FPが解説する「70歳代の年金と貯蓄のリアル」二人以上世帯の平均資産額と、年金だけで暮らすための注意点を解説
ayanonnon/shutterstock.com
執筆者加藤 聖人2級ファイナンシャル・プランニング技能士
監修者村岸 理美LIMO&ファイナンス編集部記者
17:30
FPが解説する「70歳代の年金と貯蓄のリアル」二人以上世帯の平均資産額と、年金だけで暮らすための注意点を解説
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この記事はここがポイント

  • 70歳代二人以上世帯の年金生活は、月2.7万~3.7万円の赤字。
  • 70歳代二人以上世帯の金融資産は平均2416万円、中央値1178万円と格差。
  • 公的年金のみで生活する高齢者世帯は43.4%に留まり、個別の収支把握と対策の重要性。

筆者はFPとして、これまで多くの方の家計相談や老後資金のシミュレーションをサポートしてきました。ご相談者の中には「平均額以上あるから大丈夫」と安心される方もいれば、「平均に届いていないから不安」と焦る方も少なくありません。しかし実際のところ、老後の安心感を決めるのは資産額そのものよりも、「毎月いくら取り崩すことになるのか」という収支のバランスなのです。

本記事では、70歳代・二人以上世帯の金融資産保有額や年金受給額、家計収支の実態を確認しながら、公的年金だけに頼る老後生活の注意点について解説します

【70歳代・二人以上世帯】金融資産保有額の平均と中央値を確認

まずは、J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」から、70歳代の金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)を見てみましょう。

※なお、これから確認する金融資産保有額には、預貯金以外に株式や投資信託、生命保険なども含まれます。また、日常的な出し入れ・引落しに備えている普通預金残高は含まれません。

「60歳代・70歳代」二人以上世帯の金融資産保有額

「60歳代・70歳代」二人以上世帯の金融資産保有額
「40歳代・50歳代」二人以上世帯の金融資産保有額

金融資産保有額の平均値・中央値

  • 70歳代:平均値2416万円、中央値1178万円

金融資産保有額の平均値を見ると、70歳代では2416万円と、いわゆる「2000万円」を上回っており、老後も比較的安定した生活が送れそうに見えます。

しかし、中央値は1178万円にとどまっており、実際には「平均ほど資産を持っていない世帯が多数派」であることがわかります。

さらに、60歳代から70歳代にかけて中央値が減少している点からは、退職後に貯蓄を取り崩す生活へ移行している実態も読み取れます。

金融資産非保有世帯の割合

この調査における金融資産には普通預金残高が含まれないものの、70歳代ではおよそ1割の世帯が「金融資産非保有」に該当します。

高齢期は働く機会が限られるため、収入が公的年金に大きく依存するケースも多く、家計の余裕は世帯によって大きく異なります。

こうしたデータを見ると、70歳代の家計は「平均貯蓄額」だけでは実態を把握しにくいことが分かります。

老後収入の柱となる国民年金・厚生年金の平均月額

老後に取り崩せる資産が少ない場合、生活費の大部分を公的年金等の収入に頼ることになります。

では、現代のシニアはどのくらいの年金を受け取っているのでしょうか。

厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、国民年金のみを受け取る場合と、国民年金+厚生年金を受け取る場合の平均月額を見てみましょう。

【国民年金の平均月額】

国民年金の平均月額

国民年金の平均月額
国民年金の平均月額
  • 全体 5万9310円
  • 男性 6万1595円
  • 女性 5万7582円

【厚生年金の平均月額】

厚生年金の平均月額

厚生年金の平均月額
厚生年金の平均月額
  • 全体 15万289円
  • 男性 16万9967円
  • 女性 11万1413円

※国民年金部分を含む

国民年金の平均月額は5万9310円、基礎年金部分を含む厚生年金の平均月額は15万289円となっています。

ただし、年金額は現役時代の収入や加入期間によって大きくばらつきます。

厚生年金を含めても、受給額は1万円未満から30万円以上まで幅広く分布しており、平均値だけでは実態をつかみにくいのが実情です。

平均的な数字だけを見ると「これだけで生活できるのかな…」と少し不安になってしまうかもしれませんね。ですが、まずはご自身の「ねんきん定期便」などで実際の受給予定額をしっかりと受け止め、そこからどうやりくりしていくかを前向きに一緒に考えていきましょう。

【70歳代・二人以上世帯】年金だけで足りる?家計収支の内訳

続いて、総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」から、二人以上の世帯のうち70歳代・無職世帯の家計収支を見てみましょう。

【二人以上世帯】65歳以上の無職世帯の家計収支

【二人以上世帯】65歳以上の無職世帯の家計収支
【二人以上世帯】65歳以上の無職世帯の家計収支

【70歳〜74歳】家計収支の内訳

  • 消費支出:28万5844円
  • 非消費支出:3万9127円
  • 実収入:28万7725円
  • 収支:ー3万7245円

【75歳以上】家計収支の内訳

  • 消費支出:24万8460円
  • 非消費支出:3万1563円
  • 実収入:25万2798円
  • 収支:ー2万7225円

70歳〜74歳では月平均で約3万7000円、75歳以上でも約2万7000円の赤字となっており、いずれの年代でも支出が収入を上回る状況が見られます。

年齢を重ねるにつれて外出や消費活動は減少する傾向があるため、75歳以上では支出水準がやや下がり、赤字幅も縮小しています。

ただし、それでも年金収入だけで家計を黒字にするのは簡単ではありません。

今後、平均寿命の延びに伴って老後期間が長くなると、日常生活費に加えて医療費や介護費などの負担が増える可能性も考えられます。

こうした支出に備えるためには、一定の貯蓄を確保しておくことが重要です。

あわせて、資産を預貯金だけで保有するのではなく、状況に応じて資産運用を取り入れることも視野に入れておきたいところでしょう。

FPが考える老後資金の注意点|平均額より「毎月の赤字」に目を向ける

FPの視点で老後資金を考える際に重要なのは、「貯蓄がいくらあるか」だけでなく、「毎月いくら不足する可能性があるか」を把握することです。

例えば、70歳代で1000万円以上の金融資産があっても、毎月数万円の赤字が続けば、資産は少しずつ減っていきます。

反対に、平均額より貯蓄が少なくても、支出を抑えられている世帯や、年金以外の収入がある世帯では、家計の安定度が高いケースもあるでしょう。

老後資金を考える際は、以下の3点を確認しておくことが大切です。

1. 年金などの毎月の収入はいくらあるか
2. 食費・住居費・医療費などの支出はいくらか
3. 不足分を貯蓄や運用資産から何年取り崩せるか

平均貯蓄額は老後資金を考えるうえで参考になりますが、実際の安心感は世帯ごとの収支によって大きく変わります。

まずは毎月の家計収支を確認し、必要に応じて支出の見直しや収入源の確保を検討してみましょう。

公的年金だけで生活している高齢者世帯は43.4%

厚生労働省が公表した「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、公的年金や恩給のみに頼って生活しているシニア世帯は全体の43.4%にとどまるそうです。

つまり、全体の半数以上が公的年金以外の収入源を必要としているのが現状です。

公的年金や恩給のみに頼って生活しているシニア世帯は全体の43.4%

公的年金や恩給のみに頼って生活しているシニア世帯は全体の43.4%
公的年金や恩給のみに頼って生活しているシニア世帯は全体の43.4%
  • 公的年金・恩給が総所得の100%を占める世帯:43.4%
  • 80~100%未満:16.4%
  • 60~80%未満:15.2%
  • 40~60%未満:12.9%
  • 20~40%未満:8.2%
  • 20%未満:4.0%

年金受給額には個人差がありますが、そのなかで「収入と支出のつり合いが取りにくい」世帯が多いことがうかがえます。

特に注意したいのは、必要最低限の生活費であっても年金収入だけではまかないきれないケースです。

公的年金・恩給に依存する割合が高いほど、毎月のやりくりが難しくなる可能性があります。

私的年金や預貯金、運用資産が十分でない場合は、働ける範囲で収入を得たり、公的な生活支援制度を利用したりと、いくつかの選択肢を検討しておくと安心です。

老後のお金に関する不安を軽減するには、まず現在の状況を把握し、必要な対策を早めに進めておくことが大切でしょう。

まとめにかえて

70歳代・二人以上世帯の金融資産保有額は、平均値が2416万円、中央値が1178万円となっています。平均値は2000万円を上回るものの、中央値との差は大きく、世帯ごとの資産状況には開きがあります。

また、70歳代の無職世帯では、家計収支が赤字となるケースも見られます。公的年金の受給額には個人差があり、年金だけで生活費をまかなうのが難しい世帯も少なくありません。

老後資金を考える際は、平均貯蓄額や平均年金額だけで判断せず、自分の収入・支出・資産残高を具体的に確認することが大切です。

年金だけで不足しそうな場合は、資産の取り崩し方を考えるだけでなく、働ける範囲での収入確保や支出の見直し、公的支援制度の活用も検討してみましょう。

【監修者コメント】

老後の不安を解消するための第一歩は、ご家庭の収支や資産の現状を正しく把握し、現実的な計画を立てることにあります。過度に悲観することなく、早めの家計見直しや自分に合った働き方を取り入れて、心豊かなセカンドライフを描いていきましょう。

参考資料

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加藤 聖人2級ファイナンシャル・プランニング技能士
村岸 理美LIMO&ファイナンス編集部記者株式会社モニクルリサーチ

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