夏休みシーズンが近づいてきました。実家に集まると、親世代の年金の話題や、自分たち夫婦の老後をどうするかが自然に話題にのぼる方もいるのではないでしょうか。
「一般的な夫婦世帯って、ひと月いくらの年金で暮らしているんだろう」と気になる方に向けて、今回は厚生労働省と日本年金機構の最新資料をもとに、夫婦世帯の年金額と、実際の働き方パターン別の月額を整理します。
筆者はかつて自治体職員としてシニアの相談に乗ることも多かったのですが、年金額だけでなく「税金や保険料の天引き」「支出とのバランス」に悩む声もよく聞きました。
老後生活を考えるにあたり、お金のことを少しずつ考え始めていきましょう。
年金の基本、国民年金と厚生年金は「2階建て構造」
公的年金は、基礎部分となる「国民年金」と、上乗せ部分にあたる「厚生年金」から成り立つ2階建て構造です。
厚生年金と国民年金の仕組み
国民年金は加入期間で受給額が決まり、厚生年金は加入期間+現役時代の収入で決まります。夫婦世帯の月額は、二人がそれぞれどちらの年金にどれだけ加入していたかで大きく変わる仕組みです。
厚労省が示す「標準的な夫婦世帯」は月23万7279円
まずは厚生労働省が公表するモデル世帯の金額を確認しましょう。
2026年度の金額は次のように示されています。
令和8年度の年金額の例
- 国民年金(老齢基礎年金):7万608円(1人分※1)
- 厚生年金:23万7279円(夫婦2人分※2)
※1 昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額7万408円
※2 平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準
厚労省が示す「モデル世帯」の月額は23万7279円。2カ月分まとめて支給されるため、次回の支給日である8月14日には、47万4558円が振り込まれる計算です。
ただしこの数字は「夫が平均的な収入で40年間会社員として働き、妻は扶養内パートや専業主婦で国民年金のみ」という、かなり具体的な前提の場合です。実際には夫婦の働き方によって、この金額は上下します。
そこで次章では、夫婦の働き方別にひと月あたりの年金額をシミュレーションしてみましょう。
- 【パターン①】共働き夫婦
- 【パターン②】片働き夫婦
- 【パターン③】自営業夫婦
にわけて確認していきます。
夫婦の働き方別、ひと月の年金額を試算する
厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」の男女別平均データをもとに、代表的な3パターンで夫婦世帯の月額を試算します。
厚生年金:年金月額階級別の受給権者数
男女別の平均年金月額(令和6年度事業の概況)
- 厚生年金〈男性〉平均月額:16万9967円
- 厚生年金〈女性〉平均月額:11万1413円
- 国民年金〈男性〉平均月額:6万1595円
- 国民年金〈女性〉平均月額:5万7582円
※厚生年金の月額は国民年金部分を含む
【パターン①】共働き夫婦(夫婦ともに厚生年金)
- 夫の厚生年金:16万9967円
- 妻の厚生年金:11万1413円
- 合計:月約28万1380円
【パターン②】片働き夫婦(夫は厚生年金、妻は国民年金のみ)
- 夫の厚生年金:16万9967円
- 妻の国民年金:5万7582円
- 合計:月約22万7549円
【パターン③】自営業夫婦(夫婦ともに国民年金のみ)
- 夫の国民年金:6万1595円
- 妻の国民年金:5万7582円
- 合計:月約11万9177円
3パターンを並べると、共働き夫婦は約28万円、片働き夫婦は約23万円、自営業夫婦は約12万円と、月に16万円もの差が生じます。年間で換算すると約190万円、老後20年で約3800万円の格差です。
厚労省のモデル世帯(23万7279円)は片働き夫婦のパターンに近い水準です。共働き夫婦なら平均的にはこれを月4万円ほど上回り、逆に自営業夫婦は半分以下となる計算になります。
【筆者からのアドバイス】夫婦世帯の年金を組み立てるときの3つの視点
夫婦世帯の年金額は「2人分の合算」で捉えることが多いのですが、実際の家計運営では「1人になったとき」の期間も想定しておくことが欠かせません。
平均寿命は女性のほうが約6年長く、夫に先立たれた妻の期間が10年以上続くケースも珍しくありません。日々の相談実務で感じたポイントを、3つお伝えします。
妻側の厚生年金加入を意識する
1つ目は「妻側の厚生年金加入」を意識することです。
あくまでも平均額を使ったシミュレーションではありますが、共働き夫婦と片働き夫婦では月4万円ほど年金額に差が出ます。パート勤務でも、勤務先の規模や労働時間の条件を満たせば厚生年金に加入でき、老後の年金額を底上げできます。
「年収106万円の壁」「130万円の壁」を意識して働き控えることも大事な局面はありますが、壁を越えて厚生年金に加入する選択肢も一度検討してみてください。
繰下げ受給を夫婦別で検討する
2つ目は「繰下げ受給を夫婦別で検討する」ことです。
65歳の年金請求は、夫婦同時である必要はありません。夫は65歳から受給・妻は70歳まで繰下げ、といった組み合わせにすれば、夫が先に亡くなったあとの妻の期間の年金を42%増額でカバーできます。
繰下げ受給は最大75歳まで可能なので、長生きリスクへの現実的な備えになります。ただし加給年金や税金、社会保険料などへの影響もあるため、プロに相談しながら慎重に選択しましょう。
夫婦の年金額の内訳を見える化する
3つ目は「夫婦の年金額の内訳を見える化する」ことです。
「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で、夫婦それぞれの内訳(老齢基礎年金・老齢厚生年金)を書き出し、合計してみてください。
そのうえで、月々の生活費(食費、住居費、光熱費、医療費、通信費など)と突き合わせることで、iDeCoやNISA、就労延長の必要性も具体的に見えてきます。
年金は「もらうもの」ではなく「使うもの」です。もらう額を最大化する工夫と、使う額をコントロールする工夫の両輪で考えていきましょう。
まとめにかえて
「一般的な夫婦世帯」の年金額は、厚労省モデルでは月約23万7000円です。ただしこれはあくまで一つのモデルであり、実際の平均データから試算すると、共働き〜自営業まで月12万〜28万円と大きな幅があります。
老後の家計は、まず夫婦それぞれの見込み年金額を「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認し、合算して自分たちの数字を把握することからスタートします。
不足が見込まれるならiDeCoやNISA、就労延長などで補うプランを、現役のうちから組み立てていきましょう。
参考資料
地方公務員・保険代理店出身。証券外務員二種保有。自治体で国民健康保険の賦課や高額療養費、退職に伴う年金切り替え等の実務に従事。複雑な社会保障制度に精通し、現在はLIMO編集部で年金・貯蓄・退職金等の金融情報を発信。
