この記事はここがポイント
- 100万円を10年間運用すると、共同債は定期預金より手取り利息が約14万円の差
- 定期預金は預金保険制度で元本保証、共同債は途中売却で元本割れリスク
- 共同債は半年ごと利払い、定期預金は年1回など仕組みにも違い
金利の上昇(価格の下落)トレンドが長期化するリスクに身構えるなか、資産運用のポートフォリオにおいて債券の存在感が日増しに高まっています。
一方で、「投資はまだ怖い」「まずは元本保証の商品で」と考える方にとって、依然として身近な選択肢であり続けているのが銀行の定期預金です。
2026年8月時点で年3.019%という高水準の利率が決まった地方債(共同債)と、大手銀行の代表的な定期預金であるスーパー定期(10年もの、単利型)を、同じ100万円・同じ10年間という条件で比較してみます。
「高利回りを確定させる地方債」か「元本保証で使い勝手のよい定期預金」か——。
手取り額の差とあわせて、見落としがちな仕組みの違いも解説します。
地方債 vs メガバンク定期、10年でどれくらいの差が出るのか
それではそれぞれの商品の特徴を見ていきます。地方債は個人が買える定例債という観点で「共同債」をピックアップしています。
共同発行市場公募地方債(第281回 10年)
- 発行体:複数の地方公共団体(都道府県・指定都市など)
- 金利タイプ:固定金利(満期まで10年間ずっと同じ利率が適用される)
- 適用利率:年3.019%(※満期まで変わらない)
- 条件決定日:2026年8月6日
- 対国債スプレッド:カーブ+20.0bp
- 発行日:2026年8月25日
- 利払い:年2回、半年ごとに現金で受け取り(10年間で合計20回)
スーパー定期(単利型・三菱UFJ銀行)
- 提供機関:三菱UFJ銀行
- 金利タイプ:固定金利(預入時から満期まで変わらない)
- 適用利率:年1.2500%(※300万円未満、2026年8月7日現在)
- 期間:10年
- 利息計算:単利(元金にのみ利息がつき、利息が元金に組み入れられることはない)
- 利払い:預入日から1年ごとの応当日に中間利払い、最終回は満期日に元金とともに支払い(10年間で合計10回)
そもそも定期預金の「単利型」とは?
単利型の定期預金は、預け入れた元金にのみ利息がつくシンプルな仕組みです。地方債や国債の利払いのように、あらかじめ決まった利率で計算した利息を定期的に受け取れる点は共通していますが、支払いのペースが異なります。
今回比較するスーパー定期(10年・単利型)は、預入日から1年ごとの応当日に利息が支払われる「年1回払い」です。半年ごとに利払いがある地方債と比べると、現金として利息を受け取れる頻度は半分になります。
シミュレーション:10年後の手取り額はどれだけ違う?
100万円を預け入れ・購入し、10年間そのまま保有した場合の税引後利息を計算します。
※税率は復興特別所得税を含む20.315%(国税15.315%・地方税5%)を適用。それぞれ端数を切り捨てて算出しています。
共同発行地方債(10年・年3.019%固定)
- 半年ごとの手取り利息:1万2,030円
- 10年間の手取り累計:24万600円
スーパー定期(単利型・年1.25%)
- 1年ごとの手取り利息:9,961円
- 10年間の手取り累計:9万9,610円
手取り利息の差額
14万990円(共同債の勝ち)
利率差(3.019%対1.25%)がそのまま手取り額の差に直結し、共同債が大幅にリードする結果となりました。
利回りだけでは測れない「選択の分岐点」
14万円超の手取り差だけを見ると共同債一択のように思えますが、実際には仕組み面でいくつかの重要な違いがあります。
「元本保証」の強さの違い
- 定期預金:預金保険制度の対象で、1金融機関あたり元本1,000万円とその利息まで保護される。満期を待たずに中途解約しても、預けた元本そのものが減ることはない
- 共同債(地方債):満期前に売却する場合はその時点の市場価格での取引となり、金利上昇局面では債券価格が下落するため、途中売却で「元本割れ」するリスクがある
中途解約のしやすさ
- 定期預金:いつでも中途解約が可能。ただし解約時期に応じた「期限前解約利率」(通常の店頭表示利率より低い利率)が適用され、当初の約定利率どおりの利息は受け取れなくなる
- 共同債(地方債):市場で自由に売却できる一方、価格は日々変動するため、いつ・いくらで売れるかは確定していない
利息を受け取れる頻度の違い
- 共同債:半年ごとに現金として利息を受け取れる
- 定期預金(単利型):1年ごとに現金として利息を受け取れる(受け取り頻度は地方債の半分)
今後の「金利上昇」への対応力
どちらも固定金利のため、預入・購入後に市場金利が上昇しても、適用される利率自体は変わりません。
金利上昇局面での恩恵を受けたい場合は、変動金利型の個人向け国債(変動10年)なども選択肢に入れて検討するのがよいでしょう。
記者コメント
まとめにかえて、それぞれがどのような人に向いているかを整理しました。
「地方債」がおすすめな人
10年間絶対に使う予定がない「完全な余剰資金」を運用したい人
年3%台という好条件を今すぐ確実に確定させたい人
少しでも高い頻度で現金として利息を受け取りたい人
「定期預金(単利型)」がおすすめな人
元本保証を最優先し、価格変動リスクを一切取りたくない人
中途解約の自由度を確保しておきたい人
仕組みのシンプルさ・分かりやすさを重視する人
利率だけを比較すると差は大きく見えますが、「元本保証の強さ」や「中途解約のしやすさ」といった仕組みの違いも踏まえたうえで、ご自身の資金の性質やライフプランに合わせて選ぶことが大切です。
参考資料
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
- 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
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フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
