2026年7月、1年のちょうど折り返し地点です。年が明けてからあっという間に半年が過ぎ、これからの生活やお金の使い方について改めて思いを巡らせている方も多いのではないでしょうか。
筆者はファイナンシャルプランナー(FP)として、これまで数多くの70歳代夫婦の家計相談を受けてきました。その中で「年金だけでこの先足りるのだろうか」「今ある貯蓄が何歳まで持つか分からなくて使うのが怖い」といった、老後の資産寿命に対するリアルな不安の声をたくさん耳にしています。
今回は、金融経済教育推進機構(J-FLEC)の「家計の金融行動に関する世論調査」のデータから70歳代・二人以上世帯のリアルな貯蓄事情を読み解き、後半では資産を長持ちさせるための「資産寿命シミュレーション」の視点をご紹介します。
【70歳代・二人以上世帯】貯蓄額の平均「2416万円」中央値はいくら?
まずは、J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」70歳代・二人以上世帯の金融資産保有額階層ごと世帯割合(金融資産非保有世帯を含む)についてみていきましょう。
※貯蓄額には、日常的な出し入れ・引落しに備えている普通預金残高は含まれません。
【70歳代】二人以上世帯:金融資産保有額階層ごとの世帯割合
【70歳代】二人以上世帯:金融資産保有額階層ごとの世帯割合
金融資産非保有:10.9%
100万円未満:4.5%
100~200万円未満:5.1%
200~300万円未満:3.7%
300~400万円未満:3.9%
400~500万円未満:2.9%
500~700万円未満:6.4%
700~1000万円未満:6.7%
1000~1500万円未満:11.1%
1500~2000万円未満:6.7%
2000~3000万円未満:12.3%
3000万円以上:25.2%
無回答:0.6%
平均:2416万円
中央値:1178万円
ポイント① 平均2416万円・中央値1178万円
平均額は2416万円と高水準ですが、一部の富裕層が平均を引き上げるため、より実態に近い「中央値」は1178万円となっています。現役時代から計画的に備えてきた世帯が多いことが伺えます。
ポイント② 3000万円以上が25.2%、一方で非保有も1割超
3000万円以上の資産を持つ世帯が約4分の1(25.2%)を占める一方、金融資産を全く保有していない世帯も10.9%存在します。高齢期における資産形成の二極化が浮き彫りとなる結果です。
ポイント③ 1000万円以上が過半数
「1000万〜1500万円未満」の11.1%をはじめ、1000万円以上の資産を持つ世帯を合わせると全体の55%を超えます。多くの世帯が、これまで築いた資産をどう取り崩していくかというフェーズにあります。
公的年金の受給額はいくら?「月額15万円以上」は半分以下
では、毎月の生活のベースとなる「年金」の受給額の現実はどうでしょうか。
厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の男女全体の平均月額は15万289円(老齢基礎年金を含む)です。しかし、受給額ごとの分布を見ると、月額15万円以上を受給している人は全体の49.8%と、半分に満たないのが実態です。厚生年金を受給していない人を含めると、この割合はさらに下がります。
そのため、毎月の年金収入だけで日々の生活費をすべて賄うのは、決して容易ではないことが分かります。だからこそ、多くの世帯において、先ほど確認した手元の貯蓄を上手に切り崩しながら生活を補填していく必要性が生じてくるのです。
資産寿命シミュレーションのメリット:「使いながら増やす」意識
相談に来られるお客様の中には、「貯蓄が減っていくのを見るのが精神的に辛い」と不安を吐露される方もなかにはいらっしゃいます。そこで提案するもののひとつに、今ある資産で「あと何年生活できるか」を可視化する「資産寿命シミュレーション」があります。
資産寿命シミュレーションのイメージ図
銀行の公式サイトなどで無料でシミュレーションできるものもあります。
例えば、以下の条件で毎年の赤字を補填する場合を考えてみましょう。
- 手元の資産:1000万円
- 年金などの年間収入:180万円
- 生活費などの年間支出:230万円
- 毎年の赤字:50万円
この赤字分をただ預金から取り崩すだけ(運用なし)の場合、資産は約20年で底をついてしまいます。しかし、預金の一部を年利3%でゆるやかに「使いながら運用」した場合、資産の寿命は約30年へと、約10年も長持ちさせることができるのです。
年利3%という水準は、NISAなどを活用し、バランス型の投資信託などで十分に目指せる可能性がある現実的な利回りです。70歳代は教育費や住居費などの大きな出費が落ち着き、家計の見直しに最適な時期。「守る」だけでなく、インフレに備えて「ゆるやかに増やす」視点を持つことで、お金の不安を安心へと変えることができます。
「資産の見える化」で安心の老後へ
2026年も後半戦に入りました。70歳代の二人以上世帯における金融資産の中央値は1178万円ですが、年金だけでは不足する分を補うためには、貯めた資産をどう守り、どう活かすかが重要になります。
ご自身の「資産の見える化」を行い、取り崩しの工夫や運用の取り入れを検討してみてはいかがでしょうか。家計のバランス作りに迷った際は、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するのも一つの手です。
参考資料
日本生命保険相互会社出身。元マネースクール講師、現役FP(CFP®・1級FP技能士)でJ-FLEC認定アドバイザー。保険から年金、資産運用まで幅広い知見を持ち、「お金の先生」としてLIMO&ファイナンス編集部にてわかりやすく信頼できる記事をお届けします。
