この記事はここがポイント
- インフレ率1.7%超に対し、銀行預金金利は0.9%未満で資産実質目減りの懸念。
- 新NISAで月3万円を20年積立、年利5%運用では元本720万円が約1200万円に増加。
- 新NISAの高リターンには、年0.1%以下の低コストな全世界株式や米国株式連動型ファンド。
インフレが止まりません。最新の2026年6月分の消費者物価指数(全国、総合)は前年同月比+1.7%となり、前月の同+1.5%から上昇幅が拡大しました。インフレによる資産価値の目減りがますます懸念される状況です。
インフレ下で資産を守るためには、より高い利回りでの運用が望ましくなります。銀行預金と新NISAを比較し、「月3万円」を20年間積み立てるケースでシミュレーションしてみましょう。
IFAとして10年以上の経験がありますが、ようやく「貯蓄から投資へ」の流れが強まっていると感じています。
顧客の多くは資産の大部分が銀行預金ですが、「銀行に置いていても仕方ない」などの理由から、投資を始める人が増えてきました。
以前から預金の金利が低いことは認識していたところ、インフレが背中を押している印象です。
月3万円の積み立ては、20年間では720万円に達します。運用次第でまとまった資産を作れるため、運用先は慎重に検討したいところです。後悔しない運用とするため、新NISAと銀行預金の差をシミュレーションで確認しておきましょう。
新NISAの利回りはどれくらい?「期待リターン」と「実績」を確認
まずは新NISAからシミュレーションしてみます。
株式の期待リターンは年5%前後
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)によると、2024年までの30年間と同じ経済条件が続いたとき、主な資産の期待リターンは次のとおりです。新NISAで人気の株式型ファンドは、おおむね年率5%前後のリターンが期待できるといえます。
【各資産の期待リターン(年率)】
- 外国株式:5.4%
- 国内株式:4.8%
- 外国債券:2.2%
- 国内債券:0.5%
※2024年までの30年間投影ケース
出所:年金積立金管理運用独立行政法人「第5期中期目標期間における基本ポートフォリオについて~ 詳細 ~」
株式の10年実績リターンは年10%前後
実績も確認しておきましょう。新NISA対象ファンドの平均リターンは、2025年末までの10年実績で次のようになりました。株式型は年率10%前後のリターンを残しており、GPIFの期待リターンよりも良好な成績を残しています。
【新NISA対象ファンド平均の10年実績リターン(年率、2025年末)】
- 国内株式:9.99%
- 先進国株式:11.32%
- 新興国株式:9.38%
- 国内債券:-1.00%
- 先進国債券(投資適格):1.97%
- 新興国債券:5.59%
※2025年末および2020年末時点の5年リターンから算出
出所:金融庁『「国内運用会社の運用パフォーマンスを示す代表的な指標(KPI)の測定と国内公募投信についての諸論点に関する分析」の公表について』
利回り5%なら利益500万円弱、資産額1200万円超に
月3万円×20年間、利回り5%
シミュレーションに移りましょう。株式型ファンドに積み立てる想定で、GPIFの期待リターンから、前提とする利回りは5%とします。
この場合、毎月3万円を積み立てると、資産額は20年後に1217万円に達します。元本720万円に対し、運用益497万円を獲得した計算です。
その他の利回りの試算結果は次のとおりです。新NISAなら運用益に税金がかからないため、額面のまま受け取ることができます。
- 利回り3%:981万円(運用益261万円)
- 利回り5%:1217万円(同497万円)
- 利回り7%:1523万円(同803万円)
- 利回り10%:2155万円(同1435万円)
「銀行預金」で月3万円ずつ貯金|20年後の資産はいくらになる?
続いて銀行預金のシミュレーションを行いましょう。
定期でも金利は1%未満
銀行預金の金利は、主要3行(※)はいずれも同水準です。普通預金は0.3%、定期預金は最高0.9%となっています。
- 普通預金:0.3%
- 定期預金:0.375%~0.9%
20年間の利息は68万円 単利型・税引後ではさらに減少
月3万円×20年間、年利0.9%
利回りを0.9%と置いた場合、毎月3万円を20年間積み立てると、利息総額は68万円、投資元本720万円と合わせた資産総額は788万円となります。
ただし、これは複利計算が前提です。利息が元金に組み込まれない単利型の場合、利息総額は減少します。さらに、銀行預金は税金が差し引かれるため、税引後ではさらに減少することに注意しましょう。
インフレ率を下回る 「銀行預金だけ」は目減りリスク高い
冒頭のとおり、足元の消費者物価指数は年1%台半ばを超える状況です。さらに、日本銀行は長期的な物価目標として2%を掲げています。
銀行預金の金利は現在これらを下回るため、実質利回りはマイナスになっていると考えられます。
つまり預金残高が増えていても、お金の実質的な価値は目減りすることが懸念されます。
どの商品を選ぶべき?新NISAで投資できる株式型ファンド
では、どのような商品を選ぶと高いリターンを目指せるのでしょうか。本記事では「新NISAの利回り」としましたが、新NISAは制度であり、特定の商品ではありません。実際の利回りは、新NISAを通じで選択する商品によって決まります。
先述のシミュレーションは、株式型ファンドへ積み立てる想定でした。ここでは新NISAで投資できる代表的な株式型ファンドを紹介します。
①全世界株式インデックスファンド
日本のほか、米国や英国などの先進国、台湾や韓国といった新興国および地域へ分散投資できます。
「一本で世界中に投資」できるシンプルさが初心者にも人気な傾向にあります。
②米国株式連動型ファンド
AppleやMicrosoftなど米国を代表する企業の株価への連動を目指すファンドです。
米国経済の成長を取り込める点が強みです。
もちろん、上記のようなファンド以外にも、日本株連動型ファンドや、債券を組み入れたバランス型のファンドなど、さまざまな選択肢があります。
なお、ファンドを選ぶ際は信託報酬(コスト)の低さを重視するとよいでしょう。
年0.1%以下の低コストファンドも多数登場しており、長期では運用コストの差が最終リターンに大きく影響することが考えられます。
【まとめ】新NISAでインフレ対策!リスクは「分散投資」で対処
インフレによる資産の目減りを避けるには、インフレ率以上に資産を増やすことが条件です。現在の銀行預金はこの条件を満たすことができていません。実質的な利回りはマイナスとみられ、資産の全額を銀行預金にしている場合、インフレによる目減りが懸念されます。
インフレが進展する以上、実質的な意味でも資産を増やすなら、リスク資産への投資は避けられません。新NISAなら、高いリターンが期待される株式型ファンドへの積立投資が可能です。
一方で、リスクにも注意が必要です。IFAとして新NISAの相談を受けるとき、投資経験のない人も含め、多くの人が米国株式比率が高いファンドを選好しますが、そのリスクを理解している人は少ない印象です。
リスク資産のなかでも、一般に株式は特にリスクが高い資産で、銀行預金とは対照的です。ポートフォリオに占める株式比率は、慎重な判断が求められます。
なお、株式に投資するとき、「地域の分散」を図るとリスク低減が期待されます。株式市場の規模は米国が圧倒的ですが、近年はAIブームを背景に台湾や韓国といった東アジアの株式も好調です。また、ASEAN諸国やインドも高い経済成長が想定されており、注目されています。
また、為替リスクがない国内の株式市場に目を向けるのもよいでしょう。東証による市場改革もあり、近年は好相場が続いています。新NISAを始めるときは、米国株式だけでなく、その他の地域や資産も考慮し、リスク許容度にあった運用を心がけましょう
参考資料
証券会社を経てIFAとして10年以上活動。個人へ投資提案を行う傍ら、金融ライターとしてNISA等の資産運用から社会保障まで幅広く執筆。現在は大型株を中心に年100本ペースで連載。AFP等保有。
