「老後2000万円問題」という言葉を、一度は耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。数年前に話題になって以来、老後のためにいくら備えればよいのか、漠然とした不安を抱く方は少なくないようです。
とはいえ、実際に定年を迎えた世代が、どれくらいの貯蓄を持ち、毎月どんな家計で暮らしているのかは、意外と知られていません。数字の一人歩きに振り回されず、まずは今のリアルなデータをみておきたいところです。
そこで今回は、すでに年金を受け取る時期を迎えた60歳代・70歳代の二人以上世帯について、平均貯蓄額と中央値、そして老後の毎月の家計収支を、公的なデータから順にみていきましょう。
老後資金に備える際には「老後の生活費は累計でいくら足りないか」を把握して備えておくことも大切ですから、老後を20年間と仮定して、累計で足りない平均的な月の赤字額もご紹介します。
また元銀行員であり、長年金融に関する編集に携わってきた筆者が、老後を迎えてからも行いたい対策を解説します。
【60歳代・70歳代二人以上世帯の平均貯蓄額】中央値はいくらか?
金融経済教育推進機構(J-FLEC)が2025年に公表した「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」によると、二人以上世帯の金融資産保有額(平均・中央値)は、年代ごとに次のとおりです。
※金融資産保有額とは、預貯金だけでなく株式、投資信託、生命保険などを含んだ金額です。ただし、日常的に使う普通預金の残高は含まれていません。
60歳代二人以上世帯の貯蓄額(平均・中央値)
60歳代の貯蓄円グラフ
- 60歳代二人以上世帯:平均2683万円/中央値1400万円
平均は2683万円ですが、金額順に並べたちょうど真ん中にあたる中央値は1400万円です。平均が中央値を大きく上回るのは、まとまった資産を持つ一部の世帯が全体を押し上げているためで、多くの世帯の実態により近いのは中央値のほうといえます。
分布をみると、金融資産を持たない世帯が12.8%で、およそ8世帯に1世帯。一方で「2000万円以上」の世帯は39.6%(2000〜3000万円が12.4%、3000万円以上が27.2%)と、およそ5世帯に2世帯を占めます。同じ60歳代でも、蓄えの状況には世帯によって大きな幅があります。
70歳代二人以上世帯の貯蓄額(平均・中央値)
70歳代の貯蓄円グラフ
- 70歳代二人以上世帯:平均2416万円/中央値1178万円
70歳代は平均2416万円、中央値は1178万円です。60歳代と同じく平均が中央値を上回っており、一部の世帯が全体の平均を押し上げている姿がうかがえます。
金融資産を持たない世帯は10.9%で、およそ1割。「2000万円以上」の世帯は37.5%(2000〜3000万円が12.3%、3000万円以上が25.2%)と、4割近くにのぼります。70歳代の二人以上世帯でも、世帯ごとに蓄えの幅が広いことがみてとれます。
いずれの年代でも、平均と中央値には差があり、「2000万円以上」の世帯と、貯蓄を持たない世帯とが同居しているのが実際の姿です。「老後2000万円」という数字も、すべての世帯に当てはまるものではなく、あくまで一つの目安として受け止めるのがよさそうです。
オリックスなどの国内金融機関出身。日本株アナリストおよび財務アドバイザーとして決算分析や資金調達を主導。「日経CNBC」出演などメディアを通じた相場解説の実績も豊富。企業財務に精通し、現在はモニクルリサーチで金融ニュースの深掘り記事を発信。
野村證券株式会社出身。FP2級・証券外務員一種を保有。国内外株式、投資信託、債券、保険商品まで幅広い資産運用に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集長として記事も執筆。
