70歳を過ぎると、収入の中心は現役時代の給与から年金へと切り替わります。私はファイナンシャルアドバイザーとして日々、幅広い世代の方のお金のご相談に寄り添っていますが、70代のお客様とお話ししていると、退職金や相続資産をしっかり積み上げた世帯もあれば、日々の生活費に不安を抱える世帯もあり、家計の姿が世帯ごとに大きく異なることを肌で感じます。
そんな70歳以上の二人以上世帯では、金融資産3000万円以上を保有する世帯はどれくらいいるのでしょうか。今回は、金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査2025年」の最新データをもとに、70代の貯蓄事情と受給中の年金平均額を解説するとともに、数多くのご家庭の資産運用や保険の見直しをサポートしてきた視点から「老後資産を守り抜くコツ」をお伝えします。
年金の基本、国民年金と厚生年金は「2階建て構造」
公的年金は、基礎部分となる「国民年金」と、上乗せ部分にあたる「厚生年金」から成り立つ2階建て構造です。
国民年金は原則として、国内在住の20歳以上60歳未満のすべての人が加入対象で、年金のベースとなります。国民年金保険料(※1)は全員一律です。
厚生年金は企業や官公庁などで働く人たちが、国民年金に上乗せして加入する年金です。毎月の給与や賞与に応じた保険料(※2)を納めます。
厚生年金は「年金加入月数」と「納めた保険料」で老後の年金額が決まるため、受け取る金額は一人ひとり異なります。現役時代に長く働き高い報酬を得ていた人ほど、受給額が大きくなる仕組みです。
※1 国民年金保険料:2026年度は月額1万7920円
※2 保険料額は標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される
2026年度の年金額、《6月15日支給分から増額改定》
公的年金の支給日は「偶数月の15日(※)」で、2026年度の改定額が反映されたのは先日6月15日の支給分(4月・5月分)からでした。次回の支給日は8月14日(金)です。
厚生労働省によると、2026年度のモデル世帯(夫婦2人分の標準的な年金額)は月23万7279円となり、前年度から改定率がプラスとなりました。
老齢基礎年金の満額は、昭和31年4月2日以降生まれで月7万608円(昭和31年4月1日以前生まれは月7万408円)です。すでに受給が始まっている70歳以上の方も、毎年4月に改定された金額が6月支給分から反映されます。
※支給日が土日祝の場合は直前の平日
70歳以上・二人以上世帯の金融資産、「3000万円以上」は何割?
金融経済教育推進機構が公表した「家計の金融行動に関する世論調査2025年」(二人以上世帯)によると、70歳代の金融資産保有額は次のとおりでした。
- 平均値:2416万円
- 中央値:1178万円
50歳代(平均1908万円・中央値700万円)や60歳代(平均2683万円・中央値1400万円)と比べても、70歳代は退職金や住宅ローン完済後の残余資産が積み上がり、中央値が1000万円を超えている点が特徴です。
次に、70歳以上・二人以上世帯における金融資産額の分布を見てみましょう。
- 金融資産を保有していない:10.9%
- 2000万円以上(合算):37.5%
- 3000万円以上:25.2%(分布上の最多層)
- 2000万〜3000万円未満:12.3%
- 1000万〜1500万円未満:11.1%
3000万円以上を保有する世帯は25.2%と、およそ4世帯に1世帯という結果でした。しかも「3000万円以上」が単独で分布の最多層となっているのが70歳以上の特徴で、まとまった金融資産を積み上げた層と、貯蓄なしの1割強の層とに、家計の姿は大きく分かれています。
老齢年金の平均月額はいくら?男女別に厚生年金と国民年金を確認
70歳以上の世帯は、公的年金が家計の柱です。厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、老齢年金の平均月額は男女別に次のとおりでした。
厚生年金(国民年金部分を含む)の平均月額
- 男性:16万9967円
- 女性:11万1413円
国民年金(老齢基礎年金)の平均月額
- 男性:6万1595円
- 女性:5万7582円
厚生年金の階級別分布を見ると、月10万円未満の層が全体の19.0%、月20万円超の層が18.8%と、受給額の格差はそのまま老後の家計格差につながっています。夫婦の合計月収でも、20万円台前半の世帯と35万円前後の世帯とで開きがあり、貯蓄の切り崩しペースを大きく左右します。
【FP・IFAの視点で考える】70代の資産を「守り抜く」ための3つのポイント
70代は、これから大きく資産を増やすというより「守り、上手に取り崩す」フェーズに切り替わる年代です。しかし、3000万円以上のまとまった資産を持つ層であっても、油断は禁物です。私が日々のコンサルティングで大切にしている「保障と投資のバランス」という観点から、老後の安心を守り抜くための3つの視点を整理します。
資産の「使う順番」と「運用」のバランスを決める
普通預金・定期預金・投資信託・債券・保険といった資産ごとに、取り崩しやすさ(流動性)と運用効率は異なります。生活費はすぐに引き出せる預貯金から確保しつつ、当面使わない資金については、ご自身の許容度に合わせて投資信託や債券等で堅実に運用を続けながら段階的に取り崩すことで「資産寿命」を延ばす工夫が大切です。このルールをご家族内で共有しておくと、将来への不安が和らぎます。
医療・介護費への「保障」を再確認する
70代は、医療費・介護費の負担が徐々に増えていく年代です。公的医療保険には高額療養費制度、介護には自己負担軽減制度がありますが、差額ベッド代や在宅介護の実費は全額自己負担となります。私は以前、生命保険会社で多くのお客様をサポートしてきましたが、こうした突発的な支出への備えが家計の明暗を分けるケースを少なくありません。手元の現預金から年間30万〜50万円程度の予備費を別枠で確保しておくか、現在ご加入中の医療保険・介護保険の保障内容が「今の実態」に見合っているか、一度見直してみることをおすすめします。
家族との情報共有と「話しやすい環境」づくり
金融資産を複数の金融機関に分散管理するのは安全上有効ですが、口座や取引先の情報を「ご本人しか把握していない状態」は、いざという時にご家族にとって大きなリスクとなります。口座リスト、保険証券、不動産の権利証、デジタル資産のパスワードなどを一覧にまとめ、信頼できるご家族と定期的に共有しましょう。エンディングノートの活用も選択肢の一つです。ご家族間でもお金の話はしづらいものですが、日頃から「何でも話しやすい雰囲気」を作っておくことが、実は一番の備えになります。
まとめにかえて
70歳以上・二人以上世帯で金融資産3000万円以上を保有するのは25.2%、およそ4世帯に1世帯という結果でした。分布の最多層が「3000万円以上」となっている点は他の年代と大きく異なり、退職金や長年の積立が実を結んだ姿ともいえます。
一方で、金融資産なしの世帯も1割を超え、公的年金だけを頼りに暮らす家計も少なくありません。夫婦の年金額と生活費、そして残された資産の取り崩しペースを毎年見直すことが、老後の安心につながる第一歩です。
参考資料
ファイナンシャルアドバイザー。一種外務員資格及びFP2級保有。第一生命出身。現在はIFAとして、若年層から高齢層までの幅広い世代へ向けたファイナンシャルプラニングから投資信託・債券・保険を活用した個人向け資産運用コンサルティング業務を行う。
