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2024.02.26
2024.02.29

【元証券会社社員に聞く】新NISAの「つみたて投資枠」とは何?従来の「つみたてNISA」との違いをお金のプロが解説

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執筆者:
ブランドコンテンツ室
監修者:
高橋明香
ファイナンシャルアドバイザー

2024年1月にスタートした「新NISA」。新NISAは以前のNISAより制度としてシンプルになり、より投資初心者の方が始めやすいものになっています。ただ、それでも投資にリスクは付き物。「どのように始めればよいのか」「何に気をつければよいのか」と慎重な方も多いかと思います。

そんな投資初心者の不安を解消するために、元証券会社社員で現在はファイナンシャルアドバイザーとして活躍する高橋明香さんに、新NISAの「つみたて投資枠」について、知っておくべきことや注意すべきことを聞いてみました。第1回となる今回は、新NISAの概要と「つみたて投資枠」の詳細をプロの目線で解説してもらいます。

【元証券会社社員に聞く】最初に押さえておきたい「新NISA」のポイント

そもそもNISAはいつ始まった?従来制度を振り返る

新NISAのことを教えていただく前に、2014年にスタートした「一般NISA」と2018年にスタートした「つみたてNISA」について教えてください。元証券会社の社員としてどのような印象を持たれていましたか。

高橋
まず前提のおさらいですが、株式や投資信託などの金融商品に投資をすると、そこから得られる配当金や売却した利益に対して20.315%の税金がかかります。例えば、投資元本100万円に対して配当金が20万円、売却益(譲渡益)が30万円だった場合は約10万円の税金がかかります。
 

これに対して、NISAを利用すると金融商品から得られる配当金や売却益の税金がかからなくなります。先ほどの例を参考にするなら税金として発生していた約10万円をまるまるもらうことができます。一般NISAでも、つみたてNISAでも、新NISAでも、「お得な非課税優遇制度」であることは共通しています。

それぞれの制度で異なっているのは、非課税期間や非課税投資枠です。

2014年にスタートした「一般NISA」は、株式・投資信託などを年間120万円まで購入でき、最大5年間非課税で保有できるという制度でした。そのとき、私はまだ証券会社に在籍していましたが、非課税期間が5年間だったこともあり、投資経験者の方が短期の利益を狙って利用されることが多かったです。非課税投資枠も120万円までだったので、少し中途半端だなという印象は持っていました。

一方、2018年にスタートした「つみたてNISA」は、一定の投資信託を年間40万円まで購入でき、最大20年間非課税で保有できるという制度です。年間非課税枠は小さいですが非課税期間が長いため、長期・積立・分散に適した投資ができるようになりました。一般NISAよりは投資を始めるきっかけにはなりやすかったのではないかと思います。

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編集部撮影

新NISAの変更点は?長期・分散・積立がしやすい設計に

2024年1月にスタートした新NISAは従来の制度からどのようなところが変わったのですか。

高橋
さまざまな違いがありますが、必ず覚えておくべきポイントは3点です。1つめは、一般NISAは「成長投資枠」、つみたてNISAは「つみたて投資枠」に名称が変わり、併用することができるようになりました。これまでは一般NISAもしくはつみたてNISAのどちらかを選択する必要がありましたが、新NISAでこれらが一本化されています。

2つめは、非課税期間が無期限化したことです。これまでは口座開設していつまでに売却しないと非課税優遇が受けられないというタイムリミットがありました。無期限化によって、売却タイミングを気にせずにじっくりと資産を増やすことができるようになったのは重要な変更点です。

3つめは投資枠が拡充されたことです。新NISAでは年間投資枠が360万円、生涯投資枠が1800万円となりました。従来の制度では、つみたてNISAの年間投資枠が40万円、一般NISAの年間投資枠が120万円でしたので、それぞれ大きく増額しています。また、これまでは売却した非課税枠を再利用することはできませんでしたが、新NISAでは売却した年の翌年という条件はありますが、非課税枠が復活します。

なるほど。すっきり分かりやすくなって、さらに長期・分散・積立がしやすくなったということですね。そんな新NISAをプロの目線ではどのように評価していますか。

高橋
非課税期間が無期限になったことで、投資による資産形成の意識が高まりやすくなるのではという期待はありますね。また、投資枠の拡充も非常に評価できると考えています。それは従来制度の年間投資額は中途半端な金額だったからです。

特につみたてNISAについては、年間40万円までとなっていて12ヶ月で割ると3万3333円と割り切れない数字でした。新NISAのつみたて投資枠は120万円と12で割り切れる数字なので、投資額の把握もしやすくなるはずです。


売却すると非課税枠が翌年から復活するという点も投資に慣れている人にはメリットになります。人生100年時代になると、まとまった出費が必要になる機会も増えていきますので、投資で得た利益の一部を取り崩しやすくなるのは使い勝手が良さそうです。

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編集部撮影

【元証券会社社員に聞く】「つみたて投資枠」とは?「成長投資枠」との違いを解説

投資初心者は「つみたて投資枠」からスタートするのがおすすめ

新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」がありますが、どのような違いがあるのでしょうか。

高橋
つみたて投資枠は、従来制度の「つみたてNISA」を引き継ぐ枠のことです。成長投資枠は「一般NISA」を引き継ぐ枠ですが、除外条件が設けられていて、一般NISAよりも長期保有しやすい銘柄を対象にしています。
 

それぞれの違いは年間投資額、生涯投資枠(総枠)、投資対象です。つみたて投資枠の年間投資額は120万円で、生涯投資枠は1800万円。主な投資対象は長期・積立・分散に適した投資信託となっています。一方、成長投資枠の年間投資額は240万円、生涯投資枠は1200万円、主な投資対象は株式と投資信託等になっています。


現役世代かつ初めて資産運用する方であれば、「つみたて投資枠」から始めるのがおすすめです。理由は積立投資であれば購入時期を分散させることで高値掴みを防ぎ、リスクを抑えた投資をすることができるからです。余裕がある場合はつみたて投資枠にプラスして成長投資枠で同様のインデックスを積立投資するとよいでしょう。

つみたてNISAをコツコツ続けていた方も多いかと思いますが、そうした方はどうするのがよいのでしょうか。

高橋
つみたてNISAは2018年に始まった制度なので、長い方でも今年でまだ7年目です。もともと長期投資を目的とした制度なので、まとまったお金が必要なライフイベントが控えているなどの状況でない限りは、つみたてNISAで運用している投資信託は継続、要は「ほったらかし」で良いと思います。非課税期間は20年なので15年目くらいになったら一旦売却を考えるくらいのスタンスでいいのではないでしょうか。
執筆者
ブランドコンテンツ室

株式会社ナビゲータープラットフォームが2023年9月1日に創設したブランドコンテンツ室は、くらしとお金の経済メディア「LIMO(リーモ)」において、企業のサービスや商品の魅力をコンテンツを通じて読者に伝える役割を果たしています。月間UU1200万人(2023年5月時点)を超えるLIMOが保有するデータをもとにコンテンツを制作し、企業と読者のエンゲージメントを強化します。

監修者/ファイナンシャルアドバイザー
高橋明香
会計専門学校卒業後、和光証券株式会社(現みずほ証券株式会社)に入社。国内外株式、債券、投資信託、保険商品の販売を通じ、個人・法人顧客向けの資産運用コンサルティング業務に従事する。そのキャリアは20年に渡る。後進の育成にも注力し、教育・研修担当としても活躍。豊富な金融知識と親しみやすい性格で顧客からの信頼も厚い。現在は、個人向け資産運用のサポート業務を行う。1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(Certified Financial Planner)、一種外務員資格(証券外務員一種)を保有。

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