7月も中旬に差し掛かり、夏の計画を立てる方も多い時期ですが、同時に将来の安心について考える良い機会でもあります。ファイナンシャルプランナーとして多くの方のご相談に乗る中で、病気やケガといった不測の事態への備えについてご質問をいただくことも少なくありません。
今回は、そうした万が一の際に生活を支える公的制度の一つである「障害者手帳」について、基本的な知識を解説します。特に所持者数が約478万人と最も多い「身体障害者手帳」に焦点を当て、障がいの種類や等級別の内訳を詳しく見ていきましょう。
【障害者手帳】3つの種類とそれぞれの役割
障害者手帳は、公的な支援を受けるための証明書として機能し、「身体障害者手帳」「療育手帳」「精神障害者保健福祉手帳」の3つに分類されます。手帳を所持することで、障害者総合支援法に基づいた多様なサポートの利用が可能になります。自治体や民間事業者が提供するサービスを含め、必要な支援を受ける上で、この手帳は非常に重要な役割を担っています。
障害者手帳について
身体障害者手帳
身体障害者手帳は、視覚や聴覚、手足などの肢体、あるいは心臓や腎臓といった内部機能に、基準以上の障がいがあると認定された方へ交付されるものです。
交付主体は都道府県・指定都市・中核市で、申請には指定医が作成した診断書や意見書が求められます。基本的に更新の必要はありませんが、障がいの状態に変化が生じた際には、再認定を受けるケースもあります。厚生労働省の「令和5年度福祉行政報告例の概況」によると、令和6年度時点での所持者数は467万4999人にのぼり、3種類の手帳の中で最多です。
療育手帳
療育手帳は、児童相談所または知的障害者更生相談所で、知的障がいがあると判定された方に交付される手帳です。この手帳を持つことで、障害福祉サービスなど多岐にわたる支援の対象となります。
制度の運用方法や判定の基準が自治体ごとに異なる点が特徴といえるでしょう。厚生労働省の「令和6年度福祉行政報告例の概況」によれば、令和6年度の所持者数は132万1350人となっています。
精神障害者保健福祉手帳
精神障害者保健福祉手帳は、一定レベル以上の精神障がいがあると認定された方へ交付されるもので、社会参加の促進を目的とした支援などを受ける際に必要です。
障がいの等級は1級から3級まで設定されており、精神疾患の状態と、日常生活や社会生活における能力の障害状態を総合的に考慮して判断されます。令和6年度の所持者数は154万7433人です。
この記事では、所持者数が最も多い「身体障害者手帳」に注目し、その内訳や推移を詳しく確認していきます。
【身体障害者手帳】所持者数467万件超!障がい種類の内訳「全体の4割」を占めるものは?
身体障害者手帳交付台帳とは、身体障害者福祉法施行令にもとづき、各都道府県などが手帳の交付状況を管理するために用いる公的な記録を指します。この台帳データを確認することで、手帳所持者の障がい種別の内訳や、年次ごとの所持者数の推移などを把握することが可能です。
厚生労働省の「令和6年度福祉行政報告例の概況」によると、2024年度(令和6年度)の身体障害者手帳交付台帳への登録総数は467万4999件でした。
障がい種類別の内訳
身体障害者手帳交付台帳登載数
【障がい種類別の内訳】
- 肢体不自由:224万7815件(48.1%)
- 内部障害:161万8720件(34.6%)
- 聴覚・平衡機能障害:43万9036件(9.4%)
- 視覚障害:31万2992件(6.7%)
- 音声・言語機能またはそしゃく機能障害:5万6436件(1.2%)
ここでいう内部障害とは、心臓、腎臓、呼吸器、膀胱・直腸、小腸、肝臓、免疫といった体の内部機能に関する障がいをまとめた呼称です。データを見ると、肢体不自由と内部障害の2つを合わせるだけで、全体の8割を超える構成比となっていることがわかります。
等級別の所持者数内訳
身体障害者手帳の等級は、身体障害者福祉法にもとづいて障がいの重さの度合いを示すために設けられています。障がいの程度に応じて、重い方から順に1級から6級までが定められています。(なお、法律の別表には7級の基準も存在しますが、7級単独では手帳交付の対象とはなりません。)
【障害者手帳と障害年金】何が違う?目的と支援内容を比較
病気や障がいのある方をサポートする国の制度には、主に「障害年金」と「障害者手帳」の2つがあります。これらは目的が大きく異なり、障害年金が「所得保障」を担うのに対し、障害者手帳は福祉サービスや優遇措置を受けるための「証明書」としての役割を持ちます。
両制度は対象者や目的が違うため、その仕組みを正しく理解しておくことが、適切な支援につながる第一歩といえるでしょう。
障害年金:経済的な所得保障としての役割
障害年金とは、病気やケガによって日常生活や仕事に制限が生じた場合に支給される公的年金で、生活を経済的に支える所得保障の役割を果たします。障害年金を受給するには、初診日に国民年金か厚生年金に加入していること、そして保険料の納付要件を満たしていることなどの条件があります。
障がいの状態に応じて等級が定められており、障害基礎年金は1級と2級、障害厚生年金は1級から3級までです。この等級は、障がいが生活や仕事にどのくらい影響をおよぼしているかという「障害状態」をもとに判断されます。
障害年金の対象となる主な病気やけが
対象となる疾患は、うつ病や統合失調症といった精神疾患から、脳梗塞、がん、人工透析、リウマチなどの内部障害まで、非常に広範囲におよびます。
身体障害者手帳:福祉サービスを受けるための証明書
一方、身体障害者手帳は、身体機能に障がいがあることを公的に証明する役割を担います。この手帳は、福祉サービスを利用したり、公共交通機関の割引といった多様な優遇措置を受けたりする際に提示が求められます。
認定基準は、視覚、聴覚、肢体、内臓といった身体機能の構造的な欠損や機能不全など、身体的な障がいの状態にもとづいて判断されます。障がいの程度によって重い方から1級から6級までが定められています。(なお、7級の基準も存在しますが、7級のみでは手帳の交付対象にはなりません。)
【障害者手帳】受けられる具体的なサービス内容
障害者手帳を提示または申請に利用することで、福祉サービスはもちろん、日々の暮らしに役立つさまざまな優遇措置を受けられる可能性があります。例として、公共料金の割引や所得税・住民税の障害者控除といった、国が定める一律の支援が挙げられます。
これに加えて、自治体や民間事業者が独自に行うサービスもあり、鉄道・バス・タクシーといった交通機関の運賃割引や、携帯電話料金の割引などが生活の負担軽減につながります。
障害者手帳で利用できるサービスの一例
福祉サービス面では、手帳を所持していることで、医療費の自己負担を軽減する自立支援医療(更生医療など)の対象になったり、補装具の購入やレンタルにかかる費用の支給を受けたりすることが可能です。
さらに、共同生活援助(グループホーム)や居宅介護(ホームヘルプ)などの障害福祉サービスも、手帳があることで利用手続きがスムーズに進みます。これらの多様なサービスを組み合わせることにより、障がいのある方が地域で自立した生活を送れるよう、総合的なサポートが提供されます。
【障害者手帳と障害年金】役割を理解し、適切な支援につなげよう
今回は、公的支援の窓口となる「障害者手帳」についてご紹介しました。厚生労働省の「令和5年度福祉行政報告例の概況」によると、身体障害者手帳の所持者は令和5年度時点で約478万人にのぼり、そのうち肢体不自由が半数近くを占めている実態が見えてきます。
この手帳は、医療費の負担軽減や公共交通機関の割引など、生活を支える福祉サービスを受けるための「証明書」として重要な役割を担っています。それに対して障害年金は、日々の生活を経済面で支える「所得保障」としての役割があり、障害者手帳とは目的が明確に異なります。
これら二つの制度の違いをあらかじめ理解しておくことは、ご自身やご家族が万が一の事態に直面した際に、適切な支援をスムーズに受けるための大切な備えとなるはずです。
参考資料
日本生命保険相互会社出身。元マネースクール講師、現役FP(CFP®・1級FP技能士)でJ-FLEC認定アドバイザー。保険から年金、資産運用まで幅広い知見を持ち、「お金の先生」としてLIMO&ファイナンス編集部にてわかりやすく信頼できる記事をお届けします。
