帝国データバンク「「食品主要195社」価格改定動向調査 ― 2026年7月」によれば、2026年7月の飲食料品値上げは2566品目に達し、詳しく見ると即席めんなどの加工食品(1084品目)や食パンをはじめとするパン類(1078品目)といった、日々の家計に直結する品目が中心となっています。中東情勢の悪化に伴う物流費や包装資材の高騰も背景にあり、年間の値上げは2万品目ペースに上る見通しとなっています。
「物価高がまさかここまで続くとは思わなかった…」なんて方もいるでしょう。日本では長年デフレが続いてましたから、現代の状況をうけて「物価高がくる未来も予想して老後に備えたい」という方は多いと思います。
最近では長く働く方が増えていますから、今回は本格的な老後がはじまりやすい「70歳代」に視点をあてて、そのお金事情をみていきます。
また筆者は以前金融機関に勤めており、編集者として経済や金融に関する記事に携わってきましたが、現在の状況を受けて「今だからこそ老後に向けて備えたい対策」についても解説します。
老後生活については漠然とした不安を抱えやすいですが、平均的な年金や貯蓄額を知り、また自身の現在地を確認することで、「具体的な老後対策」を立てやすくなります。行動することが不安を消すことの一つの対策になりますから、データを見た後で具体的にとりたい老後資金対策を見ていきましょう。
70歳代の貯蓄額は平均でいくら?中央値についても見る
J-FLEC(金融経済教育推進機構)が公表した「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」を基に、「70歳代・二人以上世帯」が保有する金融資産の状況(金融資産を持たない世帯を含む)を確認します。
※ここでの金融資産保有額は、預貯金のほか株式、投資信託、生命保険などを含んだ金額です。ただし、日常的に使う普通預金の残高は含まれていません。
70歳代の貯蓄額(二人以上世帯)
調査結果によると、「70歳代・二人以上世帯」の平均貯蓄額は2416万円でした。しかし、この平均値は一部の資産家によって引き上げられる傾向があるため、より実態に近いとされる中央値を見ると1178万円となっています。
金融資産保有額の詳しい分布は、以下の通りです。
70歳代・二人以上世帯」の貯蓄額の内訳
- 金融資産非保有:10.9%
- 100万円未満:4.5%
- 100~200万円未満:5.1%
- 200~300万円未満:3.7%
- 300~400万円未満:3.9%
- 400~500万円未満:2.9%
- 500~700万円未満:6.4%
- 700~1000万円未満:6.7%
- 1000~1500万円未満:11.1%
- 1500~2000万円未満:6.7%
- 2000~3000万円未満:12.3%
- 3000万円以上:25.2%
- 無回答:0.6%
金融資産を全く保有していない「貯蓄ゼロ」世帯が10.9%存在する一方で、3000万円以上の資産を持つ世帯が25.2%を占めています。このデータから、70歳代の二人以上世帯では、資産状況の二極化が進んでいることがうかがえます。
また、100万円未満(4.5%)、100万円以上200万円未満(5.1%)、200万円以上300万円未満(3.7%)といった貯蓄が比較的少ない層も確認できます。その一方で、1000万円以上1500万円未満(11.1%)や2000万円以上3000万円未満(12.3%)など、ある程度の資産を築いている世帯も少なくありません。
老後の資産額は、現役時代の収入や働き方、退職金の有無、健康状態といった様々な要因に影響されます。年金の受給額も同様に、これまでの加入履歴によって個人差が生じます。
もし貯蓄が心もとない場合、年金収入のみで生活を維持するのは困難になるかもしれません。安心して老後を送るためには、各世帯の状況に応じた資金計画が重要です。健康なうちは短時間でも働く、あるいは資産運用で収入を得るなど、早めに具体的な対策を検討することが将来の安定につながるでしょう。
厚生年金と国民年金の平均受給月額とは?
次に、厚生労働省が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を基に、厚生年金の平均受給月額を見ていきます。
厚生年金の被保険者にはいくつかの区分がありますが、ここでは主に民間企業の会社員などが加入する「厚生年金保険(第1号)」の受給月額について解説します(以下、記事内では「厚生年金」とします)。
※本記事で示す厚生年金の月額には、基礎となる国民年金部分の金額も含まれています。
男女別の厚生年金平均受給月額
- 〈全体〉平均年金月額:15万289円
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
男女別に見ると、男性の平均が16万9967円であるのに対し、女性は11万1413円と、受給額に差があることがわかります。
では、実際にどのくらいの金額を受け取っている人が多いのでしょうか。受給月額ごとの人数は以下の通りです。
受給権者数を金額階級別に見ると、「10万円以上11万円未満」の層が約111万人と最も多くなっています。続いて「11万円以上12万円未満」が約107万人、「17万円以上18万円未満」が約103万人という順です。
続いて、主に自営業者や専業主婦(主夫)などが受け取る国民年金(老齢基礎年金)の平均受給月額を確認しましょう。
男女で見る国民年金の平均受給月額
- 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
男女の平均月額を比較すると約4000円の差があり、これは保険料の納付期間などの違いが影響していると考えられます。
国民年金の受給額で最も多いのは「6万円以上7万円未満」の層で、多くの人が満額に近い年金を受け取っていることがうかがえます。その一方で、5万円に満たない層も存在し、保険料の納付状況などによって受給額に個人差があることが特徴です。
国民年金は、加入者一人ひとりの納付履歴に応じて支給額が変動する仕組みになっています。
【65歳以上の夫婦のみ無職世帯】家計収支の実態。支出はいくら?年金額は?
では、具体的な生活費はどれくらいでしょうか。
総務省統計局が公表した「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」を基に、「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」における平均的な家計収支を詳しく見ていきましょう。
収入の部:平均月収25万2818円
■うち社会保障給付(年金など):22万5182円
支出の部:平均月28万6877円
■うち消費支出:25万6521円
- 食料:7万6352円
- 住居:1万6432円
- 光熱・水道:2万1919円
- 家具・家事用品:1万2265円
- 被服及び履物:5590円
- 保健医療:1万8383円
- 交通・通信:2万7768円
- 教育:0円
- 教養娯楽:2万5377円
- その他の消費支出:5万2433円
- うち諸雑費:2万2125円
- うち交際費:2万3888円
- うち仕送り金:1040円
■うち非消費支出:3万356円
- 直接税:1万1162円
- 社会保険料:1万9171円
毎月の収支バランスと貯蓄の取り崩し額
- 毎月の不足額:3万4058円
- エンゲル係数(※消費支出に占める食料費の割合):29.8%
- 平均消費性向(※可処分所得に対する消費支出の割合):115.3%
このモデル世帯の月間収入は平均25万2818円で、その大半を公的年金などの社会保障給付が占めている状況です。
それに対して、月間の支出は平均28万6877円です。このうち、食費や光熱費といった生活費である消費支出が25万6521円、税金や社会保険料などの非消費支出が3万356円となっています。
結果として、毎月3万4058円の赤字が発生しており、この不足分は貯蓄から補填することになります。年間では約40万円を貯蓄から取り崩す計算です。
高齢期は現役時代のように安定した収入を得ることが難しくなるため、このような家計の赤字が続くと、長期的に見て貯蓄を大きく減らしてしまう可能性があります。
現在の貯蓄額を把握した上で、家計の見直しや、健康であれば短時間でも働くといった対策を検討することが、老後の生活を安定させる上で重要になるでしょう。
65歳以上の就業率と、働いている産業とは
最近は60歳代で働く方も増えていますが、具体的な就業率や業種などを見てみましょう。
内閣府「令和8年版高齢社会白書」によると、65歳以上の就業者数は22年連続で前年を上回っています。令和7年の就業率は、65〜69歳で54.5%、70〜74歳で36.2%、75歳以上で12.6%と、いずれの世代でも上昇傾向です。65〜69歳ではおよそ2人に1人が働いている計算になり、シニアが働くことは、もはや珍しいことではなくなってきたといえるでしょう。
高齢者の就業率
では、高齢者はどのような産業で働いているのでしょうか。同白書によると、令和7年に65歳以上の就業者が最も多い産業は「卸売業、小売業」で131万人、次いで「医療、福祉」が122万人、「サービス業(他に分類されないもの)」が108万人となっています。とくに「医療、福祉」は10年前の約2.1倍に増えています。
高齢者が働く業種
一方で、各産業の就業者に占める65歳以上の割合をみると、「農業、林業」が50.6%と最も高く、次いで「不動産業、物品賃貸業」が29.0%となっています。
現代では働き方や職種なども以前と比べて拡大していますから、ご自身が希望する働き方や職種についてまず調べてみるのもいいでしょう。
貯蓄額、年金額、働き方も人それぞれ。自分に合ったライフプランを考えよう。
本記事では、70歳代の貯蓄額、年金受給額、そして生活費に関する公的なデータを紹介しました。
公表されている平均値とご自身の状況を比べて一喜一憂するのではなく、まずはご自身の家計を正確に把握し、それに合った資金計画を立てることが何よりも大切です。
老後資金に対する「選択肢」だけ上げれば、公的年金、私的年金、保険、預貯金、投資信託、債券、株式…など幅広くあります。また仕事だけ見ても、働き方の雇用形態も正社員や非正規、フリーランス、自営業、パートなどさまざまですし、業種、職種に関しても同様でしょう。
大切なのは数多くある選択肢から「自分は何を選ぶか」考えること。誰しも向き・不向きがありますから、自分に合ったものを選んでいきましょう。
選択肢が多いからこそ、「預貯金だけ」「公的年金だけ」「仕事による収入だけ」など一つに絞るのではなく、自分に合ったバランスを考えて、複数の選択肢を組み合わせて老後の対策を考えてみてください。
参考資料
オリックスなどの国内金融機関出身。日本株アナリストおよび財務アドバイザーとして決算分析や資金調達を主導。「日経CNBC」出演などメディアを通じた相場解説の実績も豊富。企業財務に精通し、現在はモニクルリサーチで金融ニュースの深掘り記事を発信。
野村證券株式会社出身。FP2級・証券外務員一種を保有。国内外株式、投資信託、債券、保険商品まで幅広い資産運用に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集長として記事も執筆。
