70歳代夫婦「貯蓄・年金・生活費」の平均額はいくら?【みんなの平均】老後20年間「日常生活費の補填だけ」で約1018万円必要に
Mehaniq/shutterstock.com
執筆者齊藤 慧編集者
監修者宮野 茉莉子LIMO&ファイナンス編集部 副編集長
15:09
70歳代夫婦「貯蓄・年金・生活費」の平均額はいくら?【みんなの平均】老後20年間「日常生活費の補填だけ」で約1018万円必要に
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この記事はここがポイント

  • 65歳以上無職夫婦の家計は月4万2434円の赤字で、貯蓄取り崩しが続く状況。
  • 70歳代夫婦の貯蓄中央値は1178万円、厚生年金平均月額は15万289円の実情。
  • J-FLEC調査で約3割の60・70歳代が年金のみでは生活が厳しいと回答。

定年退職後の再雇用や嘱託勤務などの継続雇用期間を完全に終え、本格的に「公的年金の受給と手元の貯蓄の取り崩しだけ」で日々の生活を営むフェーズへ移行する人が多くなる70歳代。

現役時代のような仕事のストレスや忙しさから解放され、夫婦の生活リズムがようやく穏やかに定着してくる一方で、お金の面では現役時代とは異なったストレスが生まれやすい時期でもあります。

それは、決まった額の年金が振り込まれながらも、物価高や日々の支出によって、銀行口座の残高が昔のような回復を見せることなく「一方通行で少しずつ減っていく感覚」に直面する戸惑いです。

「私たちの家の貯金額は、いまどきの70代夫婦の世間一般と比べてどれくらいの位置にあるのだろうか」「みんなは月いくらの年金で、どれくらいの生活費を使って暮らしているのか」─。親しい友人や家族同士であっても語られることが少ないからこそ、そんな不安や疑問を胸の奥に抱えている方もいるでしょう。

ここでは、70歳代・二人以上世帯の貯蓄事情(平均額と中央値)をはじめ、厚生年金・国民年金のリアルな受給額分布、65歳以上の無職夫婦世帯が直面する1カ月の生活費と家計収支、そして「なぜ多くのシニアが年金だけでは厳しいと感じるのか」を、元記者が解説していきます。

本記事は、筆者が厚生労働省や総務省など、官公庁が公表する公式資料を確認の上、執筆・検証しています。

70歳代・二人以上世帯の貯蓄額はいくらか?みんなの平均と中央値

J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」の「70歳代・二人以上世帯の金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)」をグラフを交えて確認していきます。

※金融資産保有額には、預貯金以外に株式や投資信託、生命保険なども含まれます。また、日常的な出し入れ・引落しに備えている普通預金残高は含まれません。

70歳代の貯蓄額(二人以上世帯)

70歳代の貯蓄額(二人以上世帯)
出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」をもとにLIMO編集部作成

「70歳代・二人以上世帯」の平均貯蓄額は2416万円ですが、この数字は一部の富裕層によって押し上げられており、実際の生活水準とは乖離している可能性があります。

より実態に近いとされる中央値は1178万円であり、多くの世帯の貯蓄額がこの水準に集中していることがうかがえます。

70歳代・二人以上世帯の中で、金融資産を保有していない「貯蓄0円」の世帯は全体の10.9%を占めています。一方で、3000万円以上の貯蓄を持つ世帯も25.2%存在しており、世帯間の資産状況には大きな差があることがわかります。

その他の分布を見ると、100万円未満が4.5%、100~200万円未満が5.1%、200~300万円未満が3.7%と、貯蓄が少ない世帯も一定数存在します。一方で、1000~1500万円未満が11.1%、1500~2000万円未満が6.7%、2000~3000万円未満が12.3%と、まとまった資産を保有する世帯も見られます。

このように、貯蓄額は退職金や収入履歴、相続、健康状態などによって大きく異なり、公的年金の受給額も現役時代の加入状況により個人差があります。貯蓄が少ない世帯にとっては、年金収入だけで生活を維持するのが難しいケースもあるでしょう。

老後の安定には、世帯の状況に応じた生活設計が欠かせません。たとえば、健康なうちはパートなどで収入を得たり、不動産や投資による副収入を検討したりと、早めの準備が安心につながります。

厚生年金と国民年金の平均月額はいくら?

厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、厚生年金の平均年金月額を確認しましょう。

厚生年金「平均年金月額&月額階級別受給権者」
出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

厚生年金の被保険者は第1号~第4号に区分されていますが、ここでは民間企業などに勤めていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」(以下、記事内では「厚生年金」と表記)の年金月額を紹介します。

※記事内で紹介する厚生年金保険(第1号)の年金月額には国民年金の月額部分も含まれています。

厚生年金の平均受給月額

  • 〈全体〉平均年金月額:15万289円
  • 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
  • 〈女性〉平均年金月額:11万1413円

厚生年金の全体の平均月額は15万289円です。男女別で見ると、男性は約17万円、女性は約11万円と、5万円以上の差があるのが現状です。

月額階級別の受給権者数を見ると、一番人数が多い「ボリュームゾーン」は、「10万円以上~11万円未満」の層で111万2828人です。

国民年金の平均受給月額

厚生年金の加入期間がなかった人が受け取る、国民年金(老齢基礎年金)の月額について見ていきます。

国民年金「平均年金月額&月額階級別受給権者」
出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

国民年金の平均受給月額について

  • 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
  • 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万7582円

「厚生年金の男性平均月額を受け取る夫」と「国民年金の女性平均月額を受け取る妻」の夫婦世帯の場合、二人分の年金受給額は月額22万7549円となります。

65歳以上・無職夫婦世帯の老後生活費はいくら?赤字は月4万円以上にもなる

総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」から、「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」の標準的な家計収支を見ていきます。

65歳以上の生活費
出所:総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」

収入の内訳:月額25万4395円

■うち社会保障給付(主に年金):22万8614円

支出の内訳:月額29万6829円

■うち消費支出:26万3979円

■うち非消費支出:3万2850円

月々の家計収支

  • ひと月の赤字:4万2434円

この世帯の毎月の収入は25万4395円で、その多くを公的年金などの社会保障給付が占めています。

一方、毎月の支出は29万6829円。内訳を見てみると、食費や住居費、光熱費など日常的な生活にかかる消費支出が26万3979円、税金や社会保険料などの非消費支出が3万2850円です。

その結果、月々の家計は4万2434円の赤字となっており、不足分は貯蓄を取り崩して補う必要があります。

齊藤 慧
執筆者齊藤 慧編集者株式会社モニクルリサーチ

【元記者の視点】貯蓄中央値「1100万円」を削り尽くす、毎月4万円の赤字と「長寿」の数学的現実

本記事ので触れた70歳代の貯蓄中央値「約1100万円台」という数字と、第5章の「シニアが年金だけでは生活が厳しいと回答している」というアンケート結果を照らし合わせたとき、そこに一種の疑問を持つ方がいるかもしれません。「1000万円以上の貯金があるのに、なぜそれほど厳しいと嘆くのか」と。

社会保障の統計データやマクロな家計実態を取材してきた記者の視点から言えば、このシニア層が抱える「ゆとりのなさ」や危機感は、決して思い過ごしや過剰な心配性ではなく、極めて客観的で「数学的に正しい危機意識」である断言できます。

家計調査が示す通り、無職夫婦世帯における毎月の家計収支の赤字(不足分)は「平均約4万2434円」です。この数字をベースに計算すると、年間で取り崩す貯蓄額は「約50万9,000円」に達します。

もし70歳で仕事を完全にリタイアし、現在から85歳までの「15年間」、この標準的なペースで貯蓄を取り崩し続けた場合、赤字の累計額は「約763万円」になります。さらに90歳までの「20年間」生きると仮定すれば、日常の生活費の補填だけで「約1018万円」の資産が消滅する計算になります。

つまり、70代の世帯が保有する貯蓄の中央値「約1100万円」は、「ただごく標準的な日常生活を送り、平均的な赤字を補填し続けるだけで、90歳を迎える頃にはほぼ底をつく金額」なのです。ここに、将来必ず発生する住宅の修繕費や、医療・介護サービスの自己負担分などのライフイベントの費用は一切含まれていません。

世間のシニアが感じる「厳しい」という実感は、この不都合な数学的現実を直感的に悟っているからこそ生じるのかもしれません。高すぎる「平均値(2400万円台)」という幻影を見て安心するのではなく、自分たちの資産と赤字額を掛け合わせ、長寿のタイムラインに照らし合わせて管理することこそが、老後の資産破綻を防ぐルールとなります。

銀行通帳の「ちょうど1年前(昨年の7月)の残高」と現在を比べ、年間の本当の減少額を割り出す

「毎月赤字が出ているのは分かるけれど、正確にあと何年資金が持つか分からない」という漠然とした不安を解消するには、細かな家計簿をつけるよりも、これまでの実際の「資産の減り幅」を事実として確定させることが確実です。

この記事を読み終えたら、いま手元にあるご夫婦のメインバンクの「銀行通帳(またはオンラインバンキングの過去履歴)」を開いてください。

そして、今この瞬間の預金残高から、「ちょうど1年前(昨年の7月〜8月頃)」の預金残高を引いて、この1年間で資産がいくら増減したか(純減額)を計算してください。

例えば、昨年の残高から1年間で「60万円」減っていたのであれば、それが年金の支給額や社会保険料の天引き、突発的な医療費や特別支出までをすべて含んだ、あなたの家計の「リアルな年間取り崩しペース」です。この実際の減少額で手元の貯蓄総額を割れば、あと何年間今の生活水準を維持できるかが一目で分かります。

世間の平均額に一喜一憂するのではなく、過去1年の客観的な実績データからご家庭の現在地を把握すること。この現状認識こそが、物価高や長寿リスクに怯えない、地に足のついた安心な老後ライフを守るためのポイントとなるでしょう。

宮野 茉莉子
監修者宮野 茉莉子LIMO&ファイナンス編集部 副編集長

老後資金に関しては、そのお金を「どこに置くか」も重要となります。

お金の置き場所は預貯金のほか、債券、投資信託、保険、株式などがあります。金融商品によりリスク・リターンはさまざまですが、「お金をどこに置くか」によって5年後、10年後、20年後の資産は変わります。

今の家計収支を確認するとともに、お金をどこに置くかでリスクやリターンはどう変わるのかに興味をもち、確認したり、シミュレーションしたりしてみるといいでしょう。

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