この記事はここがポイント
- 住友商事の2027年3月期第1四半期決算は最終利益1,900億7,500万円、前年同期比11.2%増
- 最終利益の増益は資源セグメントの好調が主因、銅価格上昇などが寄与
- 株価は前日急伸の反動で9月4日終値1,820円に反落、年初来高値1,943.7円から約6.4%安
住友商事<8053>の株価は4日、前日比▲22円(▲1.19%)安の1,820円で取引を終えました。3日に伝わったバークシャー・ハサウェイの新CEOによる商社株の長期保有発言を受けて前日に急伸した反動で、利益確定売りが優勢となった形です。
2027年3月期1Q決算は最終利益で11.2%増益、進捗率は約30%
住友商事が発表した2027年3月期第1四半期の連結業績は、次の通りです。
- 収益:1兆9,493億6,200万円(前年同期比+9.0%)
- 税引前四半期利益:1,522億6,100万円(同▲27.6%)
- 最終利益(親会社の所有者に帰属する四半期利益):1,900億7,500万円(同+11.2%、192億500万円増)
- 基本的1株当たり四半期利益(EPS):39.95円(前年同期35.29円、株式分割後換算)
通期の連結業績予想(最終利益)は6,300億円(前期比+4.9%)に据え置かれており、今回の最終利益はこれに対して進捗率約30%です。
税引前四半期利益が前年同期比で減少している一方、最終利益は増加するというねじれが生じているのは、マダガスカルのニッケル事業売却によるものです。売却損の計上で有価証券損益が悪化し税引前利益を押し下げた一方、同じ売却に伴う税効果で法人所得税がプラスに転じ、最終利益を押し上げる形になりました。一過性要因が大きい点には注意が必要です。
決算をけん引したのは資源事業
住友商事は10のセグメントを持つ総合商社ですが、今回の最終利益の増加額(192億500万円)に対して最も大きく寄与したのは資源セグメントでした。資源セグメントの利益は254億3,500万円(前年同期比+147億8,800万円)と、全セグメントの中で増加額が突出しています。銅価格の上昇に加え、アルミのマージン拡大、貴金属取引の好調が重なったことが要因で、資源市況が上向く局面で業績への感度が高いという同社の特性が表れた形です。
なお、自動車・都市総合開発は前年同期にあった売却関連益・大口不動産案件の引き渡し益の反動で減益となっていますが、事業自体の失速を示すものではありません。
資産面では、第1四半期の投資活動によるキャッシュ・フローが差し引き4,230億8,800万円の支出となりました。Sumisho Air Leaseの買収など計4,500億円の投資が主因で、一方でベルギー洋上風力発電事業や国内外不動産の売却など計900億円の資産入替も進めています。同社は2026~2028年度に総額1.2兆円規模の資産入替を計画しており、第1四半期時点で900億円を実施済みです。Net D/E ratio(ネット有利子負債/株主資本)は0.78倍に上昇しましたが、年度末には0.6倍程度まで改善させる方針です。
住友商事の年間株価チャートを読み解く
住友商事の年間チャート
同社株は2025年夏場は1,000円前後(分割後換算)で推移していましたが、2026年に入って緩やかに水準を切り上げ、5月1日の場中に発表した決算(過去最高益の見通し、増配、自社株買い、および1株→4株の株式分割)が大きなポジティブサプライズとなり、同日はストップ高(分割後換算の終値1,710円)を記録しました。その勢いのまま5月13日には年初来高値となる1,943.7円まで上値を伸ばしています。
高値更新後は、中東情勢の緊迫化や半導体関連銘柄への資金集中を背景に利益確定などの調整売りが優勢となり、下落基調に転じました。7月1日の株式分割実施後は1,489円~1,635円のレンジで横ばいが続きましたが、7月31日発表の1Q決算を好感した買いが入り、株式分割後では最も高い終値(1,670円)をつけています。
8月に入ると、決算発表後の反動で一時1,603.5円(8月3日安値)まで調整する場面もありましたが、その後は持ち直し、8月12日には1,824円(同日高値)まで値を戻すなど、方向感の乏しい値動きが続きました。3日にバークシャー・ハサウェイの新CEOによる商社株の長期保有方針が伝わったことをきっかけに、株価は前日比+3.02%の1,842円まで水準を切り上げました。翌4日は寄り付き直後に急落する場面もあり、結局は前日比▲1.19%安の1,820円へと反落しています。
バリュエーション評価:反落後の住友商事株はどんな水準か
9月4日終値の1,820円をもとにすると、主要指標は次の通りです。
- PER(会社予想):13.73倍
- PBR(実績):1.82倍
- 配当利回り(会社予想):2.20%
年初来高値は1,943.7円(5月13日)、年初来安値は1,350.0円(3月23日)です。9月4日終値の1,820円は、年初来高値からは約6.4%低い水準にある一方、年初来安値からは約34.8%高い水準にあり、年初来のレンジで見ると上寄りの位置にあります。
なお、2027年3月期の年間配当予想は分割後ベースで40円(第2四半期末20円、期末20円)です。分割を考慮しない実質ベースに換算すると160円となり、前期実績150円から10円増える計画です。
記者コメント
2027年3月期1Qの住友商事は、資源市況の上昇を追い風にした資源セグメントの急伸が最も大きな増益要因でした。銅価格の上昇やアルミのマージン拡大、貴金属取引の好調など、資源市況に対する業績の感度の高さが改めて示された形です。一方で、自動車・都市総合開発の減益は前年の一過性要因の反動という性格が強く、事業自体の失速ではありません。通期予想には300億円程度のバッファーが織り込まれているとみられ、今後の中東情勢を含めた事業環境の変化を精査した上で、第2四半期に見直しを行うとしています。
株価面では、4日は住友商事に限らず、三菱商事<8058>が前日比▲3.10%、三井物産<8031>が同▲4.45%と、いずれも住友商事(▲1.19%)以上に下落しています。3日の商社株全体の急伸に対する利益確定売りが商社銘柄に横断的に出た値動きとみられ、同日朝に開示した自社株買い終了のリリースが株価に与えた影響は限定的だったとみてよさそうです。
増配方針(分割後ベースで前期比10円増配)が据え置かれたことも踏まえると、配当を意識した個人投資家にとっては引き続き注目しやすい銘柄といえそうです。次の決算発表(2026年11月頃を予定)まで、中東情勢の影響がどの程度業績に表れるかも見ておきたいところです。
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
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フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
