「オルカンとS&P500、どちらに投資すべきか?」
人気のインデックスファンドをめぐるこの問いを、見聞きする機会が増えています。
筆者は銀行員時代に「どの投資信託を選べばいいか迷っている」というお客様と、数え切れないほど向き合ってきました。
お客様が銘柄選びで迷われたときは、必ず一緒に最新の「月次レポート(マンスリーレポート)」を開き、中身をじっくり見比べます。月次レポートは投資信託の健康診断のようなものだからです。
「迷うけれど、結局どっちの利回りがいいの?」
「いっそ半々で投資するのはアリ?」
そんな疑問を解決するために、この記事では2026年6月末時点の最新月次レポートをもとに、短期・中期・長期のトータルリターン(利回り)を徹底比較します。
ただし、ここで紹介する利回りは、あくまで「過去の平均値」です。どのタイミングで投資を始めるかによって、あなたが手にする利回りはガラリと変わります。
だからこそ、目先の数字だけに惑わされないよう、まずは「そもそものファンドの中身(投資対象や構造)」の違いから、一緒に確認していきましょう。
【オルカン・S&P500】2つのファンドの投資対象の違い
両ファンドは同じ「eMAXIS Slim」シリーズに属していますが、投資対象が根本的に異なります。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)=オルカン
MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み・円換算)に連動し、日本・先進国・新興国にわたる全世界の株式に投資します。2026年6月末の資産構成は以下の通りです。
- 先進国株式(除く日本):82.7%
- 新興国株式:12.2%
- 国内株式:5.1%
「全世界に分散」という言葉のイメージとは異なり、組入国1位はアメリカで全体の63.0%を占めます。日本(5.1%)、台湾(3.1%)、イギリス(3.0%)と続きますが、実質的に米国株の動向に大きく左右されるファンドといえます。
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
S&P500指数(配当込み・円換算)に連動し、米国主要企業約500社に投資します。資産のほぼ100%が米国株式で構成されており、米国市場の動きがそのままファンドの価格変動に直結します。
上位銘柄の顔ぶれは似ているが、組入比率が違う
両ファンドの上位銘柄は、NVIDIA・Apple・Microsoft・Amazon・Alphabetという顔ぶれで共通しています。大きな違いは各銘柄の比率です。
オルカンの組入上位銘柄(2026年6月末)
- NVIDIA CORP:4.4%
- APPLE INC:4.0%
- MICROSOFT CORP:2.5%
- AMAZON.COM INC:2.3%
- ALPHABET INC-CL A:2.0%
- TAIWAN SEMICONDUCTOR MANUFAC:1.8%
- BROADCOM INC:1.6%
- ALPHABET INC-CL C:1.6%
- MICRON TECHNOLOGY INC:1.3%
- META PLATFORMS INC-CLASS A:1.2%
S&P500の組入上位銘柄(2026年6月末)
- NVIDIA CORP:7.3%
- APPLE INC:6.4%
- MICROSOFT CORP:4.2%
- AMAZON.COM INC:3.6%
- ALPHABET INC-CL A:3.2%
- BROADCOM INC:2.7%
- ALPHABET INC-CL C:2.6%
- MICRON TECHNOLOGY INC:2.0%
- META PLATFORMS INC-CLASS A:1.9%
- TESLA INC:1.8%
S&P500はNVIDIAが7.3%、Appleが6.4%と上位銘柄への集中度が高めです。オルカンはそれぞれ4.4%・4.0%とやや分散されており、台湾のTSMCが入っているのも特徴のひとつです。
【オルカン・S&P500】トータルリターンを比較:最新データ(2026年6月末)
2026年6月30日時点の月次レポートをもとに、各期間のトータルリターンを比較します。
オルカン・S&P500 トータルリターン比較(2026年6月30日基準)
- 過去1カ月:オルカン +0.7% / S&P500 +0.3%
- 過去3カ月:オルカン +18.2% / S&P500 +19.4%
- 過去6カ月:オルカン +13.9% / S&P500 +12.3%
- 過去1年:オルカン +38.2% / S&P500 +36.5%
- 過去3年:オルカン +93.2% / S&P500 +95.9%
- 設定来:オルカン +280.2% / S&P500 +344.0%
設定来のトータルリターンは、S&P500(+344.0%)がオルカン(+280.2%)を約64ポイント上回っています。過去3年もS&P500がわずかに優勢です。一方、過去1年・過去6カ月・過去1カ月ではオルカンが上回る場面もあり、期間によって優劣が入れ替わっています。
年平均利回りに換算すると
オルカン・S&P500 年平均利回り比較(2026年6月30日基準)
- 過去1年の年平均利回り:オルカン 38.2% / S&P500 36.5%
- 過去3年の年平均利回り(概算):オルカン 約24.6% / S&P500 約25.1%
- 設定来の年平均利回り(概算):オルカン 約19.0%(約7年8カ月) / S&P500 約20.5%(約8年)
長期・中期で見るとS&P500がやや優勢、直近1年ではオルカンが上回るという構図です。
ただし、これはあくまで過去の実績をならした数字。「今後も同じペースで続く」という前提は持たない方がよいでしょう。
2026年3月には両ファンドともに1カ月で2000円以上の基準価額が下落する局面もありました。
【オルカン・S&P500】基準価額の変動要因を比較
月次レポートには、基準価額がどの要因でどれだけ動いたかを示す「変動要因」が掲載されています。2026年6月の内訳は以下の通りです。
オルカン 基準価額の変動要因
オルカン(+280円)
- 国内株式:+33円
- 先進国株式(除く日本):▲201円
- 新興国株式:+21円
- 為替要因:+429円
- その他(信託報酬等):▲2円
S&P500 基準価額の変動要因
S&P500(+139円)
- 株式要因:▲685円
- 為替要因:+825円
- その他(信託報酬等):▲1円
2026年6月は両ファンドとも株式(先進国・米国)はマイナスに転じましたが、円安の進行による為替要因がそれを補い、ともにプラスで着地しました。
S&P500は株式要因の落ち込みが大きかった(▲685円)ものの、為替のプラス寄与(+825円)で持ちこたえた形です。
設定来の変動要因を見ると、構造的な違いがより鮮明になります。
オルカン(設定来合計:+28,017円)
- 先進国株式(除く日本):+16,938円(全体の約60%)
- 為替要因:+7,438円(全体の約27%)
- 新興国株式:+2,390円(全体の約9%)
- 国内株式:+1,358円(全体の約5%)
S&P500(設定来合計:+34,399円)
- 株式要因:+24,940円(全体の約73%)
- 為替要因:+9,561円(全体の約28%)
S&P500は株式そのものの上昇が利益の大部分を占めるのに対し、オルカンは為替効果の比重が比較的大きい構造です。裏を返せば、円高に転じる局面では両ファンドともにリターンが圧縮されやすく、特に為替依存度の高い局面への注意が必要といえます。
【オルカン・S&P500】信託報酬を比較:コストはどちらが安い?
長期投資においてコストは「確定したマイナス」として毎年積み重なります。両ファンドの信託報酬(年率・税込)を確認しましょう。
- オルカン:年率0.05775%以内
- S&P500:年率0.09372%以内
100万円を1年間保有した場合の信託報酬の目安は、オルカンが約578円、S&P500が約937円です。
差額は約360円と小さく見えますが、10年・20年の長期保有では複利の影響も加わり、手元に残る利益の差として積み上がっていきます。
一般的なアクティブファンドの信託報酬が年率1〜2%程度であることと比べると、両ファンドとも圧倒的に低コストの設計です。
コストの差だけを見るならオルカンが有利ですが、設定来のトータルリターンはS&P500が大きく上回っている点も踏まえてバランスよく判断したいところです。
まとめ
2026年6月末時点のデータで比較すると、設定来・過去3年のトータルリターンはS&P500が優勢、過去1年・過去6カ月ではオルカンがわずかに上回るという結果でした。コストはオルカンの方が低く、分散の広さもオルカンが上です。
「どちらが正解か」を一言で言い切るのは難しいのですが、2つの視点でシンプルに整理できます。
- 米国の成長性に集中して賭けるならS&P500:設定来のリターンは大きく、信託報酬はやや高めですが、米国株市場を直接取り込む構造です
- 1本でなるべく分散したいならオルカン:コストが最安クラスで、新興国を含む全世界に分散できます。米国以外が台頭したときにも自動的に対応する設計になっています
ただし、両ファンドとも上位銘柄の顔ぶれが酷似しており、米国ハイテク株の動向に大きく左右される点では本質的に似ています。「分散効果」を過信せず、「下落局面でも売らずに持ち続けられるか」という自分のリスク許容度に合った選び方が、長期投資を続けるうえで何より大切ではないでしょうか。
【投資に関するご注意】
- 本記事は特定の金融商品の勧誘や売買の推奨を目的としたものではありません。
- 投資には元本を割り込むリスクが伴います。最終的な投資判断は、ご自身の責任において行われるようお願いいたします。
参考資料
三菱UFJ銀行・三井住友信託銀行で15年以上のキャリアを築き、自身も20年以上の投資経験を持つ。現在は株式会社モニクルリサーチが運営する『LIMO』でお金に関する記事を企画・執筆・監修中。
