この記事はここがポイント
- 新NISAで月10万円を15年積立後15年保有で、元本1800万円が約3525万円になる試算。
- つみたて投資枠は販売手数料0%、国内平均0.26%の信託報酬が運用成果に直結する費用。
- 50代世帯の金融資産中央値は700万円以下と、老後資金形成の必要性が高い現状。
新NISAが始まり、世間で投資への関心が高まるなか、将来への不安から運用を検討し始めた方も多いのではないでしょうか。
筆者は元銀行員として、数多くのお客さまの老後資産設計をサポートしてきました。ですが、多くの方は「先のことだからまだ何もしなくても良いだろう」「どのくらいお金がかかるかわからない」「現役時代も多くのお金がかかるので、先のことまで考えられない」など、見通しが立たないことで一歩踏み出せない、という方がほとんどでした。
このような悩みがある中で、「周りが始めているから」と焦ってNISAをスタートしてしまうのは危険です。
本記事では、新NISAの基本的なしくみや投資信託にかかる費用を確認したうえで、「月10万円」を積み立てた場合のリアルなシミュレーション結果をご紹介します。
記事の後半では、気になる「50代の貯蓄額の現実(中央値)」にも触れながら、なぜ資産形成を始めるべきなのかを紐解いていきましょう。
新NISAとはどんな制度?株式に興味があるなら成長投資枠に注目
新NISAは、投資で得た利益が非課税になる制度です。
通常、株式や投資信託の運用益には約20%(20.315%)の税金がかかりますが、NISA口座で得た利益には、これがかかりません。2024年から始まった新しいNISAでは、非課税で保有できる期間が無期限になり、制度そのものも恒久化されました。
「つみたて投資枠」は年間120万円まで、「成長投資枠」は年間240万円までで、両方をあわせて使えます。生涯にわたって非課税で保有できる限度額は、合計1800万円(うち成長投資枠は1200万円まで)です。以前に比べると自由度が上がりました。
NISA
一方で、注意しておきたい点もあります。NISA口座で生じた損失は、ほかの口座の利益と相殺する損益通算ができません。非課税というメリットの裏側に、こうした制約もあることを、あわせて押さえておきたいところです。
投資信託に興味があるなら、つみたて投資枠。対象商品は?
新NISAといえば、投資信託に投資するものだと考えている人も多いのではないでしょうか。
つみたて投資枠で投資できるのは、長期の積立・分散投資に適した、金融庁の基準を満たす一定の投資信託やETFに限られます。具体的には、信託契約期間が無期限または20年以上であること、毎月分配型でないこと、販売手数料が0%(ノーロード)であることなどが条件です。裏を返せば、はじめての方でも選びやすいように、あらかじめ対象がしぼり込まれているといえます。
投資信託にはどのようなコストがかかるのか、購入する際には抑えておきましょう。
投資信託のコスト
- 購入時手数料:買うときに販売会社へ支払う費用
- 信託報酬:保有している間、日々かかる費用
- 信託財産留保額:売るときに支払う費用
このうち、つみたて投資枠の対象商品では、購入時手数料はノーロード(ゼロ)、信託報酬も一定の水準以下と定められています。
なお、特に確認したい信託報酬の平均は以下の通りです。
つみたて投資枠対象商品の信託報酬率の分布
つみたて投資枠の指定インデックス投信の信託報酬(税抜)の平均
- 投資先を国内とする指定インデックス投信の信託報酬:平均0.26%
- 投資先を国内外とする指定インデックス投信の信託報酬:平均は0.34%
ほったらかし運用だからこそ、費用は運用の成果に直接影響します。長く持つほど、その差は見過ごせないためはじめに確認しましょう。
月10万円を積み立てたら?シミュレーション結果を確認しよう
では、実際に積み立てると、どのくらいになるのでしょうか。金融庁が示している試算をみてみましょう。
つみたて投資枠で月10万円を15年間積み立てると、投資元本は1800万円です。運用利回り年3%(一律)だったと仮定した場合、15年の積み立てのあとにさらに15年間保有を続けると、資産は約3525万円になります。投資元本の約2.0倍です(※なお、手数料等は考慮していません)。
積立投資のシミュレーション
- 毎月の積立額:10万円(15年間)
- その後の保有期間:15年間(追加の積み立てはなし)
- 積立元本:1800万円
- 最終的な資産額:約3525万円(元本1800万円+利益約1725万円)
あくまで一定の利回りを仮定した試算であり、実際の運用成果は市場の動きによって変動します。値下がりして、元本を下回る可能性もあります。とはいえ、運用する期間が長いほど、利益がさらに利益を生む複利の効果は働きやすくなります。金額の大きさよりも、無理なく続けられるかどうかを重視して考えてみてはいかがでしょうか。
「老後資金2000万円」実はまったく足りていない?
「老後の生活資金は2000万円必要」とニュース等で聞いたことがある方もいることでしょう。
このようなニュースを見て、「少し足りないけれど、退職金もあるし何とかなるだろう」と思っていませんか?
元銀行員として、数多くの方の資産形成を現場で見てきたからこそ、お伝えしたいことがあります。それは「多くの方が思っている以上に、資産形成の必要性が高まっている」という現実です。
金融経済教育推進機構(J-FLEC)が発表した「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯)」の最新データ(2025年)を見てみましょう。
世代別貯蓄一覧表
【世帯主の年代別に見る金融資産保有額】
- 20歳代: 平均 525万円 / 中央値 125万円
- 30歳代: 平均 1,096万円 / 中央値 311万円
- 40歳代: 平均 1,486万円 / 中央値 500万円
- 50歳代: 平均 1,908万円 / 中央値 700万円
- 60歳代: 平均 2,683万円 / 中央値 1,400万円
- 70歳代: 平均 2,416万円 / 中央値 1,178万円
「50代世帯の半数が、700万円以下の貯蓄しか持っていない」という厳しい現実があります。
退職金や年金だけでゆとりある生活を送るのが難しい現代において、この「中央値の現実」に自分が近いと感じるなら、早急な対策が必要です。
今回ご紹介したシミュレーション結果をもとに、老後資産形成について考えてみてはいかがでしょうか。
参考資料
みずほ銀行出身。FP2級保有。確定拠出年金の講師として全国でセミナーに登壇。フィンテック企業広報を経て、現在はLIMOで官公庁データを基に、年金や資産運用、新NISA、iDeCo等の記事を執筆。
