監修者泉田良輔LIMO&ファイナンス編集部 編集長
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通期予想に隠された会社からのメッセージ

さて、第1四半期が絶好調であったJPXですが、ここで一つ、冷静に数字を読み解くべきポイントがあります。それは、決算と同時に発表された「通期の業績予想」とのバランスです。

会社は通期の営業収益を2,415億円(前期比プラス21.5%)と予想しています。ここで、第1四半期の営業収益である約655億円を単純に4倍してみましょう。すると、年間で約2,620億円に到達すると算出できます。

第1四半期の50.8%増収という猛烈な勢いが1年間続けば、会社の通期予想である2,415億円を軽々と上回ってしまう計算になります。

これは何を意味しているのでしょうか。会社自身が、「第1四半期の熱狂的な取引の勢いは、通期を通じてそのまま続くわけではない」という前提を置いていると考えられます。増収率でいえば、第1四半期のプラス50.8%に対し、通期予想はプラス21.5%。会社は、年度の残りで伸びが半分以下に落ちる姿を描いていると考えられます。

第1四半期の年換算と通期予想のギャップ

第1四半期の年換算と通期予想のギャップ
出所:日本取引所グループ「2027年3月期 第1四半期決算短信」を基にイズミダイズム作成(年換算値は本記事による試算)
第1四半期の年換算と通期予想のギャップ

投資家が次に注目すべき「観測点」とリスク

ここまで見てきたように、JPXの業績は「現物株の取引量」に大きく依存しています。したがって、私たちが今後の業績や株価の行方を占う上で次に見るべき観測点は、日経平均株価やTOPIXが最高値を更新したかどうかではありません。

注目すべきは、四半期ごとに発表される決算における「現物の取引料の前年同期比」です。

第1四半期は前年同期比プラス86.7%という驚異的な伸びでしたが、会社の通期見通し(営業収益全体でプラス21.5%)に沿って考えるならば、この成長率は徐々に落ち着いていくと考えられます。この前年同期比が20%台まで落ちてくるのか、それとも高い水準を維持し続けるのか。それが、会社の見通し通りに市場が減速するのか、あるいは会社の想定を超えて活況が続くのかを見極める分岐点となります。

一方で、このビジネスモデルには明確なリスクも存在します。泉田氏が指摘するように、市場の熱狂は永遠には続きません。

「株式市場が冷え込んだらなくなっちゃうんで、だから日本株が盛り上がっているってことが大事なんですよ」

現物の売買が増えたことで増収となっている以上、株式市場が冷え込み、投資家が取引を手控えるようになれば、同じ経路をたどって収益は減少に転じると考えられます。

さらに、工場は不要だとはいえ、システムへの投資はやめることができません。

「取引所が止まるとか、システムの問題って昔あったんだけど(中略)やっぱりIT投資は常に続けないといけない」

市場のインフラを担う取引所にとって、システム障害は絶対に避けなければならない事態です。そのため、売買が減って収益が落ち込んだとしても、安全稼働のための投資は止めにくいと考えられます。収益は市場次第で振れる一方、費用の一部は振れにくい。この非対称は頭に入れておく必要があります。

まとめ

インデックスファンドを通じて日本株全体に投資することは、市場の水準に賭けることです。取引所に投資することは、市場が動く量に賭けることです。同じ「日本株が好調だ」という前提から出発しても、賭けている対象は別のものになります。

そのうえで、今期のJPXについて手元に残る判断材料は1つです。第1四半期に現物の取引料は前年同期比プラス86.7%まで伸びた一方、会社の通期見通しは営業収益でプラス21.5%。会社は、この伸びが年度の残りで大きく落ちる姿を描いています。四半期ごとに現物の取引料の前年同期比を追い、それが20%台まで下がるのか、高い水準を保つのか。そこが、会社の見通しどおりに減速するのか、それを超えて活況が続くのかの分かれ目にあたります。

なお本記事は、決算の数字と収益の伸び方に絞って解説しました。JPXには、上場企業に対して「資本コストと株価を意識した経営」を要請するなど、日本の株式市場全体の価値を高める旗振り役としての側面もあります。その活動が業績にどう返ってくるかまでは、ここでは扱っていません。

参考資料

  • 日本取引所グループ「2027年3月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」(2026年7月28日)
  • 日本取引所グループ「2026年度 第1四半期 決算の概要」(2026年7月28日)
  • 日本取引所グループ「業績予想及び配当予想の修正に関するお知らせ」(2026年7月28日)
  • 日本取引所グループ「2026年3月期 通期決算短信〔IFRS〕(連結)」(2026年4月28日)
  • 日本取引所グループ「中期経営計画2027 2026年度アップデート・2025年度決算説明会 説明資料」(2026年4月30日)
  • YouTubeチャンネル「イズミダイズム

各資料の入手先: 株式会社日本取引所グループ IRライブラリ

※リンクは記事作成時点のものです。

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泉田良輔LIMO&ファイナンス編集部 編集長

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