この記事はここがポイント
- 2025年度公的年金積立金は過去最高302兆円、GPIF運用資産は2026年6月末317兆円超を記録。
- 年金運用は「分散・積立・長期」の3原則を徹底、安定的な高収益を獲得。
- これらの原則は、NISA等個人の資産形成に活かせる重要な示唆。
筆者はFPとして、お客様の家計相談などお受けすることがありますが、「将来の年金は減ってしまうの?」「ニュースで色々な意見を聞くけれど、本当のところはどうなの?」と、ご自身の老後やご家族の将来に不安を抱く方は少なくありません。しかし、2026年8月に発表された最新のデータによると、少し安心できる事実が見えてきます。
厚生労働省が2026年8月7日に発表した「2025年度(令和7年度)の年金決算」や、年金の運用を担うGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の最新報告によると、私たちの年金の積立金は過去最高額を更新しています。
今回は、FP(ファイナンシャルプランナー)の視点から、時価総額317兆円を突破した年金運用の現状と、私たちが家計の資産づくりに活かせる3つのヒントを初心者向けに分かりやすく解説します。
2025年度の年金積立金「302兆円」過去最高←対前年度プラス42兆円以上の増加
まずは、2026年3月末(令和7年度末)時点の公的年金の決算結果を見てみましょう。厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金の令和7年度収支決算の概要」によると、私たちの年金の「貯金」にあたる年金積立金は、時価(その時点での市場での価値)ベースで前年度より42兆5136億円増加し、過去最高の302兆5893億円に達しました。
令和7年度決算結了後の年金積立金
公的年金は、会社員や公務員が加入する「厚生年金」と、自営業や学生、専業主婦(夫)などが加入する「国民年金」で構成されています。それぞれの運用状況は以下の通りです。
厚生年金保険の積立金
- 積立金額:288兆9623億円(前年度より41兆2005億円増加)
- 1年間の運用利回り(投資した元本に対する利益の割合):15.85パーセント
国民年金の積立金
- 積立金額:13兆6270億円(前年度より1兆3132億円増加)
- 1年間の運用利回り:16.18パーセント
年金制度は、現役世代が納める保険料や国の税金だけで支えられているわけではありません。将来の支払いに備えて蓄えられている「積立金」を市場で運用し、そこで得た利益も大切な原資となります。2025年度は世界的な株価上昇などを背景に、積立金が大きく育った1年となりました。
GPIF運用資産の総額、ついに「317兆7596億円」←わずか3ヶ月間で約24兆円のプラス
2025年度の安定した流れは、2026年度(令和8年度)に入ってからも継続しています。GPIFが発表した2026年4月から6月までの最新実績を見てみましょう。
2026年度第1四半期(4月から6月)の運用実績
2026年度の運用実績
- 期間中の収益率:プラス8.20パーセント
- 期間中の収益額:プラス24兆895億円
- 2026年6月末時点の運用資産総額:317兆7596億円
わずか3ヶ月間で約24兆円のプラスとなり、資産総額は317兆円を突破しました。GPIFはこの好調の要因として、世界的なAI(人工知能)や半導体への投資需要の高まりによる株価上昇や、円安の影響で保有している外国資産の価値が円換算で膨らんだことなどを挙げています。
FPが解説!年金運用に学ぶ「3つの投資手法」将来の資産形成に役立つ運用のコツとは
年金運用がこれほど安定して成果を出しているのには、プロが徹底して守っている確かな理由があります。資産づくりの王道と呼ばれる「分散・積立・長期」の3つの投資手法もそのひとつです。
①投資先を分ける「分散投資」
GPIFは、「卵を一つのかごに盛るな」という投資の格言通り、資金を「国内債券」「外国債券」「国内株式」「外国株式」の4つに、ほぼ25パーセントずつ均等に分けて投資しています。
運用資産額・構成割合(年金積立金全体)
株式の価格が下がって不安な時期でも、値動きの安定した債券(国や企業にお金を貸して利息を受け取る仕組み)がクッションの役割を果たします。私たちも、1つの会社の株だけを買うのではなく、世界中の様々な企業にまとめて投資できる「投資信託」などを活用し、リスクを分散させることが大切です。
②コツコツ続ける「積立投資」
年金の積立金は、毎月集まる保険料をもとに継続的に市場へ投資されています。これを個人の資産運用に当てはめると、毎月決まった額を自動で買い続ける「積立投資」になります。
価格が高い時には少しだけ、価格が安い時にはたくさん買うことができるため、購入価格が平均化され、高値づかみのリスクを減らすことができます。家計に無理のない数千円からでも、毎月コツコツ続けることが成功の秘訣です。
③目先の動きに慌てない「長期投資」
市場は常に上がったり下がったりを繰り返します。一時的なマイナスが出ることも当然あります。しかし、年金運用は10年、20年といった非常に長い期間で行われています。
私たちも、日々のニュースで株価が下がったと聞いて慌てて売却するのではなく、「将来のための資産だから」とどっしり構えて、10年以上先を見据えた「長期投資」の姿勢を持つことが、資産を安定して育てる一番の近道です。
ちなみに、最近では、2026年7月10日に国民民主党から個人向け国債をNISAの対象にする「国債NISA法案」が提出されるなど、安全な債券への投資をより身近にする議論も始まっています。これが実現すれば税制優遇を受けながら個人向け国債に投資できる大きなメリットが生まれるため、今後の議論のゆくえを一緒に注視していきましょう。
まとめにかえて
今回は、公的年金積立金が過去最高を更新した最新状況と、GPIFの運用実績から学べる資産形成のポイントについて解説しました。年金制度は保険料だけでなく積立金の運用益にも支えられており、長期的な視点で安定した成果を積み上げています。
まずは国の制度が機能していることを知って安心した上で、ご自身のライフスタイルに合わせ、年金運用の考え方を参考にしながら、分散・積立・長期を意識した資産づくりを始めることが将来への安心につながるでしょう。お金の不安は、正しい知識を持つことで少しずつ「安心」に変えていくことができます。
参考資料
日本生命保険相互会社出身。元マネースクール講師、現役FP(CFP®・1級FP技能士)でJ-FLEC認定アドバイザー。保険から年金、資産運用まで幅広い知見を持ち、「お金の先生」としてLIMO&ファイナンス編集部にてわかりやすく信頼できる記事をお届けします。
