65歳以上・無職夫婦世帯の老後生活費はいくら?赤字は月4万円以上にもなる
総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」から、「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」の標準的な家計収支を見ていきます。
収入の内訳:月額25万4395円
■うち社会保障給付(主に年金):22万8614円
支出の内訳:月額29万6829円
■うち消費支出:26万3979円
■うち非消費支出:3万2850円
月々の家計収支
- ひと月の赤字:4万2434円
この世帯の毎月の収入は25万4395円で、その多くを公的年金などの社会保障給付が占めています。
一方、毎月の支出は29万6829円。内訳を見てみると、食費や住居費、光熱費など日常的な生活にかかる消費支出が26万3979円、税金や社会保険料などの非消費支出が3万2850円です。
その結果、月々の家計は4万2434円の赤字となっており、不足分は貯蓄を取り崩して補う必要があります。
銀行通帳の「ちょうど1年前(昨年の7月)の残高」と現在を比べ、年間の本当の減少額を割り出す
「毎月赤字が出ているのは分かるけれど、正確にあと何年資金が持つか分からない」という漠然とした不安を解消するには、細かな家計簿をつけるよりも、これまでの実際の「資産の減り幅」を事実として確定させることが確実です。
この記事を読み終えたら、いま手元にあるご夫婦のメインバンクの「銀行通帳(またはオンラインバンキングの過去履歴)」を開いてください。
そして、今この瞬間の預金残高から、「ちょうど1年前(昨年の7月〜8月頃)」の預金残高を引いて、この1年間で資産がいくら増減したか(純減額)を計算してください。
例えば、昨年の残高から1年間で「60万円」減っていたのであれば、それが年金の支給額や社会保険料の天引き、突発的な医療費や特別支出までをすべて含んだ、あなたの家計の「リアルな年間取り崩しペース」です。この実際の減少額で手元の貯蓄総額を割れば、あと何年間今の生活水準を維持できるかが一目で分かります。
世間の平均額に一喜一憂するのではなく、過去1年の客観的な実績データからご家庭の現在地を把握すること。この現状認識こそが、物価高や長寿リスクに怯えない、地に足のついた安心な老後ライフを守るためのポイントとなるでしょう。
老後資金に関しては、そのお金を「どこに置くか」も重要となります。
お金の置き場所は預貯金のほか、債券、投資信託、保険、株式などがあります。金融商品によりリスク・リターンはさまざまですが、「お金をどこに置くか」によって5年後、10年後、20年後の資産は変わります。
今の家計収支を確認するとともに、お金をどこに置くかでリスクやリターンはどう変わるのかに興味をもち、確認したり、シミュレーションしたりしてみるといいでしょう。
参考資料
元厚労省担当の専門紙の新聞記者。公的社会保障(年金・医療・介護)やNISA・iDeCoを横断分析。難解な一次データを生活者視点に翻訳し、知っておきたい家計防衛の知見と、安全で実用的な情報を提供。
野村證券株式会社出身。FP2級・証券外務員一種を保有。国内外株式、投資信託、債券、保険商品まで幅広い資産運用に精通し、現在は経済メディア『LIMO』編集長として記事も執筆。

【元記者の視点】貯蓄中央値「1100万円」を削り尽くす、毎月4万円の赤字と「長寿」の数学的現実
本記事ので触れた70歳代の貯蓄中央値「約1100万円台」という数字と、第5章の「シニアが年金だけでは生活が厳しいと回答している」というアンケート結果を照らし合わせたとき、そこに一種の疑問を持つ方がいるかもしれません。「1000万円以上の貯金があるのに、なぜそれほど厳しいと嘆くのか」と。
社会保障の統計データやマクロな家計実態を取材してきた記者の視点から言えば、このシニア層が抱える「ゆとりのなさ」や危機感は、決して思い過ごしや過剰な心配性ではなく、極めて客観的で「数学的に正しい危機意識」である断言できます。
家計調査が示す通り、無職夫婦世帯における毎月の家計収支の赤字(不足分)は「平均約4万2434円」です。この数字をベースに計算すると、年間で取り崩す貯蓄額は「約50万9,000円」に達します。
もし70歳で仕事を完全にリタイアし、現在から85歳までの「15年間」、この標準的なペースで貯蓄を取り崩し続けた場合、赤字の累計額は「約763万円」になります。さらに90歳までの「20年間」生きると仮定すれば、日常の生活費の補填だけで「約1018万円」の資産が消滅する計算になります。
つまり、70代の世帯が保有する貯蓄の中央値「約1100万円」は、「ただごく標準的な日常生活を送り、平均的な赤字を補填し続けるだけで、90歳を迎える頃にはほぼ底をつく金額」なのです。ここに、将来必ず発生する住宅の修繕費や、医療・介護サービスの自己負担分などのライフイベントの費用は一切含まれていません。
世間のシニアが感じる「厳しい」という実感は、この不都合な数学的現実を直感的に悟っているからこそ生じるのかもしれません。高すぎる「平均値(2400万円台)」という幻影を見て安心するのではなく、自分たちの資産と赤字額を掛け合わせ、長寿のタイムラインに照らし合わせて管理することこそが、老後の資産破綻を防ぐルールとなります。