この記事はここがポイント
- 日本製紙は通期業績予想を「未定」に修正、熊本地震による八代工場被災が要因
- 米国連結子会社の貯蔵タンク倒壊事故も重なり、国内外の複合的な災害影響
- 第1四半期は増収も、海外不振で営業利益が約半減し、最終赤字に転落
日本製紙(3863)は5日、2027年3月期通期(2026年4月1日〜2027年3月31日)の連結業績予想を撤回し、「未定」へと修正することを発表しました。
あわせて発表された2027年3月期・第1四半期(2026年4月〜6月)決算では、増収となったものの海外事業の苦戦により大幅な営業減益を計上。さらに直近で発生した「令和8年熊本地震」による主力工場の被災などが重なり、通期見通しの合理的な算定が困難な状況となっています。
第1四半期決算:増収も海外不振で営業利益は半減、最終赤字へ
5日発表された、2027年3月期第1四半期の連結実績の主要数値は以下の通りです。
- 売上高:3,145億円(前年同期比 7.5%増)
- 営業利益:29億円(同 47.0%減)
- 経常利益:25億円(同 54.8%減)
- 四半期純利益:▲2億円(前年同期は19億円の黒字)
売上高については、連結子会社の増加や円安に伴う為替換算影響などが追い風となり、前年同期比7.5%増の3,145億円で着地しました。
一方で損益面は苦戦を強いられています。国内事業では価格修正やコストダウンが奏功して増益を確保したものの、海外子会社(オーストラリアのOpal社や米NDP社)の減益が大きく響き 、営業利益はほぼ半減となる29億円に落ち込みました。投資有価証券の売却益などを計上したものの、最終損益は2億円の赤字転落となっています。
減益は生活関連事業の海外子会社が主因
減益の内訳をみると、生活関連事業の海外子会社が主因であることが分かります。
Opal(豪州)が前年同期比17億円、NDP(米国)が23億円それぞれ利益を押し下げ、海外子会社全体では41億円の減益となりました。
一方、国内事業は原燃料価格上昇(うち為替影響だけで19億円)を受けながらも、コストダウンや価格修正効果により紙・板紙事業が8億円、生活関連事業が14億円それぞれ増益し、国内合計では24億円の増益を確保しています。
つまり今回の営業利益47%減は、国内の収益改善を海外子会社の落ち込みが上回った結果であり、直近で報じられた熊本地震(7月28日)やNDP工場のタンク倒壊事故(5月26日)による影響とは別の、通常の事業要因によるものです。
なお、これら2つの災害・事故については会社自身が「現時点で合理的な算定が困難」として通期予想を未定としており、影響額は今後の公表を待つ必要があります。
業績予想修正の背景の一つは「令和8年熊本地震」による八代工場被災
日本製紙は当初、2027年3月期通期の業績予想として、売上高1兆2,200億円、営業利益250億円、経常利益180億円、純利益100億円を見込んでいました 。しかし今回の発表で、これらの数値はすべて「未定」へと修正されています。
修正の最大の要因の一つとなっているのが、2026年7月28日に発生した「令和8年熊本地震」による八代工場の被災です。
熊本県八代市に位置する日本製紙の八代工場は、紙・板紙生産を担う拠点の一つです。同社は現在、地震による八代工場の被災状況や生産設備への影響について確認を進めていますが、現時点でグループ業績に与えるインパクトを合理的に算定することが困難であるため、業績予想の修正に踏み切りました。
さらに、2026年5月26日に米国連結子会社「日本ダイナウェーブ・パッケージング(NDP社)」の工場で発生した貯蔵タンクの倒壊事故も影響しています。国内外の拠点工場で相次いだ突発的な災害・事故の影響を現段階で金額試算することは不可能と判断し、予想の取り下げに至ったとしています。
今後の見通しと注目点
第1四半期の実績自体は概ね計画に沿った進捗を見せていたものの、7月末に発生した熊本地震によって下期の前提条件は大きく一変しました。
今後の市場の注目点は以下の2点に絞られます。
八代工場の被災状況と復旧ロードマップ:操業再開の目途や、損害額および保険金補填の見込みなどについての具体的な開示
海外事業の構造改革:豪Opal社で進められている人員削減や低収益事業(製袋事業など)からの撤退といった黒字化施策の進捗
日本製紙は「今後、合理的な予想が可能になった時点で速やかに公表する」としており、八代工場の復旧見通しや業績への具体的な影響額が明らかになるタイミングが注視されます。
参考資料
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フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
