高益を計画する一方、自己株式取得でROE低下を抑制。

外食チェーンの株価は、たいてい「値上げできたか」と「人手を確保できたか」で説明される。ただ、それだけで片づかない局面もある。王将フードサービス<9936>の株価は昨秋以降、緩やかに水準を切り下げてきた。売上は伸び続けているのに、である。何が効いているのかを、決算の内側から見ていきたい。 ※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。

株価が昨秋以降に1割強下げた局面で何が起きていたのか

出所:各種資料をもとに筆者作成

2025年10月末の終値は3,370円だった。直近11か月の月末終値では、ここが最も高い水準にあたる。

そこから株価は階段を下りるように水準を落としていく。2026年1月末は3,100円台、2月末に3,200円台へ戻す場面はあったものの、3月末から4月末にかけて2,900円台まで下押しした。

底になったのは2026年5月末で、終値は2,698円。2,700円を割り込み、昨秋の水準からは2割近く低い位置まで下げたことになる。

この下押しの局面は、2026年3月期通期の決算が明らかになった時期と重なる。増収でありながら、営業利益・経常利益・当期純利益がそろって前期を下回る内容だった。利益の伸びが止まった点が意識された可能性がある。

もっとも、そこから株価は戻している。6月末は2,850円、7月末は3,020円と3,000円台を回復した。

8月末は2,961円、2026年9月時点の直近終値は2,945円で、2,900円台での推移が続く。昨秋の起点からは1割強低い水準だ。

株価だけを取り出せば、下押しと戻りが1年弱の間に一度ずつ来た程度で、ボラティリティは高くないようにみえる。だが、その裏側で損益計算書の形は着実に変わっていた。

増収は続いても営業利益率は2期連続で低下している

2026年3月期通期の売上高は1,168億円、前期比+5.2%の増収だった。4期連続で前期を上回っており、小売業の売上高成長率の中央値4.0%も上回る。

一方、営業利益は104億円で前期比▲4.5%。経常利益は107億円で▲5.4%、親会社株主に帰属する当期純利益は74億円で▲7.5%だった。増収と減益が同時に起きている。

過去5期を並べると構図がはっきりする。売上高は847億円から1,168億円へ4割弱増えた。営業利益も69億円から積み上がってきたが、額のピークは2025年3月期の109億円で、直近期は104億円へ後退した。

見るべきは、利益率のピークがもう一期早いことだ。営業利益率は2024年3月期の10.1%を頂点に、2025年3月期が9.8%、2026年3月期が8.9%と2期続けて下がっている。

つまり利益額のピークアウトより先に、稼ぐ効率のほうが崩れ始めていた。増収でその低下を吸収しきれなくなったのが直近期、という順序になる。

それでも水準そのものは低くない。小売業の営業利益率の中央値は3.7%で、8.9%はそれを大きく上回る。ROE(自己資本利益率)も10.7%と、中央値の7.4%より高い。

低価格の値ごろ感で語られやすい業態だが、収益性は業種内でかなり上のほうにある。絶対水準の後退と、業種内で見た相対水準の厚み。この二つが同時に成立しているのが直近の姿だ。

出所:株式会社王将フードサービス 有価証券報告書をもとに筆者作成
増収は続くが営業利益率は2期連続で低下

人件費346億円の重みと、増えていない水道光熱費

では、利益率はどこで削られたのか。効いている費目は二つある。

一つは売上原価だ。2026年3月期の売上原価は379億円で、前期の354億円から増えた。売上原価率は31.9%から32.5%へ0.6ポイント上昇している。

もう一つ、金額の重みで言えばこちらが本命だ。販管費の内訳を見ると人件費が346億円で、前期の321億円から+7.7%増えている。売上高の伸びである+5.2%を上回るペースだ。内訳の大半は給料手当および賞与で、331億円を占める。

この人件費の伸びは、抑え損ねたコストというより意図された支出にみえる。有価証券報告書に載る平均年間給与は662万円で、前期の578万円から84万円上がった。従業員数も2,370人から2,501人へ増えている。

会社は物価や人件費の上昇を挙げ、厳しい経営環境が続くとみている。そのうえでこの局面を持続的成長に向けた体質強化の好機と捉え、成長の源泉である人的資本への投資と設備投資を積極的に推進するとしている。

賃金の引き上げは、その方針に沿った動きと読める。原価の上昇は外から来るが、人件費の上昇はこの会社が選んだ部分を含む。同じ「コスト増」でも性質が違う。

ここで一つ、一般的なイメージとのズレがある。外食のコスト高というと、食材とエネルギーがまとめて語られることが多い。

だが数字は違う。水道光熱費は47億円で、前期の48億円から▲1.9%と減っている。直近期に効いていたのは光熱費ではなく、人件費と食材原価だった。

一方で減価償却費(販管費に計上された分)は26億円と、前期の22億円から1割半増えた。地代家賃は47億円。店舗を増やし、改装すれば償却は先に立ち上がる。投資が利益率に先行して重みを持つ構造が、ここに出ている。

2027年3月期の計画は最高益。1Qの進捗はどう見るか

会社が示した2027年3月期通期の計画は、売上高1,213億円(前期比+3.9%)、営業利益109億円(同+5.2%)、経常利益110億円(同+3.1%)。会社は売上高と営業利益で過去最高額を更新する計画だとしている。

一方で当期純利益は70億円、前期比▲5.0%の計画だ。これは税制改正による法人税等の増加を織り込んだ結果だという。営業段階では増益、最終段階では減益という、読み違えやすい形になっている。

計画の中身も開示されている。出退店は直営店とFC加盟店を合わせて純増16店舗の予定で、直営店15店とFC加盟店3店を新規に出し、直営店1店とFC加盟店1店を閉じる。東日本エリアを軸に出店を加速させ、既存店の改装で既存店売上高を底上げする方針だという。AI等のDX投資を拡充し、生産性を強化する筋立ても添えられている。

出店を増やしながら賃金を上げ、それでも営業増益を計画する。整合させるには既存店売上の底上げと生産性の改善が要る、という設計だ。

その最初の四半期はどうだったか。2027年3月期1Qの売上高は282億円、営業利益は14億円、経常利益は16億円、当期純利益は9億円で、EPS(1株当たり当期純利益)は18.81円だった。

通期計画に対する進捗率は、売上高が23.2%、営業利益が12.9%となる。外食は四半期ごとの利益の出方に偏りがあるため、単純に4分の1と比べるのは適切ではない。それでも営業利益の進捗が売上より薄いことは、費用先行の構図が年度の入り口でも続いていることを示唆する。

自己資本比率76.5%の会社が資本を縮め始めた意味

財務の姿にも変化がある。2026年3月期末の自己資本比率は76.5%で、小売業の中央値48.3%を大きく上回る。長期借入金は10億円、1年内返済予定の長期借入金は20億円と、負債はごく軽い。

一般には財務の余力として好感されやすい形だろう。もっとも、負債をほとんど使わない資本構成が資本効率の観点で最適かどうかは、また別の論点になる。

その論点に会社が動いた跡が、直近期のキャッシュフローに出ている。財務活動によるキャッシュフローは▲195億円で、前期の▲48億円から流出が大きく膨らんだ。

手元資金は381億円から245億円へ、総資産は966億円から850億円へ、純資産は742億円から650億円へ縮んだ。配当の支払いは30億円で、自己株式の貸借対照表計上額は105億円から175億円へ増えている。自己株式の取得が資本の圧縮につながった姿と読み取れる。

結果として興味深いのはROEの動きだ。当期純利益は▲7.5%減ったのに、ROEは11.3%から10.7%へ0.6ポイントの低下にとどまった。純資産が▲12.4%縮んだぶん、分母側が効いている。

配当は1株56円(中間28円・期末28円)で、配当性向は39.8%。小売業の中央値32.9%より高く、5期連続の増配となっている。

還元と資本効率が同じ方向を向いた局面だが、それは減益を打ち消すものではない。分母を絞ってROEを保つ動きは長く続けられるものではないため、稼ぐ力そのものの回復とセットで見ておきたいところだ。

売上が伸びているのに株価は下げる。このギャップは何を示唆するのか。

私の見立てでは、市場が見ているのは売上の絵ではなく、営業利益率が2期続けて下がったという事実のほうだ。増収は続いているが、増収が利益に変わる歩留まりが落ちている。株価が昨秋の水準に戻らないのは、その歩留まりが戻る確証をまだ持てないからではないだろうか。

見逃せないのは、この歩留まりの低下を「守りの失敗」とは言い切れない点だ。賃金を大きく引き上げ、店を増やし、償却を先に立てている。会社の方針に沿えば、これは意図された前倒しの支出になる。だとすれば論点は「コストが上がった」ではなく、「上げたコストが単価と客数として返ってくるのはいつか」に移る。

同時に、資本の側では逆向きの操作が進む。自己株式の取得で分母を絞り、資本効率の見え方を保っている。稼ぐ力を厚くする投資と、資本を薄くする還元。この二つが並走している会社を、単年の利益率だけで評価すると読み違える。

決算を追うときは、利益率の増減だけでなく、人件費の伸び率と売上の伸び率のどちらが速いかを並べて見てほしい。この会社の場合、そこが最も早く姿を現す物差しになるはずだ。

免責事項

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石津 大希アナリスト 株式会社モニクルリサーチ

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