老後資金の備えを考える際に、具体的に試算したい「老後の生活費」。とはいえ、「今忙しくて老後の生活費まで考えられない」なんてご家庭も多いかもしれませんね。
今回は現役世代の貯蓄額の平均・中央値を見た後に、定年後の生活費について、その平均額と内訳をみていきます。そして元金融機関出身の筆者が、現役時代から備えたいこと3つについても確認します。
老後の備えは一朝一夕ではいかず、現役時代のうちから長期間かけ、コツコツ備えることが重要です。現役世代の平均・中央値を見ながら、老後の平均的な生活費を知ることで、「自分のケース」について詳しく考えてみてください。
年代別「みんなの平均貯蓄額」はいくら?中央値も見る
まずは、現在の年代別の貯蓄額を確認していきましょう。金融経済教育推進機構(J-FLEC)が2025年に公表した「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」によると、二人以上世帯の年代別の金融資産保有額は次のとおりです。
※金融資産保有額とは、預貯金だけでなく株式、投資信託、生命保険などを含んだ金額です。ただし、日常的に使う普通預金の残高は含まれていません。
30歳代(二人以上世帯)の貯蓄額(平均・中央値)
30歳代の貯蓄額円グラフ
- 30歳代二人以上世帯:平均1096万円/中央値311万円
40歳代(二人以上世帯)の貯蓄額(平均・中央値)
40歳代の貯蓄額の円グラフ
- 40歳代二人以上世帯:平均1486万円/中央値500万円
50歳代(二人以上世帯)の貯蓄額(平均・中央値)
50歳代の貯蓄額の円グラフ
- 50歳代二人以上世帯:平均1908万円/中央値700万円
60歳代(二人以上世帯)の貯蓄額(平均・中央値)
60歳代の貯蓄円グラフ
- 60歳代二人以上世帯:平均2683万円/中央値1400万円
年代が上がるほど、平均・中央値ともに大きくなっていきますが、両者の開きも基本的には同時に広がっていきます。上位の資産を持つ世帯が平均を押し上げる度合いが年代とともに強まっているとみられ、自分の年代の目安をつかむなら、中央値のほうが参考になりそうです。
貯蓄がまったくない「貯蓄ゼロ」の世帯は、30〜50歳代でおおむね2割弱、60歳代では12.8%に下がります。反対に「2000万円以上」の世帯は、30歳代12.5%から60歳代39.6%へと大きく伸びており、年代が上がるほど資産を積み上げた世帯の存在感が増していく構図です。
こうした貯蓄を経て迎える定年後は、実際にどのようなお金の使い方になっているのでしょうか。
【定年後の生活費】は平均でふつういくらかかるのか。内訳も見る
総務省統計局「家計調査報告〔家計収支編〕2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の消費支出の内訳は、次のとおりです(1か月当たり)。
定年後の生活費は平均でいくら
【定年後の生活費】の平均はいくらか
- 非消費支出:32,850円
- 消費支出 :263,979円
- うち食料:29.9%(78,964円)
- うち交通・通信:11.9%(31,325円)
- うち教養娯楽:10.1%(26,538円)
- うち光熱・水道:8.9%(23,540円)
- うち保健医療:6.8%(17,941円)
- うち住居:6.7%(17,739円)
- うち教育:0.0%(0円)
- うちその他の消費支出(交際費など):19.4%(51,341円)など
現役時代に大きな割合を占めがちな教育費は0.0%となり、支出の中心は食料や交通・通信、教養娯楽といった日々の暮らしに関わる項目に移っています。
保健医療も一定の割合を占めており、年齢を重ねることで医療・健康関連の支出が家計のなかで存在感を持つようになる様子もうかがえます。
教育費のように定年後には縮小・消滅する支出がある一方、健康関連など新たに重みを増す支出もあります。こうした変化を念頭に、30歳代から60歳代のいまできることを考えてみましょう。
また、非消費支出と消費支出を合計すると1カ月の生活費は29万6829円であり、平均で月42,434円の赤字となっています。あくまで平均値ではありますが、自身の場合の家計収支はいくらか考えておきたいところでしょう。
定年後を見据えて、今からできること3つを元証券会社社員が解説
貯蓄の状況と、定年後の支出の変化をふまえて、いまのうちに整えておきたいことを3つみていきましょう。
教育費が一段落したら、その分を貯蓄・投資に回す
教育費は、子どもの成長にともなって増減し、いずれ大きな支出ではなくなる家庭も多いでしょう。教育費の負担が一段落したタイミングで、それまで教育費に充てていた分を、そのまま貯蓄や新NISAなどの積立に切り替えると、無理なく資産形成のペースを上げやすくなります。
ただし、投資には元本割れのリスクがあります。金融商品や投資方法などによってリスクが異なるため、ご自身の家計や考え方、リスク許容度に合うものを無理のない範囲で検討したいところです。
生活のダウンサイジングをおこなう
子どもが成長し、また巣立つことで、これまでかかっていた費用がかからなくなります。たとえば外食費や保険、光熱費、家賃などは子どもが巣立つことで見直せる可能性がありますので、家族のかたちが変わるタイミングで支出面を見直しましょう。
当たり前のようにしていた外食や見直していない保険、光熱費などを見直すことで、貯蓄に回せる金額がうまれる場合もあります。
健康や趣味にかかるお金は、早めに枠を分けておく
一般的に定年後は保健医療や教養娯楽にかかるお金の存在感が増していく傾向があります。現役のうちから、生活防衛資金とは別に、医療・健康のための備えや、趣味・レジャーのための資金をゆるやかに枠として分けておくと、支出の中身が変わっていく将来にも対応しやすくなるでしょう。また、車の維持費や家電を含めた買い替え費用もあらかじめ予定して貯蓄しましょう。
定年後の暮らしも考えて老後資金の計画を
今回みてきた定年後の家計は教育費が0.0%になるなど、支出の中身が一般的な現役時代から大きく変わっていました。また、30歳代から60歳代までの二人以上世帯の貯蓄は、年代が上がるほど平均・中央値ともに増えていく一方、その開きも大きくなっていきます。
支出の姿が変わることを知っておけば、いまの貯蓄や積立の計画にも活かせます。まずは自分の年代の中央値や定年後の支出内訳をたしかめ、「自分のケース」について具体的な試算などを行い、老後資金対策を考えてみてくださいね。
参考資料
野村證券株式会社出身。FP2級・証券外務員一種を保有。国内外株式、投資信託、債券、保険商品まで幅広い資産運用に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集長として記事も執筆。
