この記事はここがポイント
- 2026年7月、株価急落はポートフォリオ見直しと債券による分散投資の好機
- 三菱UFJFG、みずほFGの10年物劣後債は3%超の利率に、高利回りを得られる銘柄も出てきた
- 社債は格付けで信用力判断、年限別の需給関係などを欠かさずチェックを
2026年7月17日、半導体関連銘柄が軒並み大幅安となる場面がありました。
もっとも、週明けの21日には同関連銘柄に反発の動きも見られており、目先の株価だけを追えば「一時的な波乱だった」で片づけられてしまうかもしれません。
しかし、本当に注目すべきは下落そのものではなく、わずか数営業日のうちにこれだけ大きく値が振れたという事実、つまり相場のボラティリティの高さそのものではないでしょうか。
こうした値動きを日々のニュースで目にし、株式市場の変動の荒さをあらためて実感された個人投資家の方も少なくないはずです。
相場が好調に推移している間は忘れられがちですが、株式はもともと、短期間のうちに大きく上下へ振れる性質を持つ資産です。
だからこそ、こうした局面は「悪材料」として捉えるだけでなく、ご自身のポートフォリオ全体の設計をあらためて見直す、良いきっかけとして活用していただきたいと思います。
具体的には、値動きが特定の資産に偏らないよう、性質の異なる複数の資産を組み合わせることで、リスクを分散させる工夫が有効です。
そのための選択肢の一つとして、今回あらためてご紹介したいのが「債券」です。
債券にも種類がある?今回は「社債」に注目
債券と一口に言っても、国が発行する「国債」、地方自治体が発行する「地方債」、そして一般の事業会社が発行する「社債」など、発行体によって種類が分かれます。
このなかで、個人向けとして比較的利回りが高めに設定されることが多いのが社債です。
社債は電力会社が発行する「電力債」が代表格ですが、電力債は主に機関投資家向けが中心です。
個人向けでは、資金調達ニーズの大きいソフトバンクグループがたびたび発行することで知られるほか、民鉄やJR、ノンバンク、メガバンクなども個人向け社債を発行しています。
そもそも社債とは何か
社債とは、一般の事業会社が資金調達のために発行する債券です。
国や地方自治体ではなく、企業が発行体となる点が国債・地方債との違いです。
投資家は社債を購入することで発行企業にお金を貸し、その対価として定期的な利息(表面利率に基づくクーポン)を受け取り、満期(償還日)には額面金額が払い戻される仕組みです。
株式と異なり、原則としてあらかじめ利率と満期が決まっているため、収益の見通しを立てやすいことが特徴です。
もっとも、これは「元本や利払いが保証されている」という意味ではなく、あくまで発行体の信用力に依存する点には注意が必要です。
リスクを見極めるカギ「格付け」
社債投資を検討するうえで参考になるのが、外部の格付会社が発行体の信用力を分析して付与する「格付」です。
格付とは、発行体が持つ元利金の支払い能力や財務の健全性など、安全性・総合力をアルファベットとプラスマイナスの記号でランク付けしたものです。
日本には格付投資情報センター(R&I)と日本格付研究所(JCR)という2つの主要な格付会社があります。
両社の格付は同じ符号体系で表され、上から順に以下のようにランク付けされます。
さらに基本の格付けに「+(プラス)」「-(マイナス)」の細かい評価が加わります。
たとえば「A+」なら「シングルAプラス」、「A-」なら「シングルAマイナス」、「A」なら「シングルAフラット」と呼びます。
- AAA(最上位)
- AA
- A
- BBB
- BB
- B
- CCC
- CC
- D(デフォルト=債務不履行)
このうち、BBB(トリプルB)以上が「投資適格」とされる水準です。
BB以下は「投機的格付」に分類され、相対的にリスクが高いとされます。
なるべくリスクを抑えて安全性の高い社債に投資したい場合は、シングルAクラスやAA(ダブルエー)クラスといった高い格付を付与された銘柄を中心に検討するのも一つの考え方です。
元本割れのリスクも念頭に
社債は株式に比べて値動きが穏やかとはいえ、元本が保証された商品ではありません。
発行体の信用力が低下したり、経営状況が悪化したりすれば、格付が引き下げられ、市場での評価が下がることがあります。
最悪の場合、発行体が経営破綻すれば、元本の一部または全部が戻ってこない可能性もゼロではありません。
また、国が発行体となる国債と比べて、社債は信用力の面で相対的にリスクが高いとされる点にも注意が必要です。
国債であっても市場価格は日々変動しますが、社債の場合は発行体である個々の企業の業績や財務状況の変化がより直接的に価格に反映されやすく、満期を待たずに途中で売却した場合、購入時よりも低い価格でしか売れず、元本割れとなる可能性があります。
満期まで保有すれば額面での償還が期待できるとはいえ、途中売却の可能性がある場合は、この点をあらかじめ理解しておくことが大切です。
機関投資家と個人投資家、「評価損」の違い
社債への投資で理解しておきたいのが「評価損」の考え方です。
社債は通常、取得時の単価が100円という前提で発行されます。
しかし、すでに発行されている社債(既発債)を市場で売買する場合、金利動向や発行体の信用力の変化によって時価が変動し、98円や99円といった形で「評価損」が生じることがあります(自身の証券口座にログインし、保有している既発債をチェックすると、株式などと同様に日々の評価額が表示されます)。
これは個人投資家であっても機関投資家であっても、時価評価という意味では共通して起こり得ることです。
ここで両者の違いが出てくるのが、会計上の扱いです。
機関投資家は保有する債券を時価で評価し、決算などのタイミングで評価損を計上する必要がある場合があります。
一方、個人投資家の多くは、満期まで保有し続ける前提であれば、途中の時価変動を気にする必要は基本的にありません。
満期まで保有すれば、発行体がデフォルトしない限り、額面100円で償還されるためです。
つまり、個人投資家にとっての社債投資のメリットの一つは、「満期まで保有する」という選択肢を取ることで、途中の評価損に一喜一憂せず済む点にあるといえます。
もちろん、これは途中で売却しない場合の話であり、満期前に売却すれば、その時点の時価(評価損益)で取引が確定します。
7月は10銘柄・6145億円が供給
2026年7月1日から21日までの間に、個人向け社債は10銘柄、合計6145億円が市場に供給されました。
年限や格付け、表面利率もさまざまで、ランナップは豊富です。
なお、ここで紹介する7月発行の銘柄は、そのほとんどがすでに完売となっています。
今回は「どのような条件の社債が、どのような考え方で発行されているか」を把握するための参考情報として捉えていただき、実際の購入を検討する際は、8月以降に新たに発行される銘柄を判断材料としてください。
7月17日ローンチ
- プレミアグループ 第2回無担保社債 格付け:A-(JCR)/年限:3年/発行額:20億円/表面利率:2.536%
- クレディセゾン 第121回無担保社債 格付け:A+(R&I)/AA-(JCR)/年限:5年/発行額:100億円/表面利率:2.448%
- 三菱UFJFG 第42回無担保社債(劣後特約付) 格付け:AA-(R&I/JCR)/年限:10年/発行額:1,010億円/表面利率:3.404%
- 三菱UFJFG 第43回期限前償還条項付(劣後特約付) 格付け:AA-(R&I/JCR)/年限:10NC5(実質5年)/発行額:1,260億円/表面利率:2.548%
7月15日ローンチ
- SBIホールディングス 第48回無担保社債 格付け:A-(R&I)/年限:5年/発行額:1,700億円/表面利率:2.689%
7月9日ローンチ
- 大東建託 第2回無担保社債 格付け:A(R&I)/年限:3年/発行額:100億円/表面利率:2.09%
- 近鉄グループHD 第135回無担保社債 格付け:BBB+(R&I)/A-(JCR)/年限:5年/発行額:50億円/表面利率:2.521%
7月8日ローンチ
- 四国電力 第337回無担保社債 格付け:A+(R&I)/年限:3年/発行額:100億円/表面利率:1.93%
7月2日ローンチ
- みずほFG 第34回無担保社債(劣後特約付) 格付け:AA-(R&I/JCR)/年限:10年/発行額:735億円/表面利率:3.429%
- みずほFG 第35回期限前償還条項付(劣後特約付) 格付け:AA-(R&I/JCR)/年限:10NC5(実質5年)/発行額:1,070億円/表面利率:2.607%
7月に登場した個人向け社債一覧
特に目を引くのが、三菱UFJフィナンシャル・グループやみずほフィナンシャルグループが発行した「劣後特約付」社債です。
いずれも10年債は表面利率が3%を超えており、メガバンクという知名度の高い発行体でありながら、比較的高い利回りが得られる点が特徴です。
ただし劣後債は、発行体が経営破綻した場合の弁済順位が一般の社債より低いという特性があるため、利回りが高い分だけリスクも通常の社債より高くなる点は理解しておく必要があります。
なお、この2社の劣後債はいずれも「10年債」と「期限前償還条項付(実質5年)」の2本立てで起債されています。
後述するように、足元の金利環境では長期ゾーンの需給が緩みやすく、そのぶん相対的に高い利回りが付きやすい地合いにあります。
三菱UFJFGやみずほFGの10年債が3%超という水準になっているのは、劣後債のリスクプレミアムが上乗せされていることに加え、こうした長期ゾーン特有の需給環境が影響した結果ともいえます。
一方、実質5年で運用される期限前償還条項付債は2%台半ばにとどまっており、短中期ゾーンの需給が相対的にタイトであることも読み取れます。
金利上昇への警戒感と、短中期ゾーンの需給引き締まり
社債の利回り水準を見るうえで無視できないのが、足元のマクロ環境です。
高市政権が掲げる積極財政路線への懸念から、国内金利には上昇圧力がかかりやすい地合いが続いています。
こうしたなかで、長期(10年)ゾーンは、金利上昇局面での価格変動リスク(デュレーションリスク)が大きいことから、機関投資家が運用姿勢を慎重にしており、需給が緩みやすい状況にあります。
需給が緩むと、発行体は投資家に買ってもらうためにより高い利回りを提示する必要が生じるため、長期ゾーンの社債は相対的に利回りが上がりやすくなります。
三菱UFJFGやみずほFGの10年劣後債が3%を超える水準となっている背景には、こうした需給環境も影響していると考えられます。
一方、短中期(3~5年)ゾーンは、長期に比べてデュレーションリスクが抑えられることから、機関投資家向けのマーケットでも需給が引き締まりやすい状況にあります。
個人向け社債は、もともと短中期物が発行の中心です。
長期ゾーンの需給が緩み、金利上昇への警戒感が意識されやすい局面だからこそ、相対的に需給が引き締まっている短中期の社債は、現在のマーケット環境という観点からも検討しやすい選択肢の一つといえるでしょう。
初めて個人向け社債を発行する企業も
機関投資家の慎重姿勢を受けて、発行体(企業)側にとっても、機関投資家に代わる、自社債の安定的かつスムーズな消化(販売)を支えてくれる新たな投資家層を開拓することは、非常に重要な課題となっています。
このような背景から、従来は機関投資家向けの大口発行しか行っていなかった企業が、資金流動性の確保やファン層(個人株主のような存在)の拡大を目指し、初めて個人向けの社債発行に踏み切る動きも見せています。
7月のラインナップでは、大東建託債とプレミアグループ債が初の個人向け社債でした。
まとめ
2026年7月の半導体株急落は、株式一辺倒のポートフォリオが持つリスクをあらためて浮き彫りにしました。
社債は、格付けや年限、利率を比較しながら選べる選択肢の多い資産であり、メガバンクの劣後債のように3%超の利回りが期待できる銘柄も登場しています。
もっとも、高市政権の積極財政路線を背景とした金利上昇への警戒感から、長期ゾーンは機関投資家の需給が緩みやすく、その分利回りが上がりやすい一方、短中期ゾーンは相対的に需給が引き締まっている点は意識しておきたいところです。
個人向け社債はもともと短中期物が中心であるだけに、現在のマーケット環境という観点からも比較的検討しやすい局面にあるといえるでしょう。
一方で、劣後債特有のリスクや、発行体の信用力に応じた元本割れの可能性など、押さえておくべきポイントも複数あります。
格付けの意味や評価損の仕組み、そして長期・短中期それぞれのゾーンが置かれた需給環境を理解したうえで、自身のリスク許容度に合った銘柄を選ぶことが、安定感のあるポートフォリオ形成への第一歩となるでしょう。
参考
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
- 本記事上の情報に起因、また関連して生じた損害や損失に関しては一切の責任を負いません。
- 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
- 株主優待の内容や条件などは変更される可能性があるため、必ず公式サイトでご確認ください。
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フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
PROFILE
立教大学卒業後、海外専門の旅行会社に就職し、その後旅行業界専門誌の記者に転身。企業決算の記事などを手掛けるうちに金融マーケットに興味を持つようになり、株式や債券の発行市場をカバーする金融専門誌の記者に転職。債券市場の動向や市況について、10年以上にわたって数多くの記事を機関投資家に向けて日経QUICKやブルームバーグ等へ執筆した。その後、株式会社フィスコでアナリストが執筆する企業調査レポートの編集を手掛けるとともに、決算などIR情報の発信業務に携わる。
現在は株式会社モニクルリサーチが運営する『くらしとお金の経済メディア~LIMO(リーモ)~』のLIMO編集部に所属し、LIMOでも記事を執筆している。
