この記事はここがポイント
- 現行利率前提で、100万円を固定5年に投資した場合、変動10年より5年間で約7,570円手取り利息が多い結果
- 固定5年は利率確定。変動10年は半年ごと見直しで、金利変動のリスクが伴う仕組み
- 50万円ずつ変動10年と固定5年に分散投資は、金利変動リスクを抑える有効な手段
前回、2026年8月発行分の個人向け国債について、金利先高観のなかで「変動10年」と「固定5年」のどちらを選ぶべきか迷う方が多いとお伝えしました。
今回は、実際に100万円を投資した場合、手取りの利息にどれくらいの差が出るのかを、具体的な金額でシミュレーションしてみます。
シミュレーションの前提条件
今回は、2026年8月発行分(変動10年第197回債、固定5年第185回債)の実際の適用利率を使い、以下の前提で計算します。
- 投資金額:100万円
- 投資期間:5年間(固定5年の満期に合わせた期間)
- 変動10年の適用利率(税引前):年1.87%
- 固定5年の適用利率(税引前):年2.06%
- 税率:20.315%(復興特別所得税を含む)
変動10年については、現在の利率(1.87%)が5年間変わらないと仮定します。
実際には半年ごとに見直されるため、この前提はあくまで「今の利率が続いたら」という参考値であり、将来の金利動向を予測するものではありません。
なお、変動10年は10年債のため、5年が経過しても満期(償還)にはなりません。今回の「5年間の合計」は保有を継続した場合に受け取る利息の累計であり、中途換金・売却して元本を手元に戻すことは想定していません(固定5年は5年でちょうど満期を迎えるため、元本も同時に返ってきます)。
パターン別の手取り利息シミュレーション
上記の前提で計算すると、5年間の手取り利息(税引後)は次のようになります。
パターンA:100万円を全額「固定5年」に投資した場合
- 年間の手取り利息:約16,415円
- 5年間の合計:約82,075円
(発行時点で利率が確定しているため、この金額は5年後まで変わりません)
パターンB:100万円を全額「変動10年」に投資した場合(現行利率が変わらないと仮定)
- 年間の手取り利息:約14,901円
- 5年間の合計:約74,505円
(実際の利率は半年ごとに見直されるため、この金額は目安です)
パターンC:50万円ずつ「変動10年」と「固定5年」に分けた場合
- 固定5年側(50万円)の5年間合計:約41,038円
- 変動10年側(50万円)の5年間合計:約37,253円
- 合計:約78,291円
現行利率のまま変わらないと仮定した場合、パターンAとパターンBの差額は約7,570円となり、固定5年に全額投資した方が有利という結果になります。
パターンCは、当然ながらAとBのちょうど中間に近い金額に落ち着きます。
個人向け国債の手取り利息シミュレーション
そもそも、なぜ変動10年は「仮定」が必要なのか
固定5年は発行時点で満期までの利率が確定するため、5年後にいくらの利息を受け取れるかを購入前に正確に計算できます。
一方の変動10年は、基準金利に0.66を掛けた利率が半年ごとに更新される仕組みのため、購入時点では2年目以降の利率がいくらになるか誰にも分かりません。
今回のシミュレーションで「現行利率が変わらないと仮定」としたのは、あくまで比較のための簡便な前提であり、実際の受取総額は市場金利の動き次第で変動する点を押さえておく必要があります。
変動10年の利率が変わった場合の参考シナリオ
将来の金利がどう動くかを予測することはできませんが、算数上の参考値として、100万円を変動10年に投資した場合の5年間の手取り利息が、平均的な適用利率(税引前)によってどう変わるかを示すと、次のようになります。
- 平均利率が2.50%で推移した場合(上限の仮定値):5年間の合計は約99,606円
- 平均利率が現行の1.87%のまま推移した場合:5年間の合計は約74,505円(パターンBと同じ)
- 平均利率が最低金利保証の0.05%まで下がった場合(下限シナリオ):5年間の合計は約1,992円
このように、変動10年は金利が上昇すれば固定5年を上回る可能性がありますが、逆に金利が下がれば大きく見劣りする可能性もあります。
ただし、どれだけ市場金利が下がっても年率0.05%の最低金利保証があるため、受取利息がゼロになることはありません。
リスク注意点
- 変動10年の金利変動リスク:半年ごとに利率が見直されるため、将来的に受取利息が今回のシミュレーションより増えることもあれば、減ることもあります
- 固定5年固定3年の機会損失リスク:発行時点の利率で5年間固定されるため、その後市場金利が大きく上昇しても、その恩恵を受け取ることはできません
- 中途換金の制限:いずれのタイプも発行後1年間は原則として中途換金ができません。1年経過後は元本割れなしで換金できますが、直前2回分の利子(税引前)相当額×0.79685が差し引かれます
- 税金の扱い:受け取る利子には20.315%相当の税金が源泉徴収されます
まとめ
現行利率のまま変わらないと仮定すると、100万円を固定5年に全額投資した方が、変動10年に全額投資するより5年間で約7,570円多い手取り利息になる計算です。
ただし、これは「利率が変わらない」という前提での参考値であり、実際に金利が上昇すれば結果は変わります。
50万円ずつに分けるパターンCは、どちらか一方に絞るよりも、金利が上昇低下いずれの方向に動いても結果が極端にならないという意味で、リスクを分散する考え方の一つと言えるでしょう。
固定5年は5年後に元本が返って運用が一区切りするのに対し、変動10年は5年経過時点でもまだ残り5年間保有が続く点には注意が必要です。
今回の比較は受取利息のみを対象としており、資金がいつ自由に使えるようになるか(流動性)まで含めた比較ではありません。
なお、財務省のウェブサイトには、ご自身の投資条件を入力して受取利子を試算できる公式のシミュレーションツールも用意されています。
実際に検討する際は、そちらで最新の条件を確認してください。
記者コメント
今回のシミュレーションはあくまで「現行利率が変わらない」という前提に基づく参考値です。
個人向け国債の変動10年を選ぶ場合、半年ごとの利率見直しのタイミングで基準金利がどう決まるかに注目しておくと、今後の受取利息の見通しを立てやすくなります。
参考資料
フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
