この記事はここがポイント
- 厚生年金は月10万円未満が20万円以上を上回り、約8割が20万円未満という現実。
- 65歳以上の約4人に1人が認知症か軽度認知障害(MCI)に該当する現状。
- 終活は認知度が高いが70代以上で実行は約5割。早期準備の重要性。
証券会社に勤務していた時代、私は多くのお客様から「年金だけで老後は暮らせるのだろうか」という切実なご相談を数多く受けてきました。
実は、厚生年金(国民年金を含む)の受給額分布を詳しく見ると、そうした不安を裏付けるような意外な事実が浮かび上がります。生活費の目安となる「20万円以上」を受給する人よりも、実は「10万円未満」の人の方が多いのが実情なのです。
本記事では、こうした厚生年金の厳しい受給実態を紐解きながら、長寿化によって高まる認知症リスクや、いま注目を集める「終活」のリアルについて詳しく解説します。
※この記事で紹介するのは、会社員など民間の事業所で雇用されていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」の、国民年金の月額部分を含む年金額です。
厚生年金の平均月額「10万円未満」と「20万円以上」多いのはどっち?
厚生年金(国民年金を含む)の受給額分布を詳しく見ると、意外な事実が浮かび上がります。生活費の目安となる「20万円以上」を受給する人よりも、実は「10万円未満」の人の方が多いのが実情です。
※この記事で紹介するのは、会社員など民間の事業所で雇用されていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」の、国民年金の月額部分を含む年金額です。
厚生年金・国民年金の平均年金月額(2024年度末現在)
受給額分布の対比(厚生年金・男女全体)
- 月額10万円未満:19.0%(約5.3人に1人)
- 月額20万円以上:18.8%(約5.4人に1人)
わずかな差ではありますが、高額受給者の割合を「10万円に届かない層」が上回っています。国民年金のみの受給者を含めて全体を俯瞰すれば、この「10万円未満」の割合はさらに圧倒的なものになると推測されます。
平均額が15万円台であっても、実際には受給者間の格差が大きく、個人単位で見れば、8割以上の人が「月20万円未満」の受給額となっており、自助努力での備えが重要視される背景となっています。
年金生活に入ってから「思ったより少なかった」と慌てないよう、現役時代から自身の受給予定額をシビアに見積もっておく必要があるでしょう。公的年金だけに頼り切るのではなく、早い段階からiDeCoやNISAなどを活用した「自分年金」作りを検討することが、老後のゆとりを左右する鍵となります。
長寿化と隣り合わせのリスク、シニア「4人に1人」が直面する《認知機能の壁》
厚生労働省が公表する「令和6年簡易生命表の概況」によると、最新の平均寿命は男性が81.09年、女性が87.13年。前年と比べ男性は横ばい、女性はわずかに低下したものの、長期的には大きく伸びています。
平均寿命の年次推移
長い老後を豊かに過ごすには、資産形成に加え、公的年金や医療・介護リスクへの理解が重要です。長寿化の中で避けて通れないのが「認知症」への備えです。
認知症の現状、「シニアの約4人に1人」認知機能に何かしらのサインが現れている状態
65歳以上の高齢者における認知症の現状(令和4年(2022年)時点の推計値)
65歳以上のシニア層3603万人を対象にした令和4年度(2022年度)の推計によると、65歳以上の高齢者における現状は以下の通りです。
- 認知症: 約443万人(12.3%)
- 軽度認知障害(MCI): 約559万人(15.5%)
認知症やその前段階とされるMCI(軽度認知障害)を含めると合計で約1002万人、およそ4人に1人が認知機能に関して何らかのサポートや注意が必要な状況にあると推計されています。認知症は今や身近な問題であり、MCI段階での対応が生活の質を左右します。
こうした背景から注目されているのが「終活」です。
終活とエンディングノート、70代以上で実行率が下がる意外な理由
【グラフ】終活に対するイメージ(全体・男女別・年代別)
長寿化と認知症リスクを見据え、注目されているのが「終活」です。NPO法人ら・し・さ(終活アドバイザー協会)の「第2回終活意識全国調査報告書【確定版】(2025年7月)」によると、「終活」という言葉の認知度は96.2%と高い一方、「エンディングノート」は認知されていても実行が進んでいません。特に高齢になるほど「まだ早い」という心理や体力面の問題から記入が進みにくい傾向があります。
エンディングノートの意識と実行率
- 認知度:60歳代以上で9割を超える。
- 所有率:70歳代以上が24.2%と最も高いが、50歳代以下は1桁台。
- 実行率(持っている人のうち):20歳代が9割以上書いているのに対し、70歳代以上は約5割にとどまる。
高齢になるにつれて、書くべき項目が多岐にわたることや、「まだ早い」という心理的な先送り、あるいは健康上の理由などから筆が進みにくくなってしまったりする可能性があるのかもしれません。資産や医療・介護の希望を反映するためにも、気力・体力が充実しているうちから準備を始めることが重要です。
【調査概要】NPO法人ら・し・さ(終活アドバイザー協会)第2回終活意識全国調査報告書【確定版】(2025年7月)調査目的 :高齢社会における終活意識の実態を明らかにし、個人が豊かで安心した人生後半期を送るための支援策や啓発活動に役立てる調査対象 :20~89歳の男女調査地域 :全国調査方法 :インターネットリサーチ調査時期 :2024年12月4日(水)~12月6日(金)回答者数 :2,052名割付方法 :人口構成比割付(令和2年国勢調査の性年代別人口比率に基づく)調査委託先 :株式会社マクロミル
まとめにかえて
私が証券会社で勤務していた頃も、「老後資金をどう準備すればよいかわからない」といった相談を数多く受けていました。
定年退職を迎えてから漠然とした不安に駆られ、焦って不慣れな運用に手を出して失敗してしまうケースも決して少なくありませんでした。老後資金について不安や悩みを抱えている方は、時間が味方をしてくれる早いうちに、一度専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
本記事では、厚生年金「10万円未満・20万円以上」の受給割合や分布について解説しました。ご自身の年金額に対して不安を感じている方は、少なくありません。特に自営業やフリーランスなど国民年金のみを受給する方は、厚生年金を受け取ることができないため、公的年金だけに頼らず、自分自身で計画的に老後資金を準備していく必要があります。
【監修者コメント】
老後の生活設計においては、年金見込額を正しく把握して不足分を補う「資金の計画」と、認知症などの万が一に備える「終活の準備」の両輪が不可欠です。気力や体力が充実している現役時代から「自分年金づくり」や「エンディングノートの作成」に少しずつ着手することが、安心できる老後への最短ルートとなります。
参考資料
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PROFILE
一種外務員資格(証券外務員一種)及び3級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP3級)を保有。日本大学国際関係学部卒業後、東洋証券株式会社に入社。国内外株式、債券、投資信託、保険商品の販売を通じ、主に個人顧客向け資産運用コンサルティング業務に従事。特に中国株式、投資信託の提案を得意とし、豊富な金融知識を活かした顧客ニーズに沿う提案が強み。現在は個人向け資産運用コンサルティングのサポート業務を行う。また、くらしとお金の経済メディア「LIMO」でも執筆を行う。(2026年7月11日更新)。
元マネースクール講師、現役FP(CFP®・1級FP技能士)でJ-FLEC認定アドバイザー。保険から年金、資産運用まで幅広い知見を持ち、「お金の先生」としてLIMO&ファイナンス編集部にてわかりやすく信頼できる記事をお届けします。
PROFILE
FP資格「CFP®認定者」及び「1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)」を保有。
早稲田大学卒業後、日本生命保険相互会社に入社し、生命保険・損害保険の実務および社内教育部署にて教材制作・研修企画に長年従事。独立後はファイナンシャルプランナーとして公正中立な立場から家計相談・ライフプラン設計などの相談実績を持つ。また、マネースクール講師としてNISA、iDeCoを含む資産運用、社会保障など幅広い分野で「お金の先生」として活動。特に公的年金制度の仕組み、老齢年金、障害年金、遺族年金といった厚生労働省管轄の社会保障分野に深い知見を持つ。
現在、株式会社モニクルリサーチのLIMO&ファイナンス編集部にて、厚生労働省、金融庁、総務省、デジタル庁、財務省(国税庁)といった官公庁の一次情報をもとに、信頼性の高い記事の企画・執筆・編集・監修を担当。J-FLEC(金融経済教育推進機構)認定アドバイザーとして、企業や学校への金融教育の普及にも尽力している。
