なぜ有名企業が? 脱落候補に共通する「3つの構造」
では、具体的にどのような企業がTOPIXから外れてしまう可能性があるのでしょうか。泉田氏が試算した脱落候補リストを見ると、誰もが知る有名企業が数多く含まれています。
これらの企業に共通しているのは、業績の良し悪しではなく、「固定株が多く、浮動株が少ない」という株式の保有構造です。大きく分けて3つのパターンが存在します。
1つ目は「創業家による保有」です。
小売業のブックオフグループHD(浮動株時価総額 約205億円)やハードオフコーポレーション(同 約216億円)、美容系のI-ne(同 約86億円)やヤーマン(同 約201億円)、日用品のエステー(同 約187億円)や大幸薬品(同 約83億円)などがこれに該当します。創業者が強いリーダーシップを発揮して成長してきた企業ほど、創業家が多くの株式を保有し続ける傾向があり、結果として市場に出回る浮動株が少なくなってしまいます。
2つ目は「親会社による保有」です。
外食チェーンのミニストップ(浮動株時価総額 約241億円)はイオンが親会社です。また、ネット・通信業のGMOインターネット(同 約139億円)は、親会社であるGMOインターネットグループが株式の約9割を保有しており、市場に出回る浮動株はわずか1割(浮動株比率0.10)しかありません。旅行業のKNT-CTホールディングス(近畿日本ツーリスト、同 約173億円)も近鉄グループが約54%を保有しています。
ネット・通信・サービスの脱落候補(GMOインターネットは親会社が約9割を保有し浮動株はわずか・試算)
3つ目は「企業間の持ち合い」です。
メディア・エンタメ業のWOWOW(浮動株時価総額 約113億円)は、フジテレビやTBS、日本テレビなどの放送局が株式を持ち合っており、約45%が固定株となっています。朝日放送グループHD(同 約182億円)も、朝日新聞やテレビ朝日との固定株が多くを占めています。
小売業の脱落候補と浮動株時価総額(創業家保有で浮動株が少ない・試算)
これらの企業がTOPIXに残るためには、浮動株時価総額を引き上げるしかありません。泉田氏はその対策について次のように語ります。
「持ち合ってるものとかオーナーが持ってるものをやっぱり放出して、浮動株の時価総額を上げるっていうのがまず1個ありますよね」
さらに、日々の取引を活発にするための努力も欠かせません。
「投資家の注目を浴びるように企業もIRで、投資家が興味あるであろう要素っていうのはちっちゃな事業でもちゃんとアピールしていくとか、説明会で丁寧に説明するとか、そういったことが必要になってくる」
泉田氏の視点:インデックス除外は「バリュー投資」の機会か
ここまで見てきたように、TOPIXの脱落候補に挙がっているのは、決して「悪い会社」ではありません。むしろ、私たちの生活に密着した優良企業が多く含まれています。
例えば、メーカーの島精機製作所(浮動株時価総額 約209億円)について、泉田氏は「いい会社ですよ、編み物の機械作ってる」と高く評価しています。また、オーナー企業についても「強いリーダーシップを発揮できるんで、オーナーがしっかり抑えてる時の方がパフォーマンス良かったりする」と、その経営上の強みを認めています。
しかし、ルールである以上、基準を満たせなければTOPIXからは除外されてしまいます。インデックス(指数)から外れるということは、TOPIXに連動する運用を行っている巨大なインデックスファンドが、機械的にその企業の株式を売却することを意味します。これにより、一時的に株価が下落するリスクがあります。
ただ、泉田氏はこの状況をネガティブに捉えるだけでなく、投資家にとっての「チャンス」になり得ると指摘します。
「いい会社も結構いっぱい含まれてて、個人的に思うのは、これで外れると株価下がる、ここから売ってくる人がいる。外れちゃうんだけど会社としてはいいので、バリューしっかり見極めて投資するってことも可能なのかなと思いました」
つまり、業績や財務体質に問題がない優良企業が、単に「TOPIXから外れる」という需給の要因だけで売られて株価が下がった場合、それは企業本来の価値(バリュー)に対して株価が割安になる瞬間だと言えます。そこを狙って投資する「バリュー投資」の戦略が有効になるかもしれないのです。
まとめ
今回のTOPIX大改革は、海外機関投資家を呼び込むために「流動性」を強く意識した内容となっています。その結果、創業家や親会社がしっかりと株式を保有している日本の伝統的な優良企業が、指数から外れてしまう可能性が浮上しています。
投資家としては、自分が保有している銘柄や興味のある企業が、この「浮動株時価総額」の基準を満たしているかを確認しておくことが重要です。また、脱落候補となっている企業が、今後どのような資本政策(株式の放出やIRの強化など)を打ち出してくるのかにも注目が集まります。
最後にもう一度お伝えしますが、本記事で紹介した脱落候補リストや試算の目安は「イズミダイズム調べ」であり、JPXが公表する確定リストではありません。基準日である2026年8月末に向けて、各企業がどのような対策を講じるのか、市場の動向を冷静に見守る必要があります。
参考資料
- JPX総研「TOPIX等の見直しの概要」(2026年5月)
- JPX総研「東証指数算出要領(TOPIX編)」(2025年12月10日版)
- 各社 有価証券報告書(浮動株比率・大株主の確認に使用)
- YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
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免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
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「イズミダイズム」はモニクルグループが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命出身の元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点から経済ニュースの裏側や資産形成のトピックを論理的に解説します。
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。元機関投資家。フィデリティ投信や日本生命で日本株式や米国株式の証券アナリストやファンドマネージャーとして勤務。東京科学大学大学院非常勤講師。
