この記事はここがポイント
- NTT株価は8月28日168.6円、AI関連銘柄として高値圏を推移
- データセンター容量、2033年度までに約1GWへ3倍超拡大計画
- 2026年度Q1営業収益過去最高、配当利回り3.20%を維持
NTT<9432>の株価が好調です。8月26日には、2024年5月以来およそ2年3カ月ぶりの高値圏である170円を付けました。
28日は前日比0.24%高の168.6円で取引を終えています。
値上がりの背景には、通信株として長らく「ディフェンシブ銘柄」の代表格だったNTTが、AI時代のインフラ需要を取り込む存在として改めて評価され始めている面があるとみられます。
というのも、NTTは4月27日、NTTデータグループ・NTTドコモビジネスと共同で、AIネイティブインフラ構想「AIOWN(エーアイオン)」を発表し、データセンターの受電容量(IT電力容量)を現状の300MWから2033年度までに3倍超の約1GWへ拡大する計画を打ち出していました。
AIや半導体関連株への買いが一巡し、割高感が意識されるなか、市場では実績やテーマの裏付けを重視した銘柄選別が進んでいます。
こうしたなか、AI普及に伴う電力需要の激増を背景に、データセンターや省電力化の核心技術である「光電融合」が次の物色テーマとして注目を集めています。
独自技術「IOWN」を主導し、世界屈指のデータセンター基盤を持つNTTは、高い事業安定性と配当利回りを土台にしつつ、中長期的なAIインフラの成長オプションを備えた銘柄として評価が高まっています。
最新決算からひも解くNTTの強み
NTTが6日に発表した2026年度第1四半期(2026年4〜6月期)の連結決算では、営業収益が3兆6,177億円(前年同期比+10.9%)となり、四半期として過去最高を更新しました。営業利益は4,251億円(同+4.9%)、最終利益は2,748億円(同+5.8%)と、いずれも増収増益です。EBITDAも8,362億円(同+348億円、+4.3%)と伸びています。
セグメント別に見ると、営業収益の増加額3,557億円のうち最も大きく伸びたのはグローバル・ソリューション事業(NTTデータグループが中核)で、収益12,789億円(同+1,746億円)と全体の増収額の半分近くを牽引しました。次いで総合ICT事業が収益16,170億円(同+1,269億円)で規模としては最大のセグメントとなっており、地域通信事業は7,636億円(同+58億円)、不動産・エネルギーなどその他事業は4,424億円(同+563億円)と続きます。
事業モデル:データセンター拡張がなぜ「AI関連」の切り口になるのか
今回の決算で最も伸び幅が大きかったグローバル・ソリューション事業は、まさに前述の「AIOWN」構想の推進母体です。
NTTグループは全国47都道府県に160拠点超のデータセンターを展開済みで、今後は東京23区内と福岡市に「AI対応型」データセンターを新設し、いずれも2029年度の稼働を予定しています。東京の新拠点はAI処理向けサーバーを液体で冷やす「液冷技術」に標準対応する計画です。
あわせて、全国8拠点にGPUを分散配置し低遅延・100Gbps級通信で結ぶ実証環境「GPU over APN Testbed」の提供も7月に開始しており、分散AI学習・推論などの技術検証を進めています。グローバルでも、チリの銅鉱山での遠隔オペレーション高度化やインドでのデータセンター省電力化調査など、IOWN技術の海外展開を広げている段階です。
こうした投資計画は今後5年間で世界全体で2兆円規模にのぼるとされ、単なる通信インフラの更新ではなく、ソブリンAI(各国・各地域が自前で持つAI基盤)需要の受け皿としての位置づけが明確になっている点が特徴です。
バリュエーション評価:上昇後のNTT株はどんな水準にあるのか
8月28日終値168.6円をもとにした指標では、PER(会社予想)は14.00倍、PBR(実績)は1.39倍、配当利回り(会社予想)は3.20%となっています。時価総額は15兆2,667億8,300万円です。
年初来高値は8月26日の170円、年初来安値は6月23日の143円で、現在の株価はレンジの上限に近い位置にあります。
PERが14倍程度という水準は、通信株としては高すぎる評価とまでは言えず、配当利回りが3%を超えている点も含めて、急伸後としては比較的落ち着いた評価にとどまっているとの見方ができそうです。
なお、NTTは16期連続で増配を続けており、2026年度の年間配当予想は1株5.4円(会社予想)です。
NTT株の年間チャート
自己株式取得の進捗
NTTは2026年5月8日の取締役会で、上限2,000億円(上限株式数14億株)の自己株式取得を決議しました。取得期間は2026年5月11日から2027年3月31日までで、7月末時点の取得実績は331億円、取得枠に対する進捗率は約16.6%です。過去の実績を振り返ると、2022年度は5,103億円、2023年度・2024年度・2025年度はいずれも2,000億円を取得しており、株主還元策として継続的に活用されている枠組みであることがうかがえます。
記者コメント
NTTは通信株らしい底堅い配当・自己株買いの支えに加えて、データセンター拡張というAI関連の中期テーマも併せ持つようになってきました。
8月28日時点の株価は年初来高値圏にありますが、PER・PBRの水準を見る限り過熱感が強いわけではなく、四半期最高益となった決算内容とも整合的です。
もっとも、AIOWN構想のような大型投資は2029年度以降の稼働を見込む長期計画であり、短期的な株価材料としてどこまで織り込まれ続けるかは今後の決算や進捗発表を注視する必要があるでしょう。
免責事項
- 本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、特定の株式の購入や売却について助言や推奨するものではありません。
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- 投資判断は最新の決算資料や市場動向などをご自身でご確認の上、自己責任で行ってください。
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フィスコなどの金融専門誌出身。10年以上にわたり日経QUICKやブルームバーグ等で機関投資家向けの債券市場記事を執筆。企業調査レポートや決算などIR情報の発信に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集部で記事を執筆。
