鉄鋼本業より商社・エンジが稼ぐ利益構造
社名が示すとおり本業は鉄鋼だが、利益の出方は一致しない。2026年3月期のセグメント別営業利益を見ると、売上の6割を占める鉄鋼事業の営業利益は380億円で、利益率は1.4%にとどまる。これに対し、売上構成では4分の1ほどの商社事業が402億円を稼ぎ、金額では鉄鋼本体を上回った。
利益率の差はさらに際立つ。鉄鋼事業の1.4%に対し、商社事業は3.3%、エンジニアリング事業は4.1%と、規模の小さい事業ほど採算が高い。売上の1割強にすぎないエンジニアリングは、前期比で営業利益を2割以上伸ばしている。鉄鋼メーカーという括りだけで見ていると、実際にどこが利益を生んでいるのかを見落としかねない。本体の市況変動を、商社やエンジニアリングが和らげる構図が読み取れる。
会社が見込む当期利益の倍増予想
足元の弱さと対照的なのが、会社の来期見通しだ。会社は2027年3月期について、売上収益4兆8,000億円(+5.7%)、当期利益1,500億円(+113.8%)と、当期利益で倍増を超える回復を見込む。減益で沈んだ2026年3月期に反して、大きく反発するシナリオを描いていることになる。
配当は80円の据え置き予想で、増益を見込む局面でも、まずはキャッシュを事業に使う姿勢がうかがえる。株価が7月に急反発したことは、この回復期待や相場全体の流れを映した可能性がある。倍増の見通しは鉄鋼の市況や数量がどこまで戻るかにかかっており、その確度は次の四半期の進捗で確かめていくことになる。
筆者コメント
本業が最も薄利という事実と、市場評価が純資産の半値という事実。この二つを並べると、何が見えてくるだろうか。
鉄鋼本体の採算が細るあいだも、商社とエンジニアリングは金額でも利益率でも鉄鋼事業を上回って稼いできた。減益の谷でも黒字と高めの還元を保てたのは、この収益構造が効いているからだろう。会社が翌期に大きな回復を見込めるのも、周辺事業が土台を支えているぶん、本体の反発が利益に乗りやすいという読みがあるとみられる。
だとすれば、市場が1倍割れの評価を解くきっかけは、周辺事業ではなく本体の鉄鋼にあるだろう。稼ぐ主役が周辺へ移ったからこそ、逆に本体の採算が戻るかどうかに視線が集まる。7月の株価反発をその前触れと見るか否か、分かれ目は本体である鉄鋼事業の採算の戻りにあるとみている。
参考資料
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オリックスなどの国内金融機関出身。日本株アナリストおよび財務アドバイザーとして決算分析や資金調達を主導。「日経CNBC」出演などメディアを通じた相場解説の実績も豊富。企業財務に精通し、現在はモニクルリサーチで金融ニュースの深掘り記事を発信。
