厚生年金・国民年金の合計「月額15万円」受給者の該当割合と2026年度の改定支給額。シニアの生活意識と短時間労働者への適用拡大も元記者が解説
Pormezz/shutterstock.com
パーソナルファイナンスニュース

厚生年金・国民年金の合計「月額15万円」受給者の該当割合と2026年度の改定支給額。シニアの生活意識と短時間労働者への適用拡大も元記者が解説

物価高下における高齢者世帯のゆとり度と、年収106万円の壁撤廃に向けた法改正の動向

執筆者齊藤 慧編集者
13:00
厚生年金・国民年金の合計「月額15万円」受給者の該当割合と2026年度の改定支給額。シニアの生活意識と短時間労働者への適用拡大も元記者が解説
Pormezz/shutterstock.com

毎年届く「ねんきん定期便」や振込通知書を前に、「自分の年金がどのような計算で決まり、今後の生活をどう支えてくれるのか」と首を傾げる方は少なくありません。

私が社会保障専門紙の記者として厚生労働省などを取材する中で痛感したのは、公的年金制度の構造が極めて複雑であり、その「わかりにくさ」が生活者の漠然とした不安を増幅させているという事実です。

役所の論理で設計された制度は、法改正や毎年の金額改定によってさらに難解さを増しています。

しかし、仕組みを知らないままでいると、制度の恩恵を十分に受けられず、将来のライフプランを立てる際に見えない不利益を被る可能性があります。

本記事では、この複雑な年金制度の全体像をはじめ、受給額のリアルな分布データ、そして2026年度の最新の改定額を客観的なデータに基づいてわかりやすく解説します。

さらに、今後の社会保険制度の変更点など、将来の家計に直結する重要なトピックをフラットに紐解きます。

日本の公的年金制度(国民年金・厚生年金)における階層構造の基本

日本の公的年金制度は、「国民年金(老齢基礎年金)」と「厚生年金」の2つで構成されており、「2階建て」の制度として知られています。

ここでは、それぞれの制度の概要を整理します。

日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」をもとにLIMO&ファイナンス編集部作成
厚生年金と国民年金の仕組み

【1階部分】国民年金(基礎年金)

  • 加入対象:原則として日本に住む20歳から60歳未満のすべての人
  • 保険料:全員定額、ただし年度ごとに改定される(※1)
  • 受給額:保険料を全期間(480カ月)納付した場合、65歳以降で満額の老齢基礎年金(※2)を受給できる。未納期間分に応じて満額から差し引かれる

※1 国民年金保険料:2025年度月額は1万7510円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の満額:2025年度月額は6万9308円

【2階部分】厚生年金

  • 加入対象:会社員や公務員、またパートなど、特定適用事業所(※3)で働き一定要件を満たす人が、国民年金に上乗せで加入
  • 保険料:収入に応じて(上限あり)決定される(※4)
  • 受給額:加入期間や納付済保険料により、個人差が出る

厚生年金は、会社員や公務員などが国民年金に上乗せして加入する制度です。

両制度では加入対象や保険料の仕組み、年金額の計算方法が異なるため、老後に受け取る年金額には働き方や収入に応じた個人差が生じます。

また、公的年金は物価や現役世代の賃金動向を踏まえ、毎年度見直しが行われています。

※3 特定適用事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※4 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される

【2026年度】国民年金・厚生年金の支給額はどう変わった?

公的年金は、物価や賃金の動向を反映して毎年改定されています。

2026年度は、国民年金(老齢基礎年金)が前年度比1.9%、厚生年金(報酬比例部分)は2.0%引き上げられています。

2026年度の年金額は次のとおりです。

2026年度(4月分~)の年金額

2026年度(4月分~)の年金額
2025年度の年金額「前年度から1.9%の引き上げ」
  • 国民年金(老齢基礎年金・満額):月額7万608円(1人分 ※1)
  • 厚生年金(夫婦2人分のモデルケース):月額23万7279円(夫婦2人分※2)

※1 昭和31年4月1日以前に生まれた方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額6万9108円(前年度比+1300円)です。
※2 平均的な収入(賞与を含む月額換算で45万5000円)の男性が40年間就業した場合に受け取り始める年金額(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金満額)の給付水準です。

国民年金のみを受給する場合、保険料を全期間納めて満額(※3)だったとしても、月額はおよそ7万円程度であり、受給開始を75歳まで遅らせる「繰下げ受給(※4)」を利用した場合でも、月額は13万円に届かない水準となっています。

※3 国民年金の保険料を40年間(480カ月)納付した場合に、65歳から受け取れる満額の年金額を指します。
※4 繰下げ受給とは、年金の受け取り開始を66歳から75歳までの間で遅らせる制度です。1カ月遅らせるごとに0.7%増額され、75歳開始では最大84%増額されます。

なお、これらはあくまでモデルケースです。

実際に受け取る年金額は、現役時代の収入や加入期間などによって異なるため、「ねんきんネット」などで見込み額を確認しておくことが大切です。

厚生年金と国民年金を合わせて「月15万円以上」受給する人の割合は?

厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金を含む厚生年金受給者全体の平均受給額は月15万289円となっています。※この金額には1階部分である国民年金(老齢基礎年金)の月額分も含まれています。

受給額ごとの人数は次のとおりです。

厚生年金の受給額ごとの受給権者数

厚生年金の受給額
  • 1万円未満:4万3399人
  • 1万円以上~2万円未満:1万4137人
  • 2万円以上~3万円未満:3万5397人
  • 3万円以上~4万円未満:6万8210人
  • 4万円以上~5万円未満:7万6692人
  • 5万円以上~6万円未満:10万8447人
  • 6万円以上~7万円未満:31万5106人
  • 7万円以上~8万円未満:57万8950人
  • 8万円以上~9万円未満:80万2179人
  • 9万円以上~10万円未満:101万1457人
  • 10万円以上~11万円未満:111万2828人
  • 11万円以上~12万円未満:107万1485人
  • 12万円以上~13万円未満:97万9155人
  • 13万円以上~14万円未満:92万3506人
  • 14万円以上~15万円未満:92万9264人
  • 15万円以上~16万円未満:96万5035人
  • 16万円以上~17万円未満:100万1322人
  • 17万円以上~18万円未満:103万1951人
  • 18万円以上~19万円未満:102万6888人
  • 19万円以上~20万円未満:96万2615人
  • 20万円以上~21万円未満:85万3591人
  • 21万円以上~22万円未満:70万4633人
  • 22万円以上~23万円未満:52万3958人
  • 23万円以上~24万円未満:35万4人
  • 24万円以上~25万円未満:23万211人
  • 25万円以上~26万円未満:15万796人
  • 26万円以上~27万円未満:9万4667人
  • 27万円以上~28万円未満:5万5083人
  • 28万円以上~29万円未満:3万289人
  • 29万円以上~30万円未満:1万5158人
  • 30万円以上~:1万9283人

受給額が月15万円以上となっている人は49.8%で、全体の半数には届いていません。

また、厚生年金を受給していない人も含めると、この割合はさらに低くなると考えられます。

60歳代単身世帯の約5割「年金だけでは日常生活費もまかなえない」と回答

実際に年金生活を送るシニア世代は、生活費についてどのように感じているのでしょうか。

J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」を見ると、年金生活の実態がうかがえます。

「年金だけで不自由なく暮らせる」と感じる人は少数

60歳代・70歳代ともに、「年金でさほど不自由なく暮らせる」と回答した人は、二人以上世帯・単身世帯を問わず8~12%台にとどまっています。

単身世帯では「生活費を賄うのが難しい」という回答が目立つ

「日常生活費程度もまかなうのが難しい」と回答した割合は、二人以上世帯では26~33%台でした。

一方、単身世帯では60歳代が50.7%、70歳代でも35.5%となっており、一人暮らしほど生活の厳しさを感じる人が多いことが分かります。

ゆとりがない理由のトップは「物価上昇等」

年金生活にゆとりがない理由として最も多く挙げられたのは、すべての年代・世帯区分で「物価上昇等」でした。

いずれも5割を超え、これに「医療費の自己負担増」や「年金支給額の引き下げ」が続いています。

これらの結果から、多くのシニア世帯が物価高の影響を受け、年金収入だけではゆとりある生活を維持しにくい状況にあることがうかがえます。

社会保険の適用拡大に向けた年金制度改正と年収106万円の壁の撤廃動向

2025年6月13日、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」が参議院本会議で可決され、成立しました。

この改正は、働き方や家族のあり方、ライフスタイルの多様化を踏まえた年金制度の整備を目指すものです。

あわせて、私的年金制度の拡充や所得再分配の強化を通じて、高齢期の生活の安定につなげることも重要な目的とされています。

ここでは、今回の改正の全体像を確認していきましょう。

年金制度の「主な改正内容」をチェック

年金制度改正の全体像

社会保険の加入対象の拡大

  • 中小企業において短時間で働く人などが、厚生年金や健康保険に加入し、年金増額などのメリットを受けられるようにする

在職老齢年金の見直し

  • 年金を受け取りながら働くシニアが、年金を減額されにくくなり、より多く働けるようにする

遺族年金の見直し

  • 遺族厚生年金の男女差を解消。子どもが遺族基礎年金を受給しやすくする

保険料や年金額の計算に使う賃金の上限の引き上げ

  • 月収が一定以上となる人が、賃金に応じた年金保険料を負担し、現役時代の賃金に見合った年金を受給しやすくする

その他の見直し

  • 子どもの加算などの見直し、脱退一時金の見直し
  • 私的年金の見直し:iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)加入年齢の上限引き上げなど

今回の改正内容からも分かるように、公的年金は単に「老後に受け取る金額」だけの問題ではなく、現役時代の働き方やキャリアの選択、人生設計とも密接に関わる制度といえます。

まとめ:複雑な制度の仕組みを把握し、自身のライフステージに合わせて活用する

難解な社会保障制度を取材し続けて確信したのは、「国の制度は待っているだけでは個人の生活を守りきれない」ということです。

受給額の分布データが示す通り、年金だけでゆとりのある生活を送れる層は限られています。しかし、制度の仕組みを正しく理解すれば、今後の働き方で受給額を増やす選択肢は見えてきます。

現在議論が進んでいる「年収106万円の壁」の撤廃といった適用拡大の動きは、まさに複雑な制度の変更を逆手に取り、パート等の短時間労働を通じて将来の厚生年金(2階部分)を自発的に厚くする好機と捉えることもできます。

年金制度のわかりにくさに目を背けるのではなく、本記事で解説したような制度改正の要点を自身の家計防衛に組み込むこと。この能動的な情報収集と働き方の見直しこそが、インフレ時代を乗り切るアプローチとなるでしょう。

参考資料

Google で優先するソースとして追加
齊藤 慧編集者株式会社モニクルリサーチ

関連タグ