2026年3月期は当期利益5,438億円で過去最高、営業利益は▲5.7%
この構造は連結の数字にも表れている。
2026年3月期の収益は8兆2,658億円で+6.1%、売上総利益は1兆1,826億円だった。一方で営業利益は2,566億円、▲5.7%と減っている。
それにもかかわらず当期利益は5,438億円、+8.1%で過去最高を更新した。営業利益が減って最終利益が最高益になるという組み合わせは、営業利益の外側で稼ぐ会社の姿をそのまま映している。
営業利益が減った理由について、会社は2026年3月期3Q累計の時点で説明を残している。エネルギー・化学品は石油化学品取引で128億円の減益、金属は商品価格の下落に伴う豪州原料炭事業で112億円の減益。一方、次世代事業開発は医薬品販売事業と電子部品関連事業の取得により139億円の増益となった。売上総利益の減益に販売費及び一般管理費の増加が重なり、営業利益は▲14.3%になったという。
直近の2027年3月期1Qは、収益2兆6,092億円、営業利益1,321億円、当社株主に帰属する四半期純利益1,864億円で着地した。通期予想の当期利益5,800億円(+6.6%)に対する進捗率は約32%である。
先行きについて会社は、中東情勢の緊迫化に伴う燃料や関連製品の価格上昇と供給途絶、インフレ抑制のための金融引締めを背景に、世界全体では成長鈍化を見込むとしている。一次産品価格は化石燃料価格の上昇が波及する形で幅広い品目に及ぶという見方だ。
燃料高は発電のコストに直結する。もっとも、その分をどこまで売電価格に乗せられるかで結果は変わる。電力・インフラサービスが利益の4番目を保てるかどうかは、ここにかかっているとみている。
株価は3割上げてから、そこで止まらなかった
市場はこの構造をどう受け止めてきたのか。直近1年の月末終値を追ってみる。
2025年9月末の終値は3,600円台だった。そこから2025年12月末に4,300円台、2026年1月末に5,100円台と切り上がり、2026年2月末には6,000円台に乗せている。
高い水準は春まで続いた。2026年4月末の6,000円台は、2025年9月末以降の月末終値では最も高い水準にあたる。
しかし初夏に入ると重くなった。2026年5月末は5,100円台、2026年6月末は4,600円台まで下押しし、4月末からは2割近く水準を落としている。その後は2026年7月末に5,200円台へ戻したものの、2026年8月末は4,900円台だった。
それでも2025年9月末との比較では3割を超える上昇である。1年の成績としては強い部類だが、途中の振れ幅も大きい。資源市況や為替、相場全体の地合いが絡んでおり、単一の材料に還元して説明できる動きではないだろう。
ここで資本効率に目を向けると、別の緊張関係が見えてくる。2026年3月期のROE(自己資本利益率)は13.6%で、卸売業の中央値7.9%を大きく上回る。ところが5期をさかのぼると、2022年3月期の23.0%から22.4%、15.2%、14.2%、13.6%と一貫して切り下がってきた。株価は上がり、資本効率は下がる。この二つが同時に起きているのが、いまの丸紅である。
なぜ電力のような事業は、この会社の顔になりきらないのだろうか。
理由の一つは、私たちが会社を売上の大きさで記憶するからだと考えられる。決算資料でも報道でも、事業は収益の大きい順に並ぶ。その並びで見るかぎり、電力は下のほうに置かれ続ける。
だが投資家が本当に知りたいのは、どこにお金が入ってくるかではなく、どこにお金が残るかのはずだ。並べ替えるだけで、会社の輪郭は変わる。
もう一つ、この事業が語られにくい理由がある。稼ぐまでの時間が長いことだ。設備は建てて動かして初めて利益になる。四半期ごとの話題には乗りにくく、株価が反応する材料にもなりにくい。裏を返せば、市況で説明しやすい事業ほど株価に織り込まれやすく、時間のかかる事業ほど織り込みが遅れる。
商社の決算を見るとき、収益の列を眺めて終わらせないことをおすすめしたい。利益の列で一度並べ替える。それだけで、同じ会社が違って見えてくるはずだ。
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オリックスなどの国内金融機関出身。日本株アナリストおよび財務アドバイザーとして決算分析や資金調達を主導。「日経CNBC」出演などメディアを通じた相場解説の実績も豊富。企業財務に精通し、現在はモニクルリサーチで金融ニュースの深掘り記事を発信。
