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認知症による口座凍結の落とし穴。親の貯金から介護・入居費が出せなくなる日

生涯介護費2300万円のデータも。判断能力が低下する前に「家族で準備できる3つの対策」

執筆者熊谷 良子編集記者
21:06

口座凍結後でも親の資産を介護費用に充てる2つの合法的な方法

では、事例のように完全に手詰まりになった場合や、親の認知症が進行して窓口での手続きが不可能になった場合、どうすれば「合法的に」親のお金を引き出せるのでしょうか。

こっそりATMで引き出すといったグレーな方法ではなく、正面から対応できる手段が存在します。

方法1:全国銀行協会の指針を活用した「特例的な引き出し」

どうしても本人の資金がすぐに必要な場合は、まず金融機関の窓口へ行き、事情を正直に相談してみましょう。

かつては「本人の意思確認ができない限り、一切引き出しは認めない」という対応が一般的でした。しかし、口座凍結が社会問題化する中で、2021年に全国銀行協会(全銀協)が新たな指針を公表しました。

この指針では、「本人の認知能力が低下していても、医療費や施設費など本人の利益になることが明確な使途であれば、親族からの引き出し請求に応じる」という考え方が示されています。

この特例を利用するには、口頭での説明だけでなく、「エビデンス(証拠)」を提示することが非常に重要です。

具体的には、以下のような書類を窓口へ持参します。

  • 介護施設や病院からの請求書・見積書
  • 本人の戸籍謄本や住民票(親族関係を証明する書類)
  • 手続きに来た家族の身分証明書

これらの書類に基づき、金融機関が「間違いなく本人のための支払いである」と確認できれば、引き出しが許可されたり、金融機関から直接施設や病院へ振り込みを行ってくれたりする場合があります。

「こっそりATMで下ろす」のではなく、「請求書という証拠を持って窓口で相談する」ことが正しい対応といえます。

方法2:財産管理を法的に代理する「成年後見制度」の利用

特例的な引き出しは非常に有用な制度ですが、あくまで「金融機関ごとの個別判断」や「緊急時の例外的な対応」という側面に留まります。

継続的な生活費の引き出しや、介護費用を捻出するための実家売却、定期預金の解約といった、より大きな財産管理には対応できないことが多いのが実情です。

今後の財産管理を法的に万全な形で代理するためには、家庭裁判所に申し立てて「法定後見人」を選任してもらう「成年後見制度」の利用を検討する必要があります。

専門家(司法書士や弁護士など)が後見人に選ばれた場合、毎月の報酬(数万円程度)が継続的に発生するといった側面もあります。しかし、親の財産を1円単位で透明に管理し、不当な契約や親族間の金銭トラブルから法的に本人を守るための、最も確実で強力な制度です。

熊谷 良子編集記者株式会社モニクルリサーチ

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