70代夫婦世帯の貯蓄額データ(平均2416万円・中央値1178万円)と公的年金の受給分布を元記者が解説
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70代夫婦世帯の貯蓄額データ(平均2416万円・中央値1178万円)と公的年金の受給分布を元記者が解説

元・社会保障専門紙記者が解説。65歳以上無職世帯の家計収支と、年齢とともに増加する医療費負担の備え方

執筆者齊藤 慧編集者
06:09
70代夫婦世帯の貯蓄額データ(平均2416万円・中央値1178万円)と公的年金の受給分布を元記者が解説
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7月に入り、厳しい猛暑によるエアコンのフル稼働や、熱中症リスクなどの体調不良への警戒が高まる中、シニア世代にとって「日々の生活費」と「健康維持のための出費」のバランスに悩む季節がやってきました。

私が社会保障専門紙の記者として厚生労働省に出入りしていた頃、医療保険制度について調べているうちに気づいたことがあります。

それは、高齢期の家計がショートするトリガーは、日々の食費や光熱費の赤字ではなく、ある日突然やってくる、医療費や介護費といった突発的な数十万円の波を吸収できるかどうかにかかっているということです。

世間では「70代の平均貯蓄額は2000万円を超える」といった数字が報じられがちですが、実態とのズレを感じる方も多いはずです。

ここからは、70歳代のリアルな貯蓄額の中央値や公的年金の受給額分布、そして年齢とともに増加する医療費の推移を客観的なデータで紐解き、見えないリスクから手元の資産を安全に守り抜くための視点を提供します。

70歳代・二人以上世帯の貯蓄額、平均と中央値の実態

J-FLEC(金融経済教育推進機構)の「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」を基に、70歳代・二人以上世帯が保有する金融資産の状況をグラフとともに見ていきましょう。

※ここでの金融資産保有額には、預貯金のほかに株式、投資信託、生命保険などが含まれます。ただし、日常的に使う普通預金の残高は対象外です。

70歳代の貯蓄額(二人以上世帯)

70歳代の貯蓄額(二人以上世帯)
70歳代の貯蓄額(二人以上世帯)

70歳代・二人以上世帯の平均貯蓄額は2416万円です。しかし、この数値は一部の富裕層によって引き上げられているため、多くの世帯の実感とは異なる可能性があります。

より実態に近いとされる中央値は1178万円で、多くの世帯の貯蓄額がこの水準に近いことが推測されます。

世帯ごとの詳しい貯蓄額の分布は以下の通りです。

  • 金融資産非保有:10.9%
  • 100万円未満:4.5%
  • 100~200万円未満:5.1%
  • 200~300万円未満:3.7%
  • 300~400万円未満:3.9%
  • 400~500万円未満:2.9%
  • 500~700万円未満:6.4%
  • 700~1000万円未満:6.7%
  • 1000~1500万円未満:11.1%
  • 1500~2000万円未満:6.7%
  • 2000~3000万円未満:12.3%
  • 3000万円以上:25.2%
  • 無回答:0.6%

70歳代・二人以上世帯のうち、金融資産を全く保有していない、いわゆる「貯蓄ゼロ」の世帯は10.9%を占めています。その一方で、3000万円以上の資産を持つ世帯も25.2%存在し、資産状況の二極化が進んでいる様子がうかがえます。

分布を見ると、100万円未満が4.5%、100万円から300万円未満の層も合計で8.8%と、貯蓄が少ない世帯も一定数いることがわかります。対照的に、1000万円以上の資産を持つ世帯は合計で55.3%にのぼり、まとまった資産を築いている世帯も多いです。

このように、貯蓄額は退職金の有無、現役時代の収入、相続、健康状態など様々な要因で大きく変わります。公的年金の受給額も加入状況によって個人差があるため、貯蓄が少ない世帯では年金収入だけで生活を維持するのが厳しい場合もあるでしょう。

老後の生活を安定させるためには、各世帯の状況に合わせた生活設計が不可欠です。例えば、健康なうちはパートタイムで働いて収入を補ったり、資産運用による収入を考えたりと、早めに準備を始めることが将来の安心につながるかもしれません。

厚生年金の受給額はいくら?平均月額と受給者層の内訳

厚生労働省が公表している「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、厚生年金の平均的な支給月額を確認してみましょう。

厚生年金「平均年金月額&月額階級別受給権者」

厚生年金の被保険者はいくつかの種類に分かれていますが、ここでは民間企業などに勤務していた方が受け取る「厚生年金保険(第1号)」の支給月額についてご紹介します。

※この記事で紹介する厚生年金保険(第1号)の支給月額には、基礎年金である国民年金の部分も含まれています。

厚生年金の平均受給月額:男女差も確認

  • 〈全体〉平均年金月額:15万289円
  • 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
  • 〈女性〉平均年金月額:11万1413円

男女別の平均額を見ると、男性が約17万円であるのに対し、女性は約11万1000円と、大きな差があることがわかります。

では、実際にどのくらいの金額を受け取っている人が多いのでしょうか。月額階級別の受給権者数は以下の通りです。

受給額の分布:月額階級別の受給権者数

  • ~1万円:4万3399人
  • 1万円以上~2万円未満:1万4137人
  • 2万円以上~3万円未満:3万5397人
  • 3万円以上~4万円未満:6万8210人
  • 4万円以上~5万円未満:7万6692人
  • 5万円以上~6万円未満:10万8447人
  • 6万円以上~7万円未満:31万5106人
  • 7万円以上~8万円未満:57万8950人
  • 8万円以上~9万円未満:80万2179人
  • 9万円以上~10万円未満:101万1457人
  • 10万円以上~11万円未満:111万2828人
  • 11万円以上~12万円未満:107万1485人
  • 12万円以上~13万円未満:97万9155人
  • 13万円以上~14万円未満:92万3506人
  • 14万円以上~15万円未満:92万9264人
  • 15万円以上~16万円未満:96万5035人
  • 16万円以上~17万円未満:100万1322人
  • 17万円以上~18万円未満:103万1951人
  • 18万円以上~19万円未満:102万6888人
  • 19万円以上~20万円未満:96万2615人
  • 20万円以上~21万円未満:85万3591人
  • 21万円以上~22万円未満:70万4633人
  • 22万円以上~23万円未満:52万3958人
  • 23万円以上~24万円未満:35万4人
  • 24万円以上~25万円未満:23万211人
  • 25万円以上~26万円未満:15万796人
  • 26万円以上~27万円未満:9万4667人
  • 27万円以上~28万円未満:5万5083人
  • 28万円以上~29万円未満:3万289人
  • 29万円以上~30万円未満:1万5158人
  • 30万円以上~:1万9283人

月額階級別の受給権者数を見ると、最も人数が多いのは「10万円以上~11万円未満」の層で、約111万人にのぼります。

その次に「11万円以上~12万円未満」が約107万人、「17万円以上~18万円未満」が約103万人と続いています。

国民年金の受給額はいくら?平均月額とボリュームゾーン

次に、自営業者や専業主婦(主夫)など、厚生年金の加入期間がなかった方が受け取る国民年金(老齢基礎年金)の月額について見ていきましょう。

国民年金「平均年金月額&月額階級別受給権者」

国民年金の平均受給月額

  • 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
  • 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万7582円

受給額の分布:月額階級別の受給権者数

  • 1万円未満:5万1828人
  • 1万円以上~2万円未満:21万3583人
  • 2万円以上~3万円未満:68万4559人
  • 3万円以上~4万円未満:206万1539人
  • 4万円以上~5万円未満:388万83人
  • 5万円以上~6万円未満:641万228人
  • 6万円以上~7万円未満:1715万5059人
  • 7万円以上~:299万7738人

国民年金の受給額で最も人数が多いボリュームゾーンは「6万円以上7万円未満」で、受給権者全体の約半数を占めています。一方で、月額5万円未満の層を合計すると全体の約21%となり、約2割に達します。

また、月額7万円以上を受け取っている人は約300万人で、全体の約9%です。

このように国民年金の受給額は、満額に近い層が中心ではあるものの、保険料の納付期間や免除期間などに応じて、受給額には幅広く個人差があることがわかります。

65歳以上・夫婦のみの無職世帯における1カ月の生活費

総務省統計局の「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」から、「65歳以上の夫婦のみで暮らす無職世帯」の標準的な家計収支を見ていきましょう。

65歳以上の生活費

収入の内訳:月額25万4395円

■うち社会保障給付(主に年金):22万8614円

支出の内訳:月額29万6829円

■うち消費支出:26万3979円

  • 食料:7万8964円
  • 住居:1万7739円
  • 光熱・水道:2万3540円
  • 家具・家事用品:1万1237円
  • 被服及び履物:5354円
  • 保健医療:1万7941円
  • 交通・通信:3万1325円
  • 教育:0円
  • 教養娯楽:2万6538円
  • その他の消費支出:5万1341円
    • うち諸雑費:2万2047円
    • うち交際費:2万3257円
    • うち仕送り金:1135円

■うち非消費支出:3万2850円

  • 直接税:1万2547円
  • 社会保険料:2万296円

月々の家計収支バランス

  • ひと月の赤字:4万2434円
  • エンゲル係数(※消費支出に占める食料費の割合):29.9%
  • 平均消費性向(※可処分所得に対する消費支出の割合):119.2%

このモデル世帯の毎月の収入は25万4395円で、その大半を公的年金などの社会保障給付が占めています。

一方、支出の合計は月々29万6829円です。その内訳は、食費や光熱費といった生活に直接かかる消費支出が26万3979円、税金や社会保険料などの非消費支出が3万2850円となっています。

結果として、毎月の家計は4万2434円の赤字となり、この不足分は貯蓄などを取り崩して補填する必要があります。年間に換算すると、約51万円を取り崩している計算になります。

シニア世代は現役時代と比べて安定した収入を得る機会が限られるため、このような慢性的な赤字は、長期的に見ると貯蓄を大きく減らす要因になりかねません。

現在の貯蓄額を把握した上で家計収支を見直したり、健康状態に応じて短時間の仕事をしたりと、できる範囲で対策を講じることが、老後の暮らしを安定させる鍵となるでしょう。

年齢とともに増加する医療費:シニア世代の自己負担

年齢階級別1人当たり医療費(令和5年度、医療保険制度分)

年齢階級別1人当たり医療費(令和5年度、医療保険制度分)
年齢階級別1人当たり医療費(令和5年度、医療保険制度分)

シニア世代になると、年齢を重ねるにつれて医療費の負担が増加する傾向にあります。

厚生労働省の「年齢階級別1人当たり医療費(令和5年度、医療保険制度分)」から、60歳以上の各年齢層における1人当たりの年間医療費と、そのうち「入院+食事・生活療養」が占める割合を見てみましょう。

60歳以上における1人当たり医療費の推移

  • 60~64歳:39万7000円 「入院+食事・生活療養」の割合:37%
  • 65~69歳:49万5000円 「入院+食事・生活療養」の割合:40%
  • 70~74歳:63万円 「入院+食事・生活療養」の割合:43%
  • 75~79歳:78万1000円 「入院+食事・生活療養」の割合:45%
  • 80~84歳:93万7000円 「入院+食事・生活療養」の割合:51%
  • 85~89歳:108万7000円 「入院+食事・生活療養」の割合:59%
  • 90~94歳:120万2000円 「入院+食事・生活療養」の割合:65%
  • 95~99歳:127万8000円 「入院+食事・生活療養」の割合:69%
  • 100歳以上:124万2000円 「入院+食事・生活療養」の割合:69%

年間の医療費は、60歳代前半の39万7000円から、90歳代後半には127万8000円へと約3.2倍に増加しています。

この増加の大きな要因となっているのが、「入院+食事・生活療養」にかかる費用です。

70歳代までは通院治療が中心ですが、80歳を過ぎると医療費の半分以上を「入院+食事・生活療養」が占めるようになり、90歳代後半以降ではその割合が約7割(69%)に達します。

国の高額療養費制度を利用しても、毎月の上限額までの自己負担は発生します。それに加えて、入院中の食事代や差額ベッド代(個室料など)は全額自己負担となる点にも注意が必要です。

【元記者の視点】統計上の「月4万円の赤字」には表れない局地的なリスク

家計調査が示す「毎月約4万円の赤字」という数字は、あくまでも平穏な日常が12ヶ月続いたと仮定した場合の、マクロな「平均像」に過ぎません。

社会保障政策の取材を通して見えてきたのは、実際の家計を圧迫するのはこの均された4万円ではなく、ある月に突発的に発生する「局地的な支出の急増」です。例えば、配偶者の予期せぬ入院、自宅の水回りの緊急修繕、あるいは介護サービス導入時の初期費用など、統計上は薄められてしまう数十万円の固まった出費こそが、シニアの資金計画を狂わせる要因となりえます。

だからこそ、手元の貯蓄(中央値1178万円)は、単なる「生活費の月々の補填用」として漫然と切り崩すのではなく、「万が一の医療・介護の防波堤」としての枠をあらかじめ意識して守るっておくことが重要になります。

まとめ:健康保険証を手元に置き、高額療養費の「上限額」をメモする

70代の家計管理において何より大切なのは、不確定な未来を恐れることではなく、起きうるリスクに対して公的な制度という「盾」を準備しておくことです。

この記事を読み終えた今週末、ご自身と配偶者の「健康保険証」や「お薬手帳」、そして「医療保険の証券」を一つのクリアファイルにまとめてください。

そして、スマートフォンやパソコンを使って、ご自身の所得区分に応じた『高額療養費制度の月額自己負担上限額』を調べ、その金額を付箋に書いてクリアファイルの表紙に貼っておきましょう。

「もし入院しても、ひと月の支払いは最大でもこの金額で収まる」という事実を視覚化すること。この具体的な行動こそが、漠然とした医療費への不安を打ち消し、大切な老後資金を冷静に守り抜くための確実な第一歩となります。

参考資料

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齊藤 慧編集者株式会社モニクルリサーチ

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