住宅ローンを返済中に、現在借り入れている住宅ローンよりも条件のいい住宅ローンを見つけた際には、借り換えを考える人もいるかもしれません。ただし、借り換えることで得られるメリットがあるとともに、借り換えることで発生するデメリットがあることも知っておく必要があります。また借り換えるタイミングを間違えないことも大切です。
今回は借り換えを考えている人に向けて、適切な借り換えのタイミングを解説するとともに、借り換えに関するメリット・デメリットを紹介します。
借り換えた後で後悔することがないように、しっかりと内容を理解して借り換えるかどうかを決めるようにしましょう。
住宅ローンの適切な借り換えタイミングとは
住宅ローンの適切な借り換えタイミングは、その人の置かれている状況によっても異なりますが、借り換えに適しているタイミングとして代表的なものは、以下のとおりです。
- 固定金利期間終了時
- 金利タイプの変更を考えているとき
- 今後転職を考えているとき
- 健康状態がいいとき
など
図表 住宅ローン借り換えのタイミング
固定金利期間終了時
固定期間変動型を利用しており、固定期間が終了するタイミングは、借り換えに適していると言われています。なぜなら、固定金利期間終了後は原則として変動金利に移行しますが、その際の金利が上昇するケースが多いからです。もちろん、再度固定期間を選択することもできますが、それでもこれまでよりは高い金利が適用されると考えておきましょう。
そのタイミングで他の金融機関の低金利の住宅ローンに借り換えることで、毎月の返済額の負担を抑えられるほか、適用される金利によっては返済総額が抑えられる可能性があります。
金利タイプの見直しを考えているとき
変動金利で借り入れているものの、今後の金利上昇のリスクを考え、早めに固定金利に変更したいと思った時も借り換えのタイミングです。
現在変動金利は0.3%~0.6%を推移していますが、変動金利を決める基となる短期プライムレートが2024年9月2日に15年ぶりに上昇したことから、変動金利を見直す金融機関が目立ち始めています。
もちろん今後の短期プライムレートの動きは分かりませんが、住宅ローン全体の金利の動きから、金利の低いうちに固定金利に変更しておきたいと考える人もいるでしょう。
その場合は別の金融機関で固定金利の住宅ローンに借り換える必要があります。
固定金利にしておくことで今後の返済計画が立てやすくなるといったメリットも受けられるため、これから子どもが大きくなるなど返済中にまとまった出費が必要になるイベントがあるなら固定金利へ借り換えを考えてもいいでしょう。
今後転職を考えているとき
今後転職を考えているときも借り換えに適したタイミングです。なぜなら、借り換えにあたっては、新たに借り換える金融機関に住宅ローンを申し込み、審査を受けなければなりません。審査に通らなければ借り換えはできないのです。
審査にあたっては、年収や勤続年数、勤務形態などから申込者の返済能力総合的に判断します。
仮に申し込みが転職後だった場合、申し込み要件を満たさない可能性があるばかりでなく、転職後は収入がしばらく安定しないとみなされ、審査に不利に働く可能性も否定できません。
今後転職を考えているなら、転職後1年~2年経ったあとに借り換えを行うようにしましょう。
健康状態がいいとき
フラット35ではなく、一般の住宅ローンを利用するには、団体信用生命保険への加入が必須条件です。そして団体信用生命保険に加入するためには、申込時の体況を告知しなければなりません。
その際に直近に大きな病気をしたりしていると、団体信用生命保険への加入が認められない可能性があり、最終的に審査に通らなくなってしまいます。
借り換えを考えているなら、健康状態のいいうちに行うことが大切です。
その他
また、毎月の返済が苦しくなった際に、もっと金利の低い住宅ローンに借り換えることで家計の負担が抑えられることがあります。それも借り換えに適したタイミングでしょう。
ただし、借り換えには諸費用がかかるため、借り換えの判断は慎重に行うようにしてください。
他には、新しくローンを組む前も借り換えに適したタイミングです。審査の際には他社からの借り入れ状況もチェックされるため、これから新たに教育ローンや自動車ローンを利用しようと思っているなら、その前に借り換えておくと安心です。
住宅ローンを借り換えるメリット
住宅ローンを借り換えることで得られるメリットには以下のものがあります。
- 総返済額が削減できる
- 将来の返済計画が立てやすくなる
- 団体信用生命保険の保障内容が充実する
これらのメリットの詳細について、以下で詳しく説明します。
図表 住宅ローンを借り換えるときのメリット
金利プランを固定金利に変更することにより将来の返済計画が立てやすくなる
現在変動金利を利用している場合、原則として半年に1度金利が見直されます。もちろん「5年ルール」といって見直された返済額は5年後から適用されますし、「125%ルール」といった、見直し後の返済額が見直し前の返済額の125%を超えないといった工夫がされているものの、生活状況によっては返済額がこれ以上増えると家計に負担がかかることも考えられます。
そのようなときに固定金額の住宅ローンに借り換えることにより、今後の返済額を完済まで同じにでき、将来に渡って返済計画が立てやすくなります。
今よりも低い金利の住宅ローンに借り換えることで、総返済額が削減できる
借り換えによって今よりも毎月の返済額が抑えられれば、結果として総返済額の削減につながります。
例えば現在年利2%の固定金利を利用しており、残債が2,500万円、残りの返済期間が20年あるとします。ここで、年利1.5%の固定金利に借り換えることで、毎月の返済額は91,050円から86,858円に下がり、年間約5万円の削減につながります。
最終的な利息削減額も約100万円となり、そのぶん別の用途に利用できるでしょう。
団体信用生命保険の保障内容が充実する
団体信用生命保険の保障内容は取り扱う金融機関によって異なります。また、同じ保障内容でも金利の上乗せがある金融機関とない金融機関も存在しますので、各金融機関が取り扱っている団体信用生命保険の内容を1度チェックしてみましょう。
最近では、三大疾病だけでなく、より多くの病気を保障してくれる団体信用生命保険や、介護保障が付いた団体信用生命保険もあります。
今の団体信用生命保険の保障に不満を感じているなら、借り換えることで保障を充実できます。
住宅ローンを借り換えるときのデメリット
住宅ローンの借り換えには上に挙げたメリットだけでなく、デメリットも考慮しておきましょう。
住宅ローンを借り換える際に発生する主なデメリットは以下の3つです。
- 諸費用がかかる
- 申し込み、審査に通らなければならない
- 住宅ローン控除額に影響する可能性がある
図表 住宅ローンを借り換えるときのデメリット
新たに申し込み、審査に通らなければならない
借り換えの際には、新たに借り換える先の金融機関に住宅ローンを申し込み、審査に通らなければなりません。初回の審査のときにスムーズに通ったから、借り換え時も問題ないだろうと思うかもしれませんが、初回の審査時と今では状況が異なります。
順調に収入が増えていれば問題ありませんが、初回の審査のときよりも収入が下がっていると、希望した金額まで借りられない可能性もあります。その場合の不足分は自分で負担しなければなりません。
また、信用情報にも気をつけておきましょう。住宅ローンの申し込みがあった場合、金融機関は必ず日本に3つある信用情報機関のいずれかに照会をかけます。その際に信用事故情報が登録されていた場合、審査に通ることは難しいと考えてください。
信用事故情報とは、延滞や債務整理などで、5年~7年間登録されます。その間はほかのローンの審査も通らないと考えておいたほうがいいでしょう。
住宅ローンの借り換えには諸費用がかかる
住宅ローンの借り換えは、新規の申し込みに該当するため、諸費用が発生します。諸費用の主なものには、
- 金融機関の事務手数料
- 登録免許税
- 印紙税
- 借り換える住宅ローンの一括返済手数料
諸費用は合計すると100万円近くなるケースもあることから、借り換える際には、借り換え先の金融機関でかかる諸費用について事前に調べておきましょう。
いくら借り換えで利息が削減できても、諸費用がそれを上回るようでは借り換える意味がありません。
住宅ローン控除額に影響する可能性がある
借り換えの際に一部頭金を入れるなどすることで、適用される金利が低くなるケースがあります。ただ、気をつけたいのは、借り換えるタイミングが住宅ローン控除適用期間かどうかです。頭金を入れることにより、借入金額が少なくなるのはいいのですが、その分年末の借入残高も少なくなり、住宅ローン控除額が下がってしまう可能性があるからです。
借り換えを考える際には、住宅ローン控除額への影響額と借り換えで得られる利息削減額を比較して決めるとよいでしょう。
住宅ローンを借り換えるときの注意点
住宅ローンを借り換える際には、以下の点に注意しておきましょう。
諸費用も考慮した結果、総返済額が削減できるかを確認する
上でも述べたとおり、借り換えには諸費用が発生します。諸費用はまとまった額になりますので、諸費用も考慮した結果、最終的な総返済額がどのくらい削減できるかをシミュレーションしてから判断しましょう。
体況に注意する
いくら魅力的な団体信用生命保険が用意されていても、加入できなければ意味がありません。特に40歳をすぎると病気にかかる割合が大きくなることもありますので、日頃から健康に気をつけ、毎年の健康診断を欠かさないように心がけておきましょう。
信用事故を起こさないように心がける
信用事故は自分が意識していない間に登録されているケースもあります。うっかり支払いを忘れてそのままにしていることもあるでしょう。ただし、延滞などの信用事故情報は必ず登録されますので、日頃から滞納を起こさないように気をつけておくことが大切です。
もし自分の信用情報が気になるのであれば、信用情報機関に対して情報開示の請求を行ってみましょう。インターネットで簡単に手続きができますし、手数料も1,000円程度です。その結果、信用事故情報が登録されていたことが分かった場合は、その情報が消えるまでは借り換えを延ばすことも考えましょう。
自分の置かれている状況が借り換えるタイミングに適しているかを判断することが大切
住宅ローンを借り換える際には、さまざまな費用が発生しますし、審査に必要な書類もそろえなければなりません。
住宅ローンは高額な金額を長期間にわたって返済するものです。そのため、借り換えについては現在の家計の状況や今後のライフイベントなどを考慮しながら決めることが大切です。
もちろん住宅ローンの返済も大切ですが、自分たちの老後資金も合わせて形成していかなければなりませんので、計画的に進めていきましょう。
今の住宅ローンのどこに不満な点があるのか、そして借り換えることでそれがどのくらい改善されるのかを考えて最終的に借り換えるタイミングを判断しましょう。
コンサルタントとしての個人向け相談や、資産運用などにまつわるセミナー講師のほか、大手金融メディアへの執筆および監修に携わっている。現在年間300本以上の執筆・監修をこなしており、これまでの執筆・監修実績 は2500本を超える。保有資格は、ファイナンシャルプランナー(CFP)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員。