満期まで保有した場合の受取利息シミュレーション
利子所得には20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%+住民税5%)の税金がかかります。
これは個人向け国債・特定公社債(上場している社債など)のいずれも同じ税率です。
実際には、この税金は利払日ごとに1回ずつ源泉徴収され、1円未満は都度切り捨てられます。
そこで本シミュレーションでも、半年ごとの利息にその都度20.315%の源泉徴収税額(1円未満切り捨て)を差し引き、5年間・10回分を積み上げる形で税引後の受取額を計算しています。
個人向け国債(固定5年・100万円)
- 半年ごとの利息:100万円×1.95%÷2=9,750円
- 1回あたりの源泉徴収税額(20.315%・1円未満切り捨て):1,980円
- 1回あたりの税引後受取額:7,770円(これが5年間で10回)
- 税引前利息合計:97,500円
- 税引後利息合計:77,700円
- 償還時の受取合計(元本100万円+税引後利息):1,077,700円
A社債(50万円)
- 半年ごとの利息:50万円×2.448%÷2=6,120円
- 1回あたりの源泉徴収税額(20.315%・1円未満切り捨て):1,243円
- 1回あたりの税引後受取額:4,877円(これが5年間で10回)
- 税引前利息合計:61,200円
- 税引後利息合計:48,770円
- 償還時の受取合計(元本50万円+税引後利息):548,770円
B社債(50万円)
- 半年ごとの利息:6,722円・6,723円が交互(年間13,445円=50万円×2.689%)
- 1回あたりの源泉徴収税額(20.315%・1円未満切り捨て):いずれも1,365円
- 1回あたりの税引後受取額:5,357円・5,358円が交互(これが5年間で10回)
- 税引前利息合計:67,225円
- 税引後利息合計:53,575円
- 償還時の受取合計(元本50万円+税引後利息):553,575円
社債(A+B)の合計と、国債との比較
ここまでの数字を、同じ100万円という土俵で比べてみましょう。
A社債・B社債をあわせた100万円分の社債と、100万円分の個人向け国債では、次のような差が生まれます。
個人向け国債100万円分
- 税引前利息合計:97,500円
- 税引後利息合計:77,700円
- 税引後の実質利回り(単利・年率換算):約1.55%
社債(A+B)100万円分
- 税引前利息合計:128,425円
- 税引後利息合計:102,345円
- 税引後の実質利回り(単利・年率換算):約2.05%
同じ100万円を5年間預けた場合、社債(A+B)は個人向け国債より税引後で24,645円多い利息を受け取れる計算です。
5年間で約2万5,000円(年間あたり約5,000円)という差をどう見るかは意見が分かれるところでしょう。
「社債のリスクを取ることでこれだけ増えるなら魅力」と感じるか、「企業の倒産リスクや、途中売却しづらい流動性の縛りを引き受ける対価としては物足りない」と見るか。
この「差額」の正体は、国債にはないリスク(信用リスクや流動性リスク)を投資家が引き受けていることに対する市場からの「手数料(上乗せ金利)」にほかなりません。
ここでサンプルに挙げた「A社債」は、国債対比での上乗せスプレッドが「+50bp(0.5%)」と、ひと昔前では考えられなかったほど、厚みがあります。
ただ、ベース金利の上昇で、個人向け国債の利率そのものが魅力的な水準まで上がってきているため、社債との利回り差を感じにくいと捉える個人投資家の方もいらっしゃるかもしれませんね。
シミュレーション結果
次に、その中身を確認していきます。
利率だけで比較できない理由
社債の利率が国債より高いのは、発行体の信用リスクを反映しているためです。 国は元利金の支払いを国の信用力で保証しており、発行から1年が経過すれば、直近2回分の利息相当額(中途換金調整額)を差し引いた金額で国が買い取ってくれる中途換金制度もあります。
これに対し、社債には発行体による買い取り保証はなく、満期前に現金化したい場合は市場で売却するほかありません。
売却時の価格は金利動向や発行体の信用力の変化によって変動し、額面を下回る「元本割れ」となる可能性もあります。
また、A社債・B社債はいずれも「シングルA」クラス以上の格付ですが、格付機関や発行体によって信用力の評価の中身は異なります。
格付はあくまで格付時点での評価であり、将来の債務不履行(デフォルト)リスクをゼロに保証するものではない点にも留意が必要です。
一方で、個人投資家ならではの強みもあります。
時価評価を厳格に行う機関投資家と違い、個人投資家は満期まで保有し続けさえすれば、途中の市場価格の変動を気にする必要がありません。
発行体がデフォルトしない限り、満期を迎えれば額面どおりに償還されるためです。
今回のように「最初から満期保有を前提にシミュレーションする」という考え方自体が、個人投資家の持つアドバンテージを生かした戦略ともいえるでしょう。
まとめ
100万円を5年間、個人向け国債(固定5年・1.95%)で保有すると、税引後の受取利息は77,700円、償還時の受取合計は1,077,700円となります。
一方、A社債・B社債にそれぞれ50万円ずつ振り分けた場合、税引後の受取利息は合計102,345円、償還時の受取合計は1,102,345円となり、国債より24,645円多い計算になりました。
ただし、この差は社債特有の信用リスクや流動性リスクの対価でもあります。
半導体株の急変動が示したように、相場は思わぬタイミングで大きく揺れ動くものです。
だからこそ、利回りの高さだけで飛びつくのではなく、発行体の格付や財務状況、中途換金のしやすさまで含めて検討し、自身のリスク許容度に合った組み合わせを選ぶことが、安定感のあるポートフォリオづくりの第一歩になるはずです。
国債・地方債・社債など、8月以降に発行される新発債にも引き続き注目していきたいところです。
なお、本シミュレーションは提示いただいた条件(利率・購入額・利払日・償還日)をもとにした試算であり、実際の商品性や税務の取り扱いは金融機関の資料でご確認ください。
参考
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
- 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
- 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
- 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
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フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
