この記事はここがポイント
- 厚生年金を月30万円超で受給する人は全体の約0.12%、約800人に1人の希少な存在。
- 大企業で高収入を得て厚生年金に長年加入し続けた元役員クラスなどが高額年金受給者層。
- 令和6年度の厚生年金平均月額15万289円から、公的年金だけで老後生活費をまかなうのは困難な状況。
SNSでは「億り人」「配当金だけで生活」といった投資成功者の話題が目に入る一方、年金の世界にも"高額受給者"は存在します。
筆者は以前、自治体職員として多くのシニア世代の方々のお話を伺う機会がありました。
その中で強く実感したのは、年金の受給額は現役時代の働き方によって驚くほど個人差が大きいということ、そして「将来自分がいくらもらえるか」を早い段階で把握し、早くから準備をしていくことの大切さです。
「年金だけで月30万円」ならば、それだけで一般的な現役世代の手取りに近い水準です。
実際に、厚生年金を月30万円超もらっている人はいるのでしょうか。もしいるとしたら、どんな人がその金額を受け取っているのでしょうか。
今回は、厚生労働省の最新データをもとに、厚生年金を月30万円超で受給している人の割合について解説します。
老後に向けた資産準備は、預貯金やNISA、iDeCo、保険など選択肢が豊富で「正解」は人それぞれです。最適解は家族構成や資産、ライフプラン等で異なります。銀行員時代、私はお客さまとこれらの情報を整理し、伴走してきました。まずは年金額という「現実」を把握すること。その上で、自分に合った手段を組み合わせるオーダーメイドの計画づくりを、今から始めていきましょう。
厚生年金「月30万円超」の受給者はどれくらいいるのか
厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、厚生年金の受給額分布を確認しましょう。
「厚生年金」の平均年金月額
厚生年金:年金月額階級別の受給権者数
- 〈全体〉平均年金月額:15万289円
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
※国民年金部分を含む
厚生年金「月30万円超」の受給権者数
階級別の受給権者数のうち、月額30万円以上のレンジは以下のとおりです。
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
厚生年金の総受給権者数1608万5696人に対して、月30万円以上を受け取っているのは1万9283人。全体の約0.12%で、およそ800人に1人という希少さです。
参考までに、月20万円台後半(25万円以上〜30万円未満)まで広げても受給権者は約34.6万人、割合にして約2.15%にとどまります。月30万円超は、まさに厚生年金受給者のピラミッドの頂点に位置する層といえるでしょう。
該当するのは、大企業で長期間高収入を得ながら厚生年金に加入し続けた元役員クラスや、士業を法人化して厚生年金に長期加入した方など、限られたケースです。標準報酬月額の上限(65万円)に長年張り付いていたような人でも、ようやくこの水準に到達するイメージです。
2026年度の年金額、《6月15日支給分から増額改定された》
公的年金の支給日は「偶数月の15日(※)」で、2026年度の改定額が反映されたのは6月15日支給分(4月・5月分)からでした。次回の支給日は8月14日(金)です。
厚生労働省によると、2026年度の年金額の例は次のとおり。4年度連続で増額となっております。
※15日が土日祝日の場合、直前の平日に前倒しされます。
令和8年度の年金額の例
- 国民年金(老齢基礎年金):7万608円(1人分※1)
- 厚生年金:23万7279円(夫婦2人分※2)
※1 昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額7万408円
※2 平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準
「標準的な夫婦世帯」の合算年金でも月23万7279円。ひとりで月30万円超という受給額がいかに突出した水準かがわかります。
年金の基本、国民年金と厚生年金は「2階建て構造」
ここで改めて、公的年金の基本的な仕組みをおさらいしておきましょう。厚生年金の受給額がなぜこれほど個人差が出るのか、その背景を理解するうえでも大切なポイントです。
公的年金は、基礎部分となる「国民年金」と、上乗せ部分にあたる「厚生年金」から成り立つ2階建て構造です。
厚生年金と国民年金の仕組み
国民年金は原則として、国内在住の20歳以上60歳未満の全ての人が加入対象で、年金のベースとなります。国民年金保険料(※1)は全員一律です。
厚生年金は企業や官公庁などで働く人たちが、国民年金に上乗せして加入する年金で、毎月の給与や賞与に応じた年金保険料(※2)を納めます。標準報酬月額には上限(65万円)があるため、いくら高収入でも保険料は青天井では増えません。この上限が、老後の年金額の"天井"にも影響します。
※1 国民年金保険料:2026年度は月額1万7920円
※2 保険料額は標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される
まとめにかえて
厚生年金で「月30万円超」を受け取る人は全体の約0.12%。
年金だけで悠々自適な暮らしを送れる層は、想像以上に少数派です。
ほとんどの人にとって、公的年金だけで老後の生活費をまかなうのは難しい前提で老後を設計する必要があります。
まずは「ねんきん定期便」で自分の見込み額を把握し、不足分をiDeCoやNISA、就労延長で補うプランを、現役のうちから組み立てていきましょう。
参考資料
地方公務員・保険代理店出身。証券外務員二種保有。自治体で国民健康保険の賦課や高額療養費、退職に伴う年金切り替え等の実務に従事。複雑な社会保障制度に精通し、現在はLIMO編集部で年金・貯蓄・退職金等の金融情報を発信。
三菱UFJ銀行・三井住友信託銀行で15年以上のキャリアを築き、自身も20年以上の投資経験を持つ。現在は株式会社モニクルリサーチが運営する『LIMO』でお金に関する記事を企画・執筆・監修中。
