この記事はここがポイント
- 令和8年度後期高齢者医療保険料は全国平均月額7989円、令和6・7年度比578円増の見込み。
- 令和8年8月から高額療養費制度に年間上限額を新設、長期治療の経済負担を軽減。
- 70歳以上外来特例は令和8年8月から見直され、2割負担一般区分は月額2万2000円・年間21万6000円に上限引き上げ。
梅雨が明け、本格的な夏の訪れを感じる7月中旬となりました。ファイナンシャルプランナーとして多くの方の家計相談を受ける中で、特にシニア世代のお客様から「将来の医療費がどう変わるのか不安」というお声をよく伺います。
令和8年度からは、75歳以上の方が対象の「後期高齢者医療保険料」や、医療費の自己負担を抑える「高額療養費制度」にいくつかの変更が予定されています。本記事では、厚生労働省の公表資料を基に、これらの制度変更が家計に与える影響と、知っておきたいポイントを分かりやすく解説します。
シニア世代の負担は増える?後期高齢者医療保険料「全国平均は月7989円」の見込み
「後期高齢者医療制度の令和8・9年度の保険料率について」
令和8年度・9年度における後期高齢者医療保険料(医療分)は、1人あたりの全国平均で月額7989円になる見通しです。
この金額は、令和6年度・7年度の平均額7411円と比較して、578円(7.8%)の増加となります。
保険料が上がる2つの背景:「医療費の増加」と「後期高齢者の負担割合引き上げ」
今回の保険料改定では、医療給付費の増加などを背景とした保険料(医療分)の引き上げがあります。
それに加えて、新たに導入される「子ども・子育て支援金」制度による上乗せも予定されています。
保険料が上昇する主な要因として、1人あたりの医療給付費が約4.89%増えること、そして医療給付費に占める後期高齢者の負担割合が13.27%に引き上げられることが挙げられます。
一方で、過去の剰余金の活用や財政安定化基金からの交付金などを通じて、保険料の急激な上昇を抑制する措置も講じられています。
高額療養費制度とは?70歳以上の通院負担を軽減する「外来特例」の仕組みを解説
「高額療養費制度」とは、1カ月間の医療費の窓口負担額が定められた上限を超えた際に、その超過分が後から払い戻されることで自己負担を軽減する仕組みです。
「高額療養費制度 70歳以上・年収約370万円~770万円の場合(3割負担)」
具体的にどの程度負担が軽くなるのか、70歳以上で年収が約370万円から770万円(3割負担)の方を例に見ていきましょう。
仮に1カ月にかかった医療費の総額が100万円だったとします。
- 自己負担の上限額:8万100円 + (医療費100万円 - 26万7000円) × 1% = 8万7430円 ※自己負担の上限額や計算式は、所得区分(年収など)によって細かく設定されています。ここでは「年収約370万円~約770万円(3割負担)」のケースを例としています。
- 本来の窓口負担(3割):医療費100万円の3割にあたる30万円の支払いが必要です。
- 高額療養費制度の適用後:実際の自己負担額は8万7430円に抑えられます。
差額の21万2570円は「高額療養費」として払い戻されるため、一時的に窓口で30万円を支払ったとしても、最終的な自己負担は8万7430円まで軽減されることになります。
70歳以上が対象の「外来特例」とはどのような制度か
加えて、70歳以上の方を対象に、日々の外来診療にかかる窓口負担を特別に軽減する「外来特例」という制度が設けられています。
「70歳以上の一般・低所得者の自己負担限度額(現行)」
現行制度において、一般的な所得の方(窓口負担2割)の場合、1カ月の外来での自己負担上限額は1万8000円です。
さらに年間の上限額も14万4000円に設定されています。
このように月ごとと年ごとの上限が設けられていることで、持病などで定期的な通院が必要な方でも、家計への負担を抑えながら安心して治療を継続できる仕組みになっています。
令和8年8月から高額療養費制度が見直しへ。変更される2つの重要ポイント
令和8年8月より、医療費全体の増加などを考慮し、この制度を将来にわたって持続可能なものにするため、負担能力に応じた見直しが実施されます。
今回の改定の大きな特徴は、一部の方で月々の負担が増える一方で、長期にわたる治療の経済的負担を軽減する「年間での上限額(セーフティネット)」が新たに設けられる点です。
ポイント1:新たに設けられる「高額療養費の年間上限」
「高額療養費の年間上限の新設」
これまでの外来特例とは別に、入院費なども含めた高額療養費制度の全体に、新しい「年間の自己負担上限額」が設定されます。
■長引く治療を受ける方のための仕組み
従来の制度は「1カ月ごと」の上限額が基本でした。
そのため、月々の上限額には達しないものの、治療が数カ月にわたると自己負担額が積み重なり、家計を圧迫するケースがありました。
新しい制度は、こうした長期療養者の経済的な負担を軽減することを目的としています。
■上限に達した後は支払いが不要に
月々の自己負担額の合計が、この新設される「年間上限額」に達した場合、その年の残りの期間については、窓口での医療費の支払いが原則として不要になります。
ポイント2:「70歳以上の外来特例」における自己負担上限額の変更点
「高額療養費の見直しについて」
前述の通り、制度全体に「年間上限」という新たなセーフティネットが設けられる一方で、日々の通院を支える「70歳以上の外来特例」に関しては、所得区分に応じて上限額が次のように見直されます。
- 窓口負担2割の一般区分の方: 月額上限が2万2000円、年間上限が21万6000円に引き上げられます。
- 住民税非課税の区分の方: 月額上限は1万1000円に引き上げられます。ただし、毎月上限額に達する方の年間負担が急増しないよう、新たに「年間上限9万6000円」が設定されます。
- 非課税区分で所得が特に低い方: 負担増に配慮し、現行の月額上限8000円が据え置かれます。
一部の区分では上限額が引き上げられますが、長期的な治療が必要な方や所得の低い方への配慮も組み込まれています。
これにより、将来にわたって生活を守るセーフティネットとしての機能が維持されることになります。
まとめにかえて
この記事では、厚生労働省などが公表した資料に基づき、令和8年度から実施される医療保険料の改定や高額療養費制度の見直しについてご説明しました。
保険料や外来特例の上限額が引き上げられると聞くと、不安に感じる方もいるかもしれません。
確かに月々の負担が増える側面はありますが、同時に「医療費全体の年間上限」という新しいセーフティネットが創設されます。
これにより、長期にわたる治療が必要になった場合でも、年間の自己負担額には上限が設けられるため、過度に心配する必要はないでしょう。
また、2026年4月からは「子ども・子育て支援金」の負担も始まる予定です。
この機会に、ご自身の家計全体のバランスを改めて確認してみるのもよいかもしれません。
公的な制度を正しく理解することが、将来の生活を守る上で重要になります。
まずは健康を第一に、これからの変化に対して少しずつ準備を進めていきましょう。
参考資料
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日本生命出身で生命保険・損害保険の実務に長年従事。CFP®・FP1級を保有。現在はLIMO編集部にて官公庁の一次情報を基にした信頼性の高い記事を執筆・監修。J-FLEC認定アドバイザーとしても活動。
PROFILE
FP資格「CFP®認定者」及び「1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)」を保有。
早稲田大学卒業後、日本生命保険相互会社に入社し、生命保険・損害保険の実務および社内教育部署にて教材制作・研修企画に長年従事。独立後はファイナンシャルプランナーとして公正中立な立場から家計相談・ライフプラン設計などの相談実績を持つ。また、マネースクール講師としてNISA、iDeCoを含む資産運用、社会保障など幅広い分野で「お金の先生」として活動。特に公的年金制度の仕組み、老齢年金、障害年金、遺族年金といった厚生労働省管轄の社会保障分野に深い知見を持つ。
現在、株式会社モニクルリサーチのLIMO編集部にて、厚生労働省、金融庁、総務省、デジタル庁、財務省(国税庁)といった官公庁の一次情報をもとに、信頼性の高い記事の企画・執筆・編集・監修を担当。J-FLEC(金融経済教育推進機構)認定アドバイザーとして、企業や学校への金融教育の普及にも尽力している。
