老後資金を準備する方法として、iDeCo(個人型確定拠出年金)の活用を検討する方も増えています。
しかし、iDeCoでは運用商品の配分を自分で決めなければなりません。おすすめの配分は、年代や家計状況によって異なります。
本記事では、ファイナンシャルプランナーの視点から、iDeCoの「おすすめ配分」を30歳代・40歳代・50歳代の年代別に整理して解説します。年齢や家計状況に応じた配分の考え方や見直しのタイミング、出口戦略などを、詳しく見ていきましょう。
【iDeCo】とは?仕組みを整理
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、公的年金(国民年金・厚生年金)に上乗せする私的年金制度です。自分で「毎月の掛金」「運用商品」「配分」を決めて運用し、60歳以降に年金もしくは一時金として受け取ります。
iDeCoは、さまざまな税制優遇を受けられるのが特徴です。具体的には、以下のとおりです。
掛金 | 全額「小規模企業共済等掛金控除」の対象になり、所得税・住民税の負担が減る |
運用益 | 非課税で再投資されるため効率よく運用できる |
受取時 | 年金受取では公的年金等控除が適用され、一時金受取では退職所得控除が適用される |
税制優遇を最大限活用するには、自分の年代と家計状況に合った配分設計が欠かせません。
なお、iDeCoの掛金の拠出限度額は、国民年金の被保険者種別など、加入区分で異なります。
国民年金第1号被保険者 (個人事業主・フリーランスなど) | 月額6万8000円 |
国民年金第2号被保険者 (会社員) | 企業年金がない場合:月額2万3000円 企業年金に加入している場合:月額2万円 |
国民年金第3号被保険者 (専業主婦・主夫) | 月額2万3000円 |
公務員 | 月額2万円 |
上記の金額から、年代や家庭状況に応じて最適な掛金配分を決めていくのが望ましいです。
【30歳代のiDeCoおすすめ配分】積極運用も選択肢に
30歳代の方は、iDeCoの受け取りが始まる60歳まで、約30年の運用期間が残っています。受け取るまでの時間を活かして積極的な運用をしていけば、複利効果を享受しやすくなる可能性があります。
30歳代のiDeCoの配分例を見てみましょう。
株式型インデックス投資信託 (先進国・全世界・S&P500など) | 70〜90% |
債券型投資信託 (先進国債券・国内債券など) | 10〜20% |
元本確保型 (定期預金・保険商品) | 0〜10% |
※上記は年代別の一般的な考え方をもとにした配分例であり、特定の商品や配分を推奨するものではありません。
たとえば、厚生労働省の「公的年金シミュレーター」で、iDeCoとして月2万3000円を30年間、年利5%で積立運用した場合、計算上は1875万円となります。一方、年利0%の定期預金とした場合は、828万円です。
ただし、30歳代でも家計の余力には差があります。30歳代は子どもの誕生や住宅購入などのライフイベントを迎える年代となる可能性が高いため、生活費の半年〜1年分である「生活防衛資金」をどれくらい手元に置いておくかによって、株式比率や掛金額の調整が必要です。
また、資産運用をするうえでは、相場急変のリスクを念頭に置いておかなければなりません。不安な場合は債券や元本確保型の商品の配分を増やすなど、リスク許容度に応じて各商品を組み合わせていくとよいでしょう。
【40歳代】配分の「見直し時期」はいつ?
40歳代は、教育費や住宅ローンなどの支出が大きくなりやすい一方、定年退職までは一定の期間が残っている年代です。そのため、配分を少しずつ見直していく時期に入ります。
40歳代のiDeCoの配分例には、以下のようなものがあります。
株式型インデックス投資信託 (先進国・全世界・S&P500など) | 60〜80% |
債券型投資信託 (先進国債券・国内債券など) | 15〜25% |
元本確保型 (定期預金・保険商品) | 5〜15% |
※上記は年代別の一般的な考え方をもとにした配分例であり、特定の商品や配分を推奨するものではありません。
40歳代で意識したいのは、配分の見直しタイミングです。30歳代に比べて運用期間が短くなる分、株式比率を少しずつ下げていく「リバランス」も一つでしょう。
リバランスの仕方はさまざまですが、以下のルールを基本としておくのが望ましいです。
たとえば、目標が「株式70%・債券30%」であっても、相場上昇により「株式80%・債券20%」に偏ることがあります。この場合、掛金の配分や投資商品の入れ替えなどで資産配分を見直すのも一つです。iDeCoは掛金の一時停止もできるため、生活支出が厳しければ、一旦掛金の拠出を停止し、家計が落ち着いた時点で再開するのもひとつの手でしょう。
iDeCoを受け取るまでの残り年数や家計の支出、リスクの許容度などから、より慎重に配分を決定していくとよいでしょう。
【50歳代】出口戦略と元本確保型のシフトも
50歳代になると、iDeCoの給付金を受け取る時期が近づいてきます。iDeCoの給付金受取は60歳〜75歳までの間に行いますが、受取時期が近づくにつれて「出口戦略」を意識して配分するのが望ましいです。
50歳代のiDeCoの配分例には、以下のようなものがあります。
株式型インデックス投資信託 (先進国・全世界・S&P500など) | 30〜50% |
債券型投資信託 (先進国債券・国内債券など) | 30〜50% |
元本確保型 (定期預金・保険商品) | 20〜40% |
※上記は年代別の一般的な考え方をもとにした配分例であり、特定の商品や配分を推奨するものではありません。
50歳代の場合、受取時期に近づくにつれて、株式型投資信託の比率を下げ、債券型や元本確保型の比率を高めるのもひとつの考え方です。受取直前の相場下落による影響を抑え、資産の値動きが安定する可能性があります。
また、iDeCoの受取方式を一時金と年金、一時金と年金の併用のいずれかからあらかじめ決めておくのも有効です。一時金形式で受け取った場合は退職所得控除、年金形式で受け取った場合は公的年金等控除の対象になり、税負担が軽くなる可能性があります。ただし、退職金や企業年金との受取時期によって税負担が変わる場合があるため、受取方法は早めに確認しておくのが望ましいです。
加えて、50歳代でiDeCoを始める場合でも、運用期間は10年程度あります。短期間でも元本確保型と投資信託の配分次第では資産の増加が期待できます。早いうちから手続きを進めて運用をしていきましょう。
元本確保型と投資信託の比率はどう決める?
iDeCoの配分を考える際の考え方のひとつに「株式比率は100から年齢を引いた割合を目安にする」というものがあります。たとえば、40歳なら株式比率60%、50歳なら株式比率50%にして、残りの40〜50%を元本確保型など別の商品に投資する考え方です。
ただし、この目安はあくまで一般的な考え方のひとつです。実際の配分は、以下の要素を踏まえて検討する必要があります。
家計の余力 | 生活防衛資金の金額や住宅ローン残高、教育費の支出見通しなど |
現在の資産配分 | 預貯金、株式、債券、不動産のバランス |
運用期間 | iDeCoの受取開始年齢までの期間 |
退職金・年金の見通し | 受取金額・受取方法など |
元本確保型商品には、定期預金や保険商品などがあります。原則として元本が確保されますが、手数料や物価上昇を考慮すると、価値が目減りしやすくなります。
一方、投資信託は、株式や債券などに投資する商品です。価格が変動するため、運用成果によっては資産が増える可能性がある一方、元本を下回る可能性もあります。
そのため、元本確保型商品と投資信託の比率は、年齢だけでなく家計全体の資産状況や運用目的を踏まえて決めるのが重要です。資産の配分や退職金・年金も考慮したうえで、全体のバランスを見ながら配分を決めるとよいでしょう。
【運営管理機関】金融機関ごとに違いはある?
iDeCoの口座は、運営管理機関となる金融機関を1社選んで開設します。代表的な運営管理機関は、楽天証券、SBI証券、松井証券などです。
ただし、金融機関によって、商品ラインナップや手数料、サポート体制が異なります。また、どの金融機関で口座開設すべきかは、人によって変わるものです。運営管理機関を選ぶ際に確認したい項目を整理しましょう。
取扱商品 | 元本確保型商品や投資信託のラインアップ |
手数料 | 国民年金基金連合会、事務委託先金融機関、運営管理機関の手数料 |
操作性 | 掛金配分の変更や商品入れ替え(スイッチング)のしやすさなど |
情報提供・ツール | 運用商品の説明や運用状況のチェックの仕方など |
サポート体制 | コールセンターやWeb窓口、店舗窓口など相談できる窓口の有無 |
【FPの視点】配分の前に押さえる「3つの確認事項」
iDeCoの配分を決める前には、以下の点について整理しておきましょう。
拠出額が妥当か | 家計の余裕資金のうち、無理のない範囲での掛金拠出ができているか |
時間軸は明確か | 60歳になるまでの年数を把握し、受け取る年齢、取り崩す期間などをあらかじめ決められているか |
税制優遇をどれくらい受けられるか | 所得控除の金額や運用シミュレーションの結果、受取時に受けられる控除はいくらか |
たとえば、所得税率10%、住民税率10%の人が月2万3000円を拠出する場合、年間の掛金は27万6000円です。この場合、所得控除による年間の税負担軽減額は、単純計算で5万5200円になります。
- 27万6000円×(10%+10%)=5万5200円
また、NISAとの併用や役割分担も意識したいところです。iDeCoは60歳まで引き出せませんが、老後資金をつくりやすいのが特徴です。一方、NISAはiDeCoと同じく運用益が非課税になり、いつでも売却して資金の一部を引き出せます。教育資金や住宅資金など、老後資金以外の目的でも使いやすい制度です。
どちらを優先して利用するかは、家計の状況や所得、資金を使う時期などで異なります。自身の家計や資金を用意する目的にあわせて制度を活用しましょう。
【まとめ】「おすすめ配分」は家計と時間軸で決めまよう
年代別のiDeCoのおすすめ配分をおさらいしましょう。
30歳代 | 株式比率を高める積極的な運用を検討 |
40歳代 | 株式比率を比較的高く保ちつつ、リバランスで配分の見直しを検討 |
50歳代 | 出口戦略を見据えて、比較的値動きの安定した商品の配分を増やすことを検討 |
ただし、実際の配分は家計の余裕資金や運用する期間、年金や退職金の見通しなども含めて、自分に合った配分を考えるのが望ましいです。
iDeCoは、老後資金の準備をする制度として、長期的に活用したいところです。投資信託などの運用商品には元本割れのリスクがあり、運用の結果も人によって変わるため、必要に応じて配分を見直すことを心がけましょう。
参考資料